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友人の葬式が終わったあと。何となく海を見にきた。

真夜中の、だれもいない海。
暗い、暗い海。
何となく、友人に似ていた。


目をつぶって、波の打ち寄せる音に耳を傾ける。



アイツとは、この波みたいに、気づかぬうちに離れては、また知らぬうちに元の場所へ戻っている。そんな距離感だったように思う。
会えば言い争ったり喧嘩したりが日常茶飯事だったが、自分にとってはそれがちょうど良くて。
気づいたら、その日常の中で、確固たる信頼関係が築かれていた。
その信頼を壊したくなくて、アイツにむけてはいけない想いが芽生えてからは、それを必死に押し殺して接してきた。



ただ一緒に生きていければそれで良かったのに、まさか、今死ぬなんて。しかも、アイツが先に。

近くにいたときには押さえられていたあの気持ちが、いざ離れてからは溢れてきて止まらない。



会いたい。






会いたい。


「……」

不意に、波の音に混じって、名前を呼ぶ声がした気がして、目を開けた。



声の主を探すが、そこには真っ暗な海があるばかり。
でも、なんだか、そこに『いる』気がする。会える気がする。


…会いに行こう。会って、この気持ちを、今まで抱えていた分の「だいすき」を全部吐き出すんだ。




そうして気づけば、夜の海に身を沈めていた。


【夜の海】

8/15/2024, 11:17:08 AM