『夜の海』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
わだつみの こえはまだ届くか
漁火が灯籠に変わる 終戦記念日
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脳内BGMは元ちとせさんの「ワダツミの木」
終戦記念日って盆の最中にあるんだなと、改めて感じています。地獄の釜の蓋もあく明日16日だけでなく、15日も休んでおられる漁師さんもおられるでしょう。盆の送り火として、海へ灯籠流しをされる地域もあるとききます。
私が本で読んだあの「きけ わだつみのこえ」を書いた人々も現世へいらしたりしたかしら。
ずっと戦前ではなく戦後でいたいよと心の中で呟いて、旅行先でもあまり出ない夜の海に思いを馳せていました。
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冬にしか見られないらしいのですが、空の氷の粒に漁火の光が反射する漁火光柱というのがあるんですって。いつか夜の海の空で見えたら良いな。
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地獄の釜の蓋があくという慣用句で、地獄の釜は蓋をせずに咎人を煮るイメージがあるので、いつも違和感を感じています。
地獄の釜の蓋という別名が雑草だと思っていたキランソウについているのを初めて知りました。万能な薬草で、地獄に行きかけの病人も現世に帰ってくるからだそうですが、これは使わないから蓋をするわけで、使わないときに蓋をあける慣用句とは反対のニュアンスだよね?と頭を抱えました。
これ、時間経てばどっちかわからなくなるやつですね…。
友人の葬式が終わったあと。何となく海を見にきた。
真夜中の、だれもいない海。
暗い、暗い海。
何となく、友人に似ていた。
目をつぶって、波の打ち寄せる音に耳を傾ける。
アイツとは、この波みたいに、気づかぬうちに離れては、また知らぬうちに元の場所へ戻っている。そんな距離感だったように思う。
会えば言い争ったり喧嘩したりが日常茶飯事だったが、自分にとってはそれがちょうど良くて。
気づいたら、その日常の中で、確固たる信頼関係が築かれていた。
その信頼を壊したくなくて、アイツにむけてはいけない想いが芽生えてからは、それを必死に押し殺して接してきた。
ただ一緒に生きていければそれで良かったのに、まさか、今死ぬなんて。しかも、アイツが先に。
近くにいたときには押さえられていたあの気持ちが、いざ離れてからは溢れてきて止まらない。
会いたい。
会いたい。
「……」
不意に、波の音に混じって、名前を呼ぶ声がした気がして、目を開けた。
声の主を探すが、そこには真っ暗な海があるばかり。
でも、なんだか、そこに『いる』気がする。会える気がする。
…会いに行こう。会って、この気持ちを、今まで抱えていた分の「だいすき」を全部吐き出すんだ。
そうして気づけば、夜の海に身を沈めていた。
【夜の海】
【夜の海】
夜の海は
朝の海や、昼の海にあわず
悲しそうに見える。
夜の海
静かだけど波の音が聞こえてきそう
真っ暗だけど輝いて見えそう
敵にも見方にもならずに寄り添ってくれそう
夜の海
暑すぎて
日が沈んでから
出掛ける毎日だけど
そうか
海も夜行けば良かったのか
黒く蠢く海の底
漣だけが聞こえる
冷たい波打ち際
足が砂浜に沈む感覚
このまま、波に攫われて
あなたのそばにいけたなら
夜の海にクラゲが一匹。
あなたがそれを捕まえて
月に照らしたのを
少しだけかわいそうだと思った
波が押し寄せ
風が吹き
髪をゆらす
星が瞬き
月明かりが私を照らす
複雑な気持ちを抱えて
海を眺める
まだあの人と一緒にいたかったな
そんなことを考えながら
暗闇に涙をこぼした
【夜の海】
『夜の海』
静かに奏でる波の音
海に浮かぶ月と星
夜空に照らされた海は
波をも綺麗に映し出す
小波の音を聞きながら
どこを見ても煌めく景色より
1番光るものはなんだろう
夜の海
海の縁のない土地で
産まれた私には
想像つかないけど
ホタルイカは好き
《夜の海》
煌く夜光虫 押し寄せる潮騒 月影は波頭に砕ける 水平線にすべりゆく緑色灯は右舷の、赤色灯は左舷のしるし 灯台の明滅 ひそやかに引きまた満ちる潮 松原の船陰にて逢瀬 夜目にも白くそびえる洋館は夏の別荘
暗くて
誰もいなくて
静かなのに
こわいな
こわいから、いかないで
私を置いていなくならないでよ
(夜の海)
夜の海
私と出逢う1週間前に
お父さんを亡くした彼は
一軒家から2DKのアパートに
お母さんと引っ越した
就職しても
家賃と光熱費を払ったら
ほとんど残らない
ひと言もお金の話は
二人の間では出なかったけれど
唯一の趣味の車を手放したとき
もうどこにも連れて行って
あげられないよ
別れる?
私の目を覗きながら
彼はそう言った
バイトの帰りに迎えに来て
落ち込む私を
夜の海に連れて行ってくれたよ
人混みが苦手な私を
花火がよく見える人気の少ない
公園に連れて行ってくれたよ
別れるわけないでしょう
頑張ってお金を貯めて
一緒に車買おうよ
いろいろ考えすぎて
その一言が出なかった
愛している
それは
簡単に言えるのに
どうして別れたくない
一緒にいたい
あのとき
素直に言えなかったんだろう
夜の海に造られた一本の道は、私をどこに連れて行くのだろうか。
行き着く先は分からない。
神様のいたずらに乾杯。
夜の海に友達と行って
夜の海に家族と行って
たまに
夜の海に一人で行く
一人で行ってもいいじゃんか
帰り道一人なのに このまま醒めるのまじきちいな
もうちょっとだけでいいから東京の海、眺めてたい
ヒッピーみたいなフリしてるけどぶっちゃけ寂しがりなんだよ
缶ビールも底をついて 頼みのあいつも返事無いし
こんな夜も有り得るって頭ではわかってるけど
寂しいな
“誰もが照らされててみんな迷子みたいだな”
うわ、何言ってんだろ酔っぱらいの癖に
昔はキャラ立ちとか考えてたけど、今日はもうこれでいっか
もうちょっと歩くのもそんな悪くはないかな
夜の海
海なし県民ゆえに
海とのご縁は少ない
さらに夜の海ともなれば
たぶん数回
夜の砂浜を歩いたの、記憶にはある
月夜でもなかったし
暗いし
とにかく暗くて
あとは波の音ばかり
ちょっとどころかかなり怖かった
友人たちと一緒だからこその経験
月明かりだけが照らす薄暗い浜辺。
そこに私はただ一人座り、物思いにふける。
私は幸せだ、何も不自由ない生活ができて。
そのはずだが、心の中で “何か” が激しく動いている。
もやもやっとした、黒い “何か” が。
その “何か” は、いつも私を苦しめる。
ずっと心の奥深くまで染み入るように、チクチクと。
その “何か” は、棘のように鋭く、氷のように冷たい。
でも大丈夫。
ここに来れば、私は救われる。
波の音が、その “何か” を埋めてくれるから。
波は私の心にかぶさりながら、その音を奏でる。
いつまでも繰り返されるメロディが、とても心地よい。
私が何も言わずとも、波は私を迎え入れる。
いつまでも居ていいことを教えてくれるかのよう。
いつまでも、いつまでも、
「一緒にいてくれませんか。」
____ざざっ
と短く、けれど誠実に、返事をした。
そして “何か” は、しばらく姿を消した。
しかし私には “何か” を完全に消すことは出来ない。
だから、また現れた時には、波に会いに行くの。
#夜の海
夜の海
ザザァー
波の音が聞こえる。
私以外誰もいない。
そりゃそうだ。
夜だから。今は、20時。
仕事でミスをしたときとか、彼氏と喧嘩したときとかによく来る。
今日も部長に怒られたなぁ。
後輩のミスはお前の責任だ!って。
そんなこと言ったら、私のミスは部長のミスじゃんか!
そんなことは言えないけど、夜の海は静かで疲れた私の心を癒してくれる。
よし、帰ってビールでも飲むか。
砂浜にできた私の足跡を、白波が消していく。
夜の海の波の音、
子守り歌で
眠りにつく
波が一日の記憶を
洗い流してくれた
故郷の海は
今日も静かに
打ち寄せているのだろうか。