わたくし

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【太陽の下で】

大きな太陽がありました。
私の人生の半分を照らし、笑わせ、時に感動させ、時に身を灼き、されど視野をあかるくし、8月の31日まで私を導いてくださった、あまりにも眩しかった太陽が。


14色の光からなるそれは、毎日私を照らしました。私はそれに付き従い、崇め、奉り、あぁ我が神よ愛しい貴方と見つめておりました。

太陽が写し出したのが歴史だったので、歴史を学びました。

太陽にあてられた同胞が産み出した物語に心打たれ、同じく物語を綴りました。

太陽の光が減れど、帰ってくるものと信じて、その色をあるものとして描き続けました。

愛しい存在でした。何よりも輝くこの世の主役でした。中でも一等明るい中心の黒い光と、その右にある冷たく優しい赤い光のことを、不躾ながらお気に入りだと思っておりました。穏やかされど芯のあるミルクティーの光も、鮮やかでいち早く世界を彩るスカイブルーの光も、全て、私の心の一部となっていました。


眩しかった。その輝きは年を追う毎に強くなっていきました。新しい色を迎え入れ、更なる発展を確信していたのです。
いつからか。彼らを直視せず、地に落ちる像だけを見つめていたのだと気がついた時には、もう全てが遅かった。


突如、太陽は崩れ落ちました。
かの輝きは人工物でした。
光は人間でした。
荒々しい暑さが残る、夏の終わりのあの日のこと。
どうしようもなく、人間でした。


私の信仰は死んだのです。


あれから紆余曲折七転八倒右往左往天地逆転、様々なことがありました。
赤い光は月の元、青、黄緑、黄、紫、ミルクティーの光と共に自由に暮らせる賑やかな夜の街を作っています。
橙と桃と青緑の光は、それぞれ星として人々を導いています。
深緑の光は安寧を求め、光であることを辞しました。
白い光は数年振りに、その優しい輝きを見せてくださいました。
薄水色と薄藤色の光は沈黙を貫いています。
黒い光とスカイブルーの光は、太陽の欠片に破片を継ぎ足して、たまに光量調節を間違えつつ新たな太陽を作ろうと画策しています。

多くが、前を向いています。私以外の多くが。素晴らしいことです。健康的なことです。

ただ、それでも。月や星ではやはり、私の愛した輝き足り得なかった。悲しいほどに明確に。
私の愛した太陽と、その神話は終わってしまったのです。

これを持って、かの太陽に焦がれる心にとりあえずの終焉を。
愛した私への冥土の土産として。

11/25/2024, 3:13:25 PM