『太陽の下で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
肩にかけたままの毛布を引きずってきて、絡まるように窓辺に座る。朝焼けから少し経った冬の口の朝の寒さが鼻先を冷やす。
ああ、さむいさむい。
毛布を体に巻きつけ直して、四角い日差しを享受する。
太陽の下はまだ、ほんのちょっとはあたたかい、冬の足音響く朝のこと。
太陽の下に居られることは幸いだ。言い換えればそれは「自由」に等しい。
もし自分たちが、四六時中、陽の当たらない陰に押し込められれば、光の差す空を、飛び回る羽虫にすら、酷く嫉妬するだろう。
太陽の下でって、今はもう熱中症のイメージしかない。
昔なら夏の浜辺とかで健康的な何かだったんだろうけど、今の気候は凶暴なので、うっかりイキってぐずぐずしてると、熱中症になって救急車呼ばれたりして、そのまま後遺症も残りかねない。
太陽の下なんて全力で避けるべき自殺行為だし、同調圧力で炎天下で何かをさせる無責任な組織は、全力で拒否ですよ。
涼しい風がとおる明るい木陰で冷たい麦茶ですね。
(そうそう、暑い屋外でビールも、汗がべっとべとになります。)
もう考えただけでも、嫌だ嫌だ。
美しい、美しいな。
美しいから、どうかそのまま冷凍されてほしい。凍りついて、そのまま目覚めないで、美しいままでいて。
冷凍焼けのにおいがした。
「私にだって『いっそ殺してくれ』と叫び出したくなる瞬間ありますよ。お風呂に入っているときやお茶を飲んでいるとき、過去にやってしまった数々をふと思い出すんです。
当時の私は今よりもっと幼稚で、人の心を大量に傷つけてきました。酷いことを言ったしやった。大してその人のことを大事に思っていたわけでもないのに、その人と一緒に居ました。友情でも恋心でも私に心を傾けてくれる人たちがいることは素直に嬉しいと思っていました。それと同時に心底気持ちが悪かった。だから『いいように使おう。この人たちはただの都合のいい人だ』と思い込もうとして、相手の気持ちからも自分の気持ちからも目を逸らして、卑怯な気持ちでその人たちと関わって、その人たちの気持ちを弄びました。酷く傷つけたであろうことに今更気づいては、申し訳ないと思うことすら烏滸がましく感じ、とにかく後悔の念に押しつぶされて叫び出したくなります。
今更だなんて嘘ですね。当時から気づいていました。きっとこれは相手を傷つける行為だと。気づいていながらやめなかった。私は私を守ることを最優先した。……正当化したいわけではありません。自分を守ることは大事なことですが、私が取った選択は悪手でした。一番最悪な方法で身を守った。あれは間違いだった……間違いでしたよね、貴方もそう思いませんか?
『後悔できるということは成長しているということだろう。失敗から学びきっと今はより良くなれているはずだ』と前向きに捉えようと思えばできるでしょう。しかし実際にやったという事実は変わりません。傷つけたということも、傷ついた人が存在しているということも、変えようのない事実です。悪いことは悪いことのままです。
何を言ったって自分自身、言い訳にしか聞こえないと思ったりもしますよ。
人を傷つけてきたし、人に傷つきもしてきました。人生ってそういうもんなんだろうなと思ったりもします。後悔して反省して失敗から学び、より良くなっていくしか成長の方法はないとも思います。だからって自分がしたことを正当化したいわけでもなく、やってしまったという痛みを感じることで贖罪とさせていただきたい……と思ったり。贖罪だなんてちょっと大袈裟な言い方かもしれませんが、本当に、そんな気持ちで。
少しでもより良い人になりたいと思います。過去の自分よりより良くなって、できるだけ多くの人を傷つけることがないような人になりたい。
過去を思い出すとその度にこうやって懺悔したくなります。『自分が赦されたいだけだろう!』と言われたら言い返しはできませんよ。実際私は赦されてしまいたい。できるならなかったことにしてしまいたいと思う。幼かったから、無知だったから、だから仕方がなかったよねと……しかし本当に赦されたなら、本当になかったことにされてしまったら、私はもう太陽の下で生きてはいけません。誰にも顔向けできません。
駄目なことは駄目なことです、悪いことは悪いことです。それをなかったことにはできません。だって、自分が傷つけた人たちを二度も三度も蔑ろにすることになってしまう。
こんなことすら自己満足なのかもしれません。相手がどう思っているのか分からない、知らないというのに、勝手に相手のことを想っているだなんて、傲慢以外の何物でもない。しかも今更。私にできることなど無いに等しいというのに。エゴの塊のようなものです。
…………じゃあ、当時の私の心は、一体誰が守ってくれたというのでしょう。相手の好意を甘んじて受け入れなければならなかったのですか、私は……いいや、違う、違うんだ、違う、そんなこと言うならお前がそいつらと離れたら良かっただけの話なんだ、私が、あの子達から離れればよかっただけのことで、ああ嫌だ、嫌だ、私ばかりが加害者になんてなりたくない、どうして、どうして!!『好き』だなんて気色の悪い暴言を吐いたあいつらも悪いじゃないか!!!!私の親切心を勝手に友情や恋心に変換し!!私の心を踏み躙ったのはあいつらじゃないか!!!!……あぁ、いやだ……いやだ……『正当化したいんだろう』そうに決まってるだろう畜生が!!『化けの皮が剥がれた』なんて、あぁ……ああ、そうだ、化けの皮をはがしてくれる人をずっと探していた、事実だけを淡々と処理してくれる貴方のような人を、傍観者の貴方をずっと探していた、どうか私のことを引っ掻いて、傷口を消毒して、絆創膏を貼って、どうか、淡々と作業をこなしてほしい、もう、嫌だな。
嫌だな、ほんとう、困っちゃいますね。私がやったことは悪いことです。人の好意を無下にするだけでなく弄んだ。その事実、私に非がある。それは覆しようがないんです。相手からの好意に寒気がしようと、家に帰ってゲボゲボいってようと、胎児のように丸まって脱力していようと、それは、相手には関係ないことだ。相手はただ私を好きでいてくれているだけでした。事実、暴力を振るったわけでも、暴言を吐いたわけでもないんです。それに私も人に好意を持ってもらえて確かに嬉しいと感じましたから。それでも『暴力を振るわれ暴言を吐かれた』と受け取ったのは、認知の歪んだ私だ。私がいくらどう言おうと、人は皆、相手に非はないと判断を下す。当たり前です。
それが嫌なわけではありません。ああ、嘘だ、嫌ですよ。味方が一人もいないのは辛い。でも、人の気持ちに漬け込んだのは、紛れもなく私です。相手と同じことをしている。
……?相手と同じことをしているなら、相手も反省すべきでは?どうして私だけが責められるのですか?相手はそんなつもりがなくとも私の心を踏み躙った。私もそんなつもりはなく相手の心を踏み躙った。どっちもどっちじゃないですか?私は、相手が私のことを好きだというから、その通りに振る舞ってあげただけです。何がいけなかったんですか?相手は喜んでましたよ。相手の望む通りに振る舞って、満足させてあけだじゃないですか。お駄賃を求めたりなんてしていません。ただ、望むように振る舞った。……なんで?
嫌われるのが怖かったから?
……でも、相手がもっと踏み越えてきた瞬間、それはNGだって言った。お前のことなんて好きでも何でもないんだから踏み越えてくるなと言っただけ。そうしたら傷ついたらしい。踏み越えてさえ来なければ私はずっと、求められるまま、現状維持を続けていたのに。好きを向けられることに吐きそうでも、好きだと思われていることを知る前の私の状態で接していたのに、どうして?踏み越えてくるほうが悪いのに、どうして私が『弄んだ』って言われるのですか?私はただ普通の知り合いくらいで接していたかっただけなのに、勝手に特別視されて、勝手に寄ってこられて、勝手に幻想を抱かれた、被害者じゃないですか。……好意を抱くのは勝手ですが、それを相手にぶつけて挙句見返りを求める相手の方が余程傲慢じゃないですか。私はその傲慢さに反吐が出そうになりながら必死で応えた。それがいけなかったのですか。求められるから応えなければならないというある種の強迫観念に駆られながら、それでも必死で今までの距離を保とうとした私が、悪だと?
だから、だから、だからだからだから!!!!最初からこっぴどく切り捨てられなかった中途半端野郎だったから!!だから結果的に弄んだってことになっちまったんだろうが!!!!じゃあ!!だったら一番最初に!!私に好意なんて抱いた奴らが悪いんだろ!!!好きという暴言を吐かれて脅された!!だから親切にしてないともっと怖い目に合うと思った!!だから自分の身を守るために相手に合わせて今まで通り親切にせざるを得なかっただけ!!!心に刃物向けられてそれでも立ち向かえって言うのかよ!!!それもお前の認知の歪みだろ!!!?
………………ごめんなさい、取り乱した。違う、取り乱しました、すみません。
私がおかしいんです。分かっています。きっと相手もこんな、とんだメンヘラ野郎なんかを好きになってしまって、不幸な方々です。どうしてこんな厄介な人間に魅力を感じてしまったのでしょうか、本当に目が節穴ですよね。じゃなくて、目が澄んでいらっしゃる。私が厄介な人間だと思わない、綺麗なおめめをしていらっしゃる。ああ……早く潰れてしまえばいいのに……じゃなくて……悪い人に騙される前に……でもなくて、騙したのは私なんでしたよね。
ぶ、あはははははは!!馬鹿だなあ本当に!どいつもこいつも!!!!特にお前だよクソが。
…………あ、違います、違うくて、そう、ごめんなさいね、はは、あっはっは!!……はぁ。『お前』って、私自身のことですよ。わざわざ訂正しなくても良かったですね、貴方は、言われなくても分かってるのに。……そら、そうだ。
いいや、本当に『お前』という生き物に対してかもしれない。
好かれることは嬉しいことで、殴られて痛めつけられて心の底から喜ぶ人のほうが少ない。当たり前ですよね、ほんと。
……?私は、殴られるのは嫌ですし、怒鳴られるのも嫌です。「ごめんなさいもうゆるしてください」と泣いて縋りたくなるほど嫌です。でも、少しだけ、ほっとします。人から好かれると、少しだけ嬉しいと思いますし、少しだけ有り難いなと思います。でも、怖くて、ブルブル震えて「ごめんなさいもうゆるしてください」とみっともなく泣いて許しを乞いたくなります。好かれることは、殴られることと同じくらい、痛くて恐ろしくて、嫌で、少しだけ、嬉しくて、ほっとして、ゲボりたくなる。
………………この話、なかったことに――――は、できないんでしたね。自分でそう言ったのに、すっかり忘れてました。それで、なんでしたっけ。もう、自分が何を…………。
このお茶美味しいですね。何茶ですか?黒豆茶?あ、普通の麦茶?あれ、これってただの水だったりしますか。そもそも私何も飲んでいませんよね。……ちょっと休憩してきます。
先程の話の続きなんですが『傷つけられた側の痛みなんて本当には分かっていないくせに』と言われたらそれも言い返しはできません。私が傷つけたと思っているものと、実際相手が感じている傷が、同じであるとは限らないし、同じだとも思えない。相手の痛みや苦しみがどれほどのものなのか私には計り知れない。本当に分かるとは言えない。私がやったことなのに、私がやったことでも。『分かるよ』なんて言ってしまえばそれこそ傲慢じゃないですか。
『人を傷つけた痛みなんて本当は分かっていないくせに』と言われても、私は否定できません。この痛みが本当の痛みなのかどうか私にも分からないし、相手も私の気持ちが『本当』かどうかなんて分からない。証明もできません。本当に分かっているのか分かっていないのかすら、私達はお互い、分からない。
だからどうか、この後悔という痛みが、せめてもの償いになっていればと願うばかりなんです。
………なにか、おかしなことを言ってしまっていますか?それなら今すぐ訂正します。って、それじゃ意味ないんでしたよね。……そもそも訂正箇所も分からない。
あれ、じゃあ、お前は私の気持ちが分かるというのか?私の気持ち、分かるのか。お前は私を傷つけたという認識をしているのか?それだけ私を問い詰めるなら、お前はお前の罪をさぞ自覚しているんだろうな?なぜお前は相手ばかりを責められると思っている。私は私の非を認めた。お前はお前の非を認められるか?認めず相手を責めるばかりか?他者ばかりを責める資格がお前にあるのか?お前に非は、一つもないと言い切れるのか?これだけ私は傷ついているというのに?お前だよ、お前。お前自身だ。
何の話でしたっけ。これ。
自分で話した内容すら覚えてないんです。私はさっき、なんと口走っていましたか。ごめんなさい、全部忘れて。忘れないで。私の言葉に嘘偽りはない。嘘だ。そんなわけない。ごめんなさい、ゆるしてほしい、ゆるさないで、赦されないということを許してほしい。やっぱり全部嘘です、ごめんなさい、ごめんなさい、ぅ、ごめんなさい、まともに考えられない、ゆるして、わからない、しりたくない、罵らないで、いっそ罵倒して、嫌だ、もうゆるして、痛いよぉ、もうやだ、やだよ、生きてられない!!!!
――――――あ。ごめんなさい、きっとこれもただのテンプレートです。気にしないで、続けてください。じゃなくて、あはは!続けるかどうかは私にかかってるのに、ほんと何言ってるんでしょうかね。
私は私が悪かったと思っているし、これっぽっちも悪くないと思っていますよ。相手も同じです。全面的に私が悪くて、全面的に相手が悪い。でも私も相手も悪くありません。だって、未熟だったんですから。生きている限り人と人との衝突は避けられません。未熟故に傷つき合う生き物、それが人間でしょう。それに対してグダグダ言ってたって意味ないんですよ。生きている限り避けられないことに文句を言って、ああ、本当に。……なんと言うべきでしょうか。馬鹿?愛おしい?可愛らしい?愚か?
それでも人間をやめられないのだから、何を言ったって辛いだけだ。
お茶、美味しかったです。ご馳走様でした」
君の話を聞いて私は美しいと思った。私の心は抉られるような痛みを伴い、眼球は潰れた。強烈に光り輝く何かに見えた。ただ君が美しかった。
だからどうか冷凍されてほしいと願った。凍りついて、そのまま目覚めないで、美しいままでいて。そう願った。
君のその感性を偽らずありのままの状態で太陽の下を歩いてしまえば、君はきっと生きていけない。もう既に死んだ方がましかもしれない。何故なら君の頭の中と心の中は歪みきって混沌とした地獄だったから。それだけ“美しい”のだから。
地獄そのものが美しいのか、地獄に耐え、それを抱えながら生きている君が美しいのか、解釈は何でもいい。私は君が美しいと思った。
だから冷凍した。
そんなことすっかり忘れて、久々に冷凍庫を漁ったら君が出てきた。もったいないから電子レンジで温め解凍しようと思って袋から取り出した。目の下に涙が流れた跡が残っていて、君は冷凍庫に押し入れられたとき泣いていたのかな、なんて思いを馳せた。
きっとずっと寂しかったんだろうね。君はただ、寂しかっただけなんだよ。寂しくて、悲しくて、誰にも理解されない孤独に苛まれて悶え苦しんだ。
可哀想に。
無情ながらにそう思った。それとも、無情だからそう思ったのかもしれない。
袋から取り出した君を見詰めていると、なんだか可哀想に思えて、それから愛おしく思えた。だからなんだか抱き締めたくなって、腕で包んで頬を寄せた。
冷凍焼けのにおいがした。
私が“美しい”と形容する君のにおいだ。
【太陽の下で】
「楽器はこれで全部か?」
「はい。」
今日の部活動は野外コンサート。
カラッと晴れた空の下、街中の広場で演奏をする。
「よし。まずはスタンドを片っ端から組み立てるぞ。」
「『はい!』」
4月に入部してから、もう半年が経過した。
私が所属する打楽器パートの人数は、引退と退部で3人に減った。
先輩はこのパート唯一の2年生だけど、とても頼りになる。
目つきの鋭さから、最初の1カ月くらいは怖がってしまった。
言い逃れができない程度には、距離を取ってしまった自覚もある。
それでも先輩は、いつでも優しく声をかけてくれた。
さっぱりした気質の人なのかもしれない。
「鍵盤の高さ、こんなもんで大丈夫か?」
『はい、ありがとうございます。』
「どうした?緊張でもしているのか?」
『そりゃあもう…。』
「いつも通りやれば問題ない。大丈夫だ。」
野心を秘めたような瞳にも慣れた今、
いつも爽やかな先輩は憧れになっていた。
楽器を扱う所作からは、何処となく品を感じる。
曲と向き合う真っ直ぐな姿は、勇ましくさえ見える。
つい先程も、パートリーダーとして指示を飛ばしていた先輩。
『…先輩って太陽みたい。』
「なんだ急に。」
『ほら、運搬も組み立てもさ、先輩が中心になってるじゃん。』
「それはそうだけどよ。」
『太陽を中心に、太陽系の惑星は公転しているから。』
「あぁ、そうきたか。」
同級生と駄弁りながらも組み立てを進める。
楽器のセッティングが終わると、じきに本番を迎える。
先生の指揮棒が上がり、各々が楽器を構える。
屋内での演奏と違い、反響するものがない。
だから精一杯、楽器を鳴らそう。音を響かせよう。
果てしなく広がる空で輝く、あの太陽にも届くように。
遥か遠くに感じる先輩に、少しでも近づけるように。
太陽の下でもう一度
お前と笑い合うことができるなら、
俺は過去に戻ることを望む
でもこのマシーンは、
お前に会うために
お前を救うために作ったのに
それはできない
未来を変えることは誰にも許されない
太陽の下で
太陽の下でまどろむ私の、まっさらな四肢
太陽の下で照らされるあなたの、琥珀色の瞳
いつまでも こうしていたかったのに
「洗濯物干してくる」
「ああ」
いつものようにベランダに向かう背中に、いつものようにPCに向かったまま答えた。
月が変わって最初の休日。
天気はすこぶる良く、絶好の洗濯日和だ。季節の変わり目で増えた洗濯物に同居人はむしろやり甲斐があると言って笑った。
窓から差し込む日差しは確かに暖かい。経理の為にPCに向かう手もかじかむことは無く、集中すればあと一時間ほどで終わるだろう。昼食はどこかに食べに行ってもいいかもしれない。
違和感に気付いたのは、少し経ってからだった。
足音が聞こえない。
洗濯物を広げる音も。
不審に思い、そちらに首を巡らせる。
「――」
真っ青な空。一枚だけ干してある白いバスタオル。
そして·····。
ベランダに手を掛けたまま、長身の背中が微動だにせず立ち尽くしている。言い知れぬ不安を感じて、思わず歩み寄った。
「·····どうした」
「·····」
答えは無い。恐る恐る覗き込むと、同居人は澄み渡る空を見上げながら目尻に涙を浮かべていた。
「ごめん。太陽が·····眩しくて」
ぽつりと力無く落とした声は、それが本当の理由では無いことを伝えている。
眩し過ぎる光。強い輝き。
それは恩恵を与えてくれるが、同時に苛烈に人を責める光でもあった。
「後は私がやっておくから休んでろ」
腕を掴んでなかば強引に部屋に連れていく。薄いレースのカーテンを引いて光を遮ると、もう一度「ごめん」と呟く声と共に同居人はベッドに沈んだ。
後ろめたい事など何も無い。
互いに互いの手を取る道を選んだ。それだけだ。
けれど·····あの眩しく輝く太陽は、罪を暴く炎のように私達を照らし出す。
青い空を睨みつけながら、許されなくても構わないと、そう思った。
END
「太陽の下で」
あなたと太陽の下で
手をつないで歩きたい
私のささやかな願い…
【太陽の下で】
あの日
太陽の下で笑っていた向日葵は
いつしか
冷たい地面を静かに見つめるようになっていた
坂マニアではないが、夏、自転車でダラダラ汗かきながら坂を上るのは好きだ。
夏が好き。夏の太陽が好き。
でも歳かな?災害級の猛暑のせいかな?この夏、何年ぶりだろう、久し振りに夏バテした。
自転車で汗だくになって坂を上り
頭からかぶる水 生きてる!
#80 太陽の下で
太陽の下で陽光を浴びると暖かい。体だけではなく心も温めてくれる。寒い時期にはそう言えるが、暑い時期にはとてもそんなふうには感じられない。人間は勝手だ。
自戒をこめて
他者から嫌われる覚悟がないくせに
他者から好かれようとするな
なにに侵されることなく
ただ笑っていて
_太陽の下で
太陽の塔の下でこう叫びたい。
「助けて、ひろしSUN!」
あの温かい太陽の下で、貴女が明るく笑って生きている姿を見ているだけで、俺たちは心から満ち足ります。
どうか、どうか。幸福に生きていってください。
俺のいちばん愛しいひと。
寒いなーなんて身を震わせる季節でも
太陽の下は暖かくて気持ちがいい。
心地良さに身を委ねて、
ついつい思い出してしまうのは君のこと。
#太陽の下で
太陽の下で
人に、よると思うが
その言葉を聞くと、ようやく日の下にでてきた、そんな情景を
思い浮かべる
それは、植物の根だったり
蝉の幼虫だったり
要するに、達成へ経過地点であり、それは未だ通過でしかないが
強い希望なのだ。
険しい山の登山で手に届きそうな頂きが見えた時だとか
フルマラソンでゴールが見えた瞬間だとか
どんなに計算式や化学方程式を組み重ねても
見つからない結論のピースが見つかった時だとか
あと一歩じゃないか、という驚きと呆気なさと
枯渇していた力が、どこから沸き起こる。
すべて使い切ったうえで最後に燃えるのは、太陽に感化された魂だ。
焼けただれそうな強い光であってのも
激しく打ちのめされて、自分の欠片や自分の螺旋を
諦めそうになる刹那
世界の魂が耳に木霊し、自分の振動に共鳴し
奮い立たせる
それが太陽の下だ
笑顔 泣き顔 時々怒り顔
拾ったり 捨てたり 迷ったりで
みんな同じ太陽の下
【太陽の下で】
大きな太陽がありました。
私の人生の半分を照らし、笑わせ、時に感動させ、時に身を灼き、されど視野をあかるくし、8月の31日まで私を導いてくださった、あまりにも眩しかった太陽が。
14色の光からなるそれは、毎日私を照らしました。私はそれに付き従い、崇め、奉り、あぁ我が神よ愛しい貴方と見つめておりました。
太陽が写し出したのが歴史だったので、歴史を学びました。
太陽にあてられた同胞が産み出した物語に心打たれ、同じく物語を綴りました。
太陽の光が減れど、帰ってくるものと信じて、その色をあるものとして描き続けました。
愛しい存在でした。何よりも輝くこの世の主役でした。中でも一等明るい中心の黒い光と、その右にある冷たく優しい赤い光のことを、不躾ながらお気に入りだと思っておりました。穏やかされど芯のあるミルクティーの光も、鮮やかでいち早く世界を彩るスカイブルーの光も、全て、私の心の一部となっていました。
眩しかった。その輝きは年を追う毎に強くなっていきました。新しい色を迎え入れ、更なる発展を確信していたのです。
いつからか。彼らを直視せず、地に落ちる像だけを見つめていたのだと気がついた時には、もう全てが遅かった。
突如、太陽は崩れ落ちました。
かの輝きは人工物でした。
光は人間でした。
荒々しい暑さが残る、夏の終わりのあの日のこと。
どうしようもなく、人間でした。
私の信仰は死んだのです。
あれから紆余曲折七転八倒右往左往天地逆転、様々なことがありました。
赤い光は月の元、青、黄緑、黄、紫、ミルクティーの光と共に自由に暮らせる賑やかな夜の街を作っています。
橙と桃と青緑の光は、それぞれ星として人々を導いています。
深緑の光は安寧を求め、光であることを辞しました。
白い光は数年振りに、その優しい輝きを見せてくださいました。
薄水色と薄藤色の光は沈黙を貫いています。
黒い光とスカイブルーの光は、太陽の欠片に破片を継ぎ足して、たまに光量調節を間違えつつ新たな太陽を作ろうと画策しています。
多くが、前を向いています。私以外の多くが。素晴らしいことです。健康的なことです。
ただ、それでも。月や星ではやはり、私の愛した輝き足り得なかった。悲しいほどに明確に。
私の愛した太陽と、その神話は終わってしまったのです。
これを持って、かの太陽に焦がれる心にとりあえずの終焉を。
愛した私への冥土の土産として。