向かい合わせ』の作文集

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向かい合わせ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

8/25/2023, 1:35:24 PM

「ママ、きらい!」

目にいっぱいの涙を溜めて、ツトムは言った。
小さなスーパーのお菓子コーナー、買い物客たちは「何事か」とこっちを見ている。

勘弁してくれ。自分の子どもが産まれるまで、私はそちら側にいた。お菓子コーナーでギャンギャン駄々をこねる子どもを見て、「躾のなってない子」だとか「お菓子くらい買ってあげればいいのに」とか…所詮他人事で好き勝手思っていた。

だが子どもが産まれて、成長して、2歳を越えた頃からイヤイヤが始まり、今我が家のツトムは過去に見た「躾のなってない」子どもになっていた。ツトムはついに泣き出し、スーパーの床へ突っ伏した。

なぜ?なぜこんな事になっていると思う?
ツトムが欲しかった、有名なパンのキャラクターのラムネが売り切れだったからだ。

私は目線を合わせるようにしゃがんで、向かい合わせになるようにツトムを立たせようとする。
だが、立たない。まるでタコのように、軟体動物化した2歳児は立たすことすら困難である。

「大人気だから、もうこのキャラクターはないんだって!これもラムネだよ、この機関車の…」
「見て!こっちにはパンのキャラクターのお菓子があるよ!こっちでもいいんじゃない?」

私は買い物客たちの視線を痛いほど受けつつ、最大限に優しく必死でツトムと向き合おうとする。

「やだー!これじゃなきゃやだー!」

肩に置いた手を振り払われ、泣き声の勢いは増す。
泣きたいのは、こっちだわ。無いものはどうやっても買えないよ…

漫画で見るような、床で突っ伏し手足をバタバタなんて…本当にする子が居るんだな。号泣しながら床に寝転ぶ我が子を見て、他人になりたいと思ってしまった。
ここまで勢いが付いてしまえば、もうどうやっても止められない。

怒鳴ったところで聞く耳なんて持ってないし、冷静に話合いもできない。

海老反りになって「イヤイヤ」とうねるツトムをどうにか抱えて、買い物カートをレジの人に頼み、その場を離れた。

「見た?お菓子くらい買ってあげればいいのに」

去り際に届いた声、私は何とも言えない気持ちになった。



ひとしきり泣いたツトムは、ジュースが飲みたいと言い出した。ジュースとパンのキャラクターのお菓子を自分で持ち、レジのお姉さんにご機嫌で手渡した。

「買い物カート、ありがとうございます。騒いですみませんでした」

「全然、大丈夫ですよ〜!お母さん大変ですね、うちの甥っ子も同じ年くらいのとき、大雨の中地面に突っ伏してました!理由聞きます?」
 
あまりに明るく話てくれるから、私はハッとして顔を上げる。美人な金髪の店員さんと向かい合わせになる。目があった瞬間、ニコッと笑いかけてくれる。

「自転車移動だから不可能なんだけど、合羽じゃなくて傘を持ちたかったんです。」

8/25/2023, 1:34:17 PM

美味しいお酒

 美味しいご飯

 楽しい会話

 そして、大好きな笑顔

 今年は、向かい合わせで過ごした方が多いと思う。

 あたしも、その1人だ。


 長かった…

 向かい合わせが。


だから、とても愛おしいのだ!!



             梅茶々

8/25/2023, 1:31:22 PM

「それじゃあ、隣の人と席を向かい合わせて。お互い協力して課題を進めてください。期限は一ヶ月です」
 そう指示されるまま、隣に座っている女子と席を合わせた。
「よろしく」
「……ん」
 挨拶しているというのに、あまりにそっけない返事。こんな調子で大丈夫かよと不安になるが、先生に文句言ったところでどうにもならないだろう。それに普段からよく読書をしている人だ。きっと成績はみんなが知らないだけでいいに違いない。
「自由課題のテーマどうする?」
「なんでもいいよ、あなたに合わせる」
「あなたって?」
 読みかけの本に栞を挟んで彼女は机の中に片付けた。
「私クラスメイトの名前覚える気ないの。だから誰とも話さないし、名前で呼ばない」
 なんだかめんどくさそうな人だなと思って、それ以上深掘りはしなかった。結局テーマは俺の方で勝手に明治文学から現代文学についてにした。これなら彼女もやりやすいだろうと思った。案の定、次の授業の時間には彼女は明治時代から現代に至るまでの歴史的な推移や新たに生まれた手法、著名な作家についてまとめたノートを持ってきてくれていた。もうこれだけで課題はほとんど完成したようなものだった。
「すごいね、これ一週間でやったの?」
「部活もやってないし、時間はあるから」
 それを受け取った俺はパソコン室に行ってパワーポイントを作った。本当ならこれも二人でやらなければならないが、彼女がこれだけのノートを作ったのだからこれだけでもと引き受けた。
 二週間ほどでパワーポイントも完成して、いよいよ発表に向けての準備を始めた。原稿は俺が作ると言い出したが彼女がなにがなんでも譲らなかった。しょうもないことで喧嘩するのも嫌だったので、任せた。
 そして、発表が近づいてきた頃、先生に呼び出された。
「ペアになった女の子から何か聞いていない?」
 遠回しな探られかたをしてなんだか嫌な気がした。
「なんにも聞いてないっす」
「そっかー。まぁ先生から話すって言ったもんね」
 なんなんですかと答えを急かした。
 すると、先生はすっと真面目な顔になった。
「あのね、今度の課題発表の時あの子には原稿を覚えさせようとしないで欲しいの」
 意味がわからず、困惑する。どういうことなのかと聞いてみる。先生は簡単に説明するとあの子は人より記憶力が弱いらしく、人の名前や会話内容、文章を覚えるのが苦手らしい。
 それを聞いて納得した。先生にはわかりましたと伝えて、職員室を出た。これからやることは決まっていた。
 あれからしばらくして発表の日が来た。先生に頼まれた通り、彼女から原稿を受け取って発表をこなした。俺と関わるのは今日で終わりだと思っているのだろう。でも、そうはさせなかった。
 翌日、教室で本を読んでいた彼女に声をかけた。
「おはよう」
「……ん」
 すぐに目を背けて、本に視線を落とした。
「俺のことは覚えなくていい。俺もお前のこと名前で呼ばないから」
 本に指を挟んで、彼女はこちらを見た。
「なに考えてるの。私なんかと一緒にいたって楽しくない」
「俺が仲良くしたいんだ。覚えてくれなくても、嫌われるまで話しかけていいか」
 自分で言い放っておいて、恥ずかしくなった。これではまるで告白みたいだ。まだ、恋愛感情なんてないはずなのに、不思議そうにこちらを見ている目がいつもより綺麗に見える。
「……私はなんて呼べばいい? 明日、覚えてるかわかんないけど」
 その答えに心の底から喜んだ。
「なぁなぁでも。お前でも。毎回名札を確認してくれても。なんでも。お前の好きな呼び方でいい」
 その呼び方がきっと、俺を形作る。

8/25/2023, 1:31:15 PM

雨がドキドキを与えた。風に下心を運ばせた。太陽を憎み、笑う日もあった。雨が降って喜んだ。風に運を託した。大雨が降った後、虹の傍で必死に汗を流した。

私は笑っていたが、何も知らなかった。

雨が心を落ち着かせる。風が人生のように見える。太陽がどこか哀しくみえる。雨が降る。風が吹く。太陽が照らす。大雨が降る。虹が描いてるのに気づく。

私は知っている。だから笑った。

―その青年は、誇りと諦めを目に宿している。

maru

8/25/2023, 1:28:50 PM

8/25 お題「向かい合わせ」

 小さなご主人様がおっしゃったのです。
「どうして並んでるの? お顔が見えないよ」と。

 そうして、私は彼女の顔を正面から見据えることになりました。
 箱の中にいる時は顔を丁寧に紙に包まれ、外に出る際は先程の通り横に並んでおりますから、こんなに間近でしげしげと眺めることはそうそうありません。卵のような輪郭に白い肌、優しく細められた目。すっと通った鼻、小さな唇。やはり、美しい方であらせられます。
 こんなに美しい方がずっと隣にいらっしゃることに、私は改めて幸せを感じます。

「…ん? 何でお内裏様とお雛様向かい合ってるの?」
「だって、並んでたら二人とも顔が見えないもん」
「そ、そっかー」
「あれ? なんか、お雛様もお内裏様も赤くなっちゃってる?」
「ほんとだ。うーん、右大臣みたいね…」

(所要時間:10分)

8/25/2023, 1:27:04 PM

テーマ:向かい合わせ #285

「向かい合わせに座るとなんか……恥ずかしいね」
彼女はそう言って頬を赤らめた。
何だか僕も恥ずかしくなってきてしまって顔をそらす。
「そうだね」
この年になって初めての彼女なんて恥ずかしいが、
彼女らきっと気づいている。
「ごめん。頼りなくて」
僕が彼女にボソッというと彼女は言った。
「それはお互い様だよ」

8/25/2023, 1:25:33 PM

#65【向かい合わせ】


隣り合わせじゃ苦しくて

背中合わせじゃ寂しくて

向かい合わせになるけれど

君の想いは入り合わせ

8/25/2023, 1:22:14 PM

向かい合わせ

水面と空
それを眺めている
その外にいる

誰側でもない
ただの私がいる場所

そうでなければ
どちらかしか見えない

どちらでもないことの重要性

あなたでなければいけない場所がある
誰かではいけない場所
だからこそあなたがいる

誰でもいい場所なんていても仕方ない
数は大切だけど所詮はひとつに過ぎない

必要な数だけいたらいいのに
数が力みたいになってたりするが
増え過ぎたそれを無駄と言うんだよ

あなたが必要としてるのは数ではない
あなたしか行けない場所だと思う

共有することで別々だと解る
違いの分だけ数になる
共有することで助けにもなる

8/25/2023, 1:22:12 PM

【向かい合わせ】

レイは緊張したまま、向かい合わせに座った身体のデカい男を上目遣いに見た。

名前はナカジマシュンと言うらしい。通っている高校はレイの通う高校より偏差値が低い所だ。それに目つきが悪くていかにも、不良みたいな雰囲気の男。普段なら絶対に関わりたくないタイプだが、この男の体格は完璧だし、カフェの店長とのやりとりを見ている限りでは、そんなに危ない奴ではないはずだ。

「なにそれ?」

男が喋った。レイのカバンの中のスケッチブックを指差している。

「え…と、これは僕が書いたデザイン画なんだけど…」
「見てもいい?」
「う、うん!」

レイからスケッチブックを受け取ってパラパラとめくり始めたシュンはほとんど表情を変えずに、
「すげぇ…」
とつぶやいた。仲の良い友達には何度も見せてるし褒められるのは慣れてるはずなのに、なぜか顔から火が吹き出しそうだ。

いつも、少し斜めから物事を見てきた。こうやって真正面から何かに立ち向かい、真正面からのぞき込まれるのは、怖いし、いたたまれない気持ちになる。でも、これはチャンスでもあるんだ。

「ここ、最後のページ。」
そこには、がっしりした男性に着てほしくてデザインした、黒をベースとした衣装が書かれている。
「なんか、ガンダムみたいでかっこいいな。」
シュンの顔が一瞬、おもちゃを見つけた子どものように輝いて見えた。
「うん。『変幻』っていうテーマで作ったんだ。着方を変えると、日常的にも着れるようなデザインにしてある。」
「へぇ。」

レイはすぅっと息を吸い込んで、言った。
「これを、着てほしいんだ。モデルになって欲しい。」
シュンがぽかんとした顔をしている。
「え、俺が?なんで?」
「なんでって…。体格がいいし、イメージにぴったりなんだ。絶対かっこよくなるよ!」
シュンは目をぱちくりさせてこっちを見ている。眼光鋭いと思っていた瞳は、よく見てみるとただひたすらに黒く、何もないようにすら見える。まるでブラックホールだ。

(吸い込まれそう…)

もちろん気のせいだろうが、かすかに引力のようなものを感じてめまいがしかけたときだ。店長の声が聞こえた。
「シュン、モデルやるの?いいねぇー。背も高いし、ばっちりハマるんじゃないの?」
例にもれず、なんともいけ好かないニヤついた顔でカウンター越しにこちらを見ている。日曜日のお昼どき、料理の出ないこのカフェはガランとしていて、レイたちの他に客はいない。

「別にいいけど…、具体的にどんな事すんの?」
「まず、シュ、シュン君の体格に合わせて衣装を制作するから、採寸させてほしいんだ。出来上がったら着てもらって、写真をとりたい。」
名前を呼ぼうとして、噛んだ。穴があったら入りたい。
「それくらいなら、いいよ。」
シュンは何も気にしてなさそうだ。
「ほんと?じゃあ、今度うちに来てもらってもいいかな。」
今度は跳び上がって叫び出しそうだ。レイはなんとか感情を抑えた。もしかしたら文化祭でファッションショーができるかもしれない、ってことは、まだ言わなくていいかな。

(冷たい奴に見えたけど、こんな顔するんだな。)

シュンは心の中で感心していた。レイは抑えたつもりだったが、デザインにかける情熱、その熱量は、向かい合わせに座るシュンの方までしっかりと流れ込んで来ていたのだ。

8/25/2023, 1:21:32 PM

向かい合わせ


こんなに暑さが残るのに
夕暮れは気づかぬうちに
早くなってきて

白い雲を赤く染める
まだまた暑いですねと
ヘッドライトは行き交う

何が正解なのか
わからない日々でも
何かしらを選んで
過ごしてるんだから
立ち止まる暇はない

迷い、振り返りながら
向き合ってるんだから
やっぱりあの時って
言わせてください

あの時の迷い
知らせてください
どれが正しかったか
教えてください

気持ちの
行ったり来たりは
いつものことで
なんでもない顔して
心はふらついている

迷う時ほど思う
自分なりの答え
簡単に見つかる
ものじゃないけど
人生をかけて探す

悩みながら考え
価値観は少しずつ
形になってくる
それでも
いつも潜む迷い

自分の中では
なかったことに
出来るけど

忘れたことに
した瞬間に
ウソをついた
ことになる

背中の痛みのように
わかっていても
手が届かない

どうにかするにも
自分しかいない
己の心と向き合いながら

明日になれば消えて
なくなってしまうから
そうなる前に己に向かい
信じた景色に出会えますように

8/25/2023, 1:20:25 PM

向かい合わせ

鏡を見て、自分と向かい合わせになる。
鏡なら当然、自分が笑えば笑う。泣けば泣く。

人と向かい合わせになった時、その人と同じ表情になっているだろうか。対等になれているだろうか。

自分を卑下しすぎて、相手に合わせ過ぎて、無理をしている、そういうのじゃない自分がいい。

堂々とした自分をもって、人と向かい合わせになりたい。

8/25/2023, 1:18:14 PM

「ふぅ...」
僕は机にしまってあった椅子を引き出し,それに腰をかけた
...来た
ここ最近,僕が席に座ると机を挟んで向かいに彼女が座るんだ。彼女って言っても付き合ってるわけじゃない。ただ毎回僕の向かいに座ってるため気があるのではと思ってしまっている。実際彼女は見た目は若めで短髪,肌は少し焼けてるくらいで丁度僕のタイプなのだ。なので,僕も少し気になっている。しかし,奥手な僕は自分から話しかけることが出来ない。いつも彼女から話しかけてくれる。ああ,今彼女が準備が終わり僕に話しかけようとしている。
『それでは取り調べを始めます』

僕と彼女の向かい合い

8/25/2023, 1:15:49 PM

題:向かい合わせ

いつだって貴方とは
向かい合わせだったのに、

あの日突然貴方は
どこか遠くへ行ってしまったね。

私を置いて。

8/25/2023, 1:12:17 PM

隣に寝ても
恥ずかしいからと背を向けて眠りについたのに
僕の目が覚めると向かい合わせに寝ている
愛おしい君

そっと柔らかい髪を撫でると一瞬、微笑んだ顔をする
「起きてるの?」
「起きてないよ?」
閉じていた目がゆっくり開いて
目が合う君と笑い合う
この瞬間が幸せと言うのかな

8/25/2023, 1:10:55 PM

いつだったか用事があって母親と出かけて、電車に乗って座席に座ってたんだ

そしたら高校生のカップルが乗ってきて、向かい側に座ったんだよ

この二人がイチャイチャしだして、なんならチューするんじゃないかってくらいのいきおいでさ

それを母親と並んで見せられる気まずさったら…

いやあ、あの4駅は長かったなあ

8/25/2023, 1:09:18 PM

電車に乗って
子どもと並んで座っていると
急にキャッキャと笑いだす

向かいの席のお兄さん
変顔したり手品をしたり
声も出さずに七変化

少しの間なのに別れが惜しい
多くの子を喜ばせてるんだろな
素敵なエンターテイナー




「向かい合わせ」

#203

8/25/2023, 1:07:56 PM

2人組ずつ組まされると俺はほぼ必ずと言って良いほど君と向かい合わせになる。君は俺より少し小さい、ほんの少し目線が下がる。君は少しだけ俺を見上げ、そしてほんのちょっと眉を顰めるを
何見てんの? 何も見てないよ。
嘘。君を見ているよ。
嘘。本当は見てないくせに。
互いに口には出さない。想像の会話。妄想の君。
いや。嘘。
実際口にしても同じことを思うだろうな。
それほどまでに俺と君は。

なに?

「…なに?」
君が俺を見上げて想像通りに言うものだから、俺はただただ微笑んだ。


向かい合わせ

8/25/2023, 1:06:52 PM

お題:向かい合わせ

 朝目を覚ますと、飼ってる犬に覗きこまれている。
ジーと私を見ている、 寝ぼけた頭で何で犬は私を見ているんだと考える。
そして私と犬が向かい合わせで見ていることに気づく。
(今日は確か仕事は休みだったな、よし寝よう!)
しかし寝汚い自分は二度寝をしようとする、すると二度寝することが分かってるのか、犬は私を起こそうとする。
〘飼い主朝だぞ!おいらの朝ごはんを準備しろ!〙
まるでそう言ってるみたいに、飼い主の私の腹の上にドスンと遠慮なく乗ってくる。
「分かった、起きるから降りて、飼い主の腰が死ぬ」
観念してそう言うと、私の顔を見てから降りてエサ入れのとこで待つ、全く君の体重を考えてくれ18キロあるんだぞ。
 犬のご飯を準備した、ガツガツ食べている。
自分のご飯も準備し、食事すると私の視界に入るように私の真向かい座っている。
ご飯が欲しいのか、私にかまって欲しいのか。
どっちにしろ可愛い奴め。
それからお外に行って散歩したり、ご飯をあげ、おもちゃで一緒に遊んだりした。
そして寝る時はやはり私の真向かいに来て、眠り始めた犬を今日も一日愛でて一日が終わった。
「おやすみなさい」
やはり向かい合わせで今日も寝るらしい。

8/25/2023, 1:06:31 PM

目の前に悪魔がいた。教師という名称を盾に偉い態度で椅子に座っている悪魔が何か喋っている。唯一聴き取れたのは、なぜクラスに来てくれないのかと言うことだけだった。なぜ、そんなのは明確だろうに。クラスに行かないのは、そのクラスに問題があるから行けないのだ。更にその問題を起こしたのは、目の前のかつて人間だった教師だ。
かつての自分の姿を忘れてしまった哀れな悪魔は、まるで神かのように救いの手を差し伸べようとしている。けれど、実際はその手にあるのは救済ではなく地獄への道連れコースでしかない。だからこそ、私はこの悪魔を哀れまずにいられないのだろうか。もしかしたら、神も悪魔も元は同じなのかもしれないと考えてしまうのは、私がこの悪魔の対面に立っているからだろうか。

神と悪魔はいつでも向かい合わせの場所にいる。

お終い

8/25/2023, 1:03:56 PM

向かい合わせ




向かい合わせに座るキミは、いつも窓の外を見ている。
窓がない席では、壁とかを見つめている。
絶対にこっちを見ない。いつも私が一人でべらべら喋るだけ。
どんな話をしても、うんともすんとも言わない。ただ、軽く頷くだけ。
黙っていても、支障はないがつまらない。何か話して欲しい。
手を伸ばして、触れようとすると上手く避けられる。
向かい合わせなのに、遠く離れている感じがした。
歩いている時もそう、先々歩いていく。その後ろを必死についていく。
ある程度距離が空くと、振り返って待っててくれるが、範囲内に入るとまた歩き始める。
嫌われているのか、そうでないのかよくわからない。何を考えているか、たまにわからない。
とうとう怒りが爆発して、言いたいことを山ほど言った。
すると、きょとんとした顔をした後、困った表情をするキミ。

「なんか怒らせちゃってごめん。でも、いつも緊張して、どうしたらいいかわからなかったから、つい、甘えていたかもしれない」

初めて目と目が合った。綺麗な黒い瞳に長いまつ毛。整った顔立ち。
色白の肌はどう手入れをしたら、そんな肌を保てるのか、疑問に思う。
とてもじゃない、キラキラ輝いて眩しいので、目を閉じてしまった。

「え、なんで目を閉じるの?どこか痛い?」

ここぞとばかりに声かけなくていい。――待って、声、そんな良い声してた?
というか、話すのも久しぶりなような気がする、いつぶりだと思うくらい。

「大丈夫?」

恐る恐る目を開くと、まだ眩しかった。
この人を好きになってしまった自分が悪い。ただ単に不器用なだけだったんだ。
普段から不器用なのはわかっていたが、もっと理解するべきだった。

「大丈夫、大丈夫。ごめんね、なんか」

「……ううん、僕もごめんね」

頭を優しく撫でられた。じんわりと涙が出る。

「隣でも緊張するのに、向かい合わせになると余計に。顔を見ると、何話せばいいかって……」

早口で喋るキミ。頑張って、頭働かせて言葉を選びつつ話してくれている。
段々声が小さくなり、目線も逸らす。まるで、叱られた大型犬がしょんぼりと反省しているように見えた。

「わかった、もういいよ、ありがとう」

私の言葉を聞くと安心したような表情をする。

「これから、少しずつ慣れていこう」

向かい合わせ、いつ慣れるかわからないけど、気長に待とう。
自分が選んだ人だ。不器用だけど、優しくて、心配も一応してくれる。
キミなりに気を遣ってくれているのが、よく見ればわかることだ。
焦る必要なんてないし、みんながみんな一緒じゃない。
完璧なんてつまらない、不器用くらいがちょうど良いと思った。
今日も向かい合わせに座るキミ。いつもみたいに窓の外を見るのではなく、今日はこっちを見てくれた。
でも、すぐに窓の外を見てしまう。その様子を見て、クスリと私は笑ってしまったのだった――

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