『冬のはじまり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
明確に切り替わってくれたらいいのに。8℃の翌日が20℃とかやめてくれ。
彼は毎年同じ事を言う。
朝。
「布団から出るのが億劫になってきた」
昼は
「食堂から見えるイチョウがいつのまにか全部真っ黄色になっていたよ」
夜、帰ってくると
「オリオン座が凄く綺麗に見えたよ」
私は彼のこんな言葉で季節の始まりと終わりを知り、時の流れを知る。
黄色がどんな色かも、オリオン座がどんな形をしているのかも、まるで分からないのだけれど。
彼の声がそれはとても綺麗なものなのだと教えてくれるから、私にとって冬も、春も、夏も、秋も、どれもこれも美しく、世界はそれだけで生きる価値があるのだと思えてくるのだ。
END
「冬のはじまり」
つい最近まで
暑い暑いと言っていたような
いつの間にこんなにも寒くなったんだろう
冬が一気に訪れて
またわたしの苦手な季節に
正直ストーブの効いた部屋に
四六時中篭もりたい
また明日も出勤して
今朝も寒いですねと
恒例の挨拶を交わす
朝から晩まで
靴下を履くようになったのが
冬の訪れの合図かな
暑さ和らぎ
心地よい季節に
冷たいつむじ風
ふと
振り替えれば
落ち葉、舞い
冬の足音
今年も来たか
短い袖を伸ばし
空を見上げる──
(2023.11.29/冬のはじまり)
街を歩けばクリスマスソングが流れてて
イルミネーションがあって
お店のショーケースも赤と緑でキラキラしてる。
冬の始まりを感じる。
冬は人肌が恋しいって言うけど
それほんとだなぁ。
周りのカップルが羨ましいし
良い感じの男の子ができたって話も聞いた。
友達の幸せな話聞かせてくれるのすっごい嬉しい。
だけどちょっと刺さったりする。
口では「めっちゃいいやん!私まで嬉しい!」
ってちゃんと言えるのに、
心では「なんで私は幸せになれないの?何が違うの?」って思っちゃう。
そんな自分が嫌になる冬の始まり。
サンタさんみたいになりたい。
子どもたちの幸せのためにって寒い中幸せを配る人。
サンタさんに憧れる冬の始まり。
【冬のはじまり】
辺り一面の銀世界
太陽の光でキラキラ光っている
この美しい景色の中にいる私はきっと邪魔な存在なのだろう
消えてなくなりたい
冬が始まる。
冬が始まるそれは孤独の始まりだと私はおもう。
寒くて、葉も落ち緑がない。
私の家には、こたつとか暖房とかない
静かで寒くて、誰の声も聞こえない。
冬の始まり。
死にたくなる。
冬が始まる。
冬が始まるそれは孤独の始まりだと私はおもう。
寒くて、葉も落ち緑がない。
私の家には、こたつとか暖房とかない
静かで寒くて、誰の声も聞こえない。
冬の始まり。
死にたくなる。
【冬のはじまり】
冬がはじまったなあ、と思う時は
仕事から家に帰ると
コタツがある時
奥さんが出しておいてくれたんだな、とつい微笑んでしまう
「まだコタツには早いんじゃない?」
と言いながらもスイッチを入れて、足を突っ込むと
奥さんから「たまに寒い日もあるでしょ」との答えが返ってくる
そのうち足だけが温まってきて
ああ、もう冬だな、って
太陽がいなくなって
静かな月の時間が長くなる。
次に目覚めたときは
どんな景色なのだろう。
「冬のはじまり」
鍋を買った。
これまでは
1人鍋だったから
いつも使ってる
片手鍋で
十分で
あまり
必要性を
感じなかった。
2人暮らしになったら
やっぱり
ちゃんとした鍋
欲しいな〜
と試しに
買ってみた。
大正解だった。
これから
毎日
鍋になるかもね。
よろしく!
#冬のはじまり
「ただいま。」
新しく買った鞄を床に降ろし、スーツから着替える。
日も傾きかけて薄ら寒かったので、マフラーだけは付けたままにしておいた。
「おかえり、お義母さんの家にお泊まりだから、荷物まとめといてね。」
奥から妻の声がする。分かった、と応えてそういえば…と、昔のことを思い返す。
「ただいま」
そう両親に最後に言ったのは、いつだっただろうか。分かるのは思い出せないくらい前だということくらい。
僕の家族は、良く言えばいざこざのない安定した家庭、悪く言えば互いに興味関心がない無の家庭であった。会話も、一線を超えないような、心を許せない相手との会話のようなものでしかなかった。
だからといって、寂しさはなかった。少し、そのような感情が欠落していることは自分でも理解しているつもりだったし、何より、無くても困らないようなものだと思っていた。
ただ、無性に物足りなく感じることもあった。
幼なじみだった妻は、穏やかで、心を満たしてくれるよう存在だった。
おそらく、自分の今までの人生で最も会話をしているのは彼女だろう。
僕は他人との関わりが極端に少なかったが、いつでも彼女がいたから、気にはならなかった。
「親と全然会話をしない、か…。確かに今は近くにいるのが当たり前だもんね。」
そう彼女に言われたことがある。
足元の石ころを転がしながら、そうかな、と曖昧な返事をしたのを覚えている。
久しぶりに、実家の玄関に立つ。
なんと言って入るべきか、ただいま、だろうか。それとも何も言わずに入ろうか…。
思考を巡らせるが、最適解が見つからない。
と、妻が、
「ただいま戻りました。ご無沙汰してます」
と、声をかける。
「あら、いらっしゃい。寒かったでしょ。久しぶりねぇ」
と、母が出てきた。
少し会っていなかっただけなのに、長年あっていなかったかのように思えた。
なんだか、胸の当たりがそわそわして、思わず
「ただいま」
と言っていた。
「えぇ。」
何故か、おかえりとは言われなかったけど、それがまた可笑しくて、嬉しかった。
やっぱりここが家だなと、安堵する自分がいた。
―冬のはじまり―
#冬のはじまり
空からふわりふわりと白いものが落ちてきた。
手の上に乗り、すっと溶けたそれは久しぶりに見るゆきだった。
明日から寒くなるぞ。
俺は独りごちて、コートのチャックを1番上まであげたのだった。
クローゼットの奥からコートを引っ張り出し
去年はどんな服の組み合わせをしていたか悩み
毎年クリスマスになぜだか焦燥感を感じて
毎年ついてるだけの紅白の出場者を気にして
帰ってくるのかと電話が来るのを少しダルそうに出る
また1年が過ぎていく
朝の冷たい空気の中、職場を目指す。まだ開け切らない空がより凍える心地だ。
近道の広場には自分のほかに通学通勤の為に通り過ぎる姿が見えた。仲間意識から彼らを横目で見ていれば足元から不自然な音がした。地面を踏みしめるたびシャリと音がする。解らないだけで土を持ち上げる氷が敷き詰められているらしい。
それに気がつくと雑草にキラキラしたものが見える。
水蒸気が葉に付着し凍った様だ。
いよいよもって冬がはじまったと実感するほかない。
肌を突き刺すような朝の空気に、
冬のはじまりを感じる
頬にあたる風の冷たさで
また一つ季節が老いたことを知る。
隣を歩くきみに寒いね、なんて
声をかけようとして僕は口を噤む。
強張った頬を染めて前を向く姿が
まるで知らない人のようで。
もし声をかければ
微笑むと分かっていても。
その横顔を眺めていたかった。
あと幾つ、僕の知らないきみを見つけるのだろう。
この季節が巡るたび、またひとつ、またひとつ。
冬がはじまる。
お題【冬の始まり】
気温が下がる。
寒さを感じる。
着るものが変わる。
始まりには合図がある。
さあ、合図を感じ取れ。合図をだすのは、お前自身だ。
「今日は寒いねー!」
そう君は言いつつ、軽快に豆を挽いてコーヒーを淹れている。まぁ君は年がら年中コーヒーは淹れてるからそれをもって冬のはじまりとは言えない。
俺は君のコーヒーを待たずにベランダに出た。うっひょー、今日は一際風が冷たいぜ。
なんでわざわざ外出たの? と君がマグカップを2つ持って追いかけてくる。
「寒いけど天気いいからさ――コーヒーさんきゅ」
俺にマグを渡して君は、自分のマグからコーヒーを一口ごくり。ホント雲ひとつないいいお天気だねーと空を見上げた。
俺はそんな君をチラ見。もこもこ部屋着から指先だけ出す萌え袖スタイルに両手で包み込んだあったかいマグカップ。
いやーまさに冬がはじまりましたなー。
▼冬のはじまり
形をなさない夢の輪郭がアラームの音で溶けていく。昨日の自分が設定した喧しい音を止めるために、枕元の携帯を手繰り寄せる。
午前六時。布団から出たくない。自分の体温の籠った、暖かでふかふかな塊がこちらを引き留めようと重くなっているような気さえする。一晩をかけて冷やされた部屋の空気を拒絶する。携帯を元の場所に戻し、近くに置いてあるリモコンを取って、エアコンを起動させる。それがやがてゴオオ、と温風を吐き出す音を聞いて、自分の判断は間違っていなかったと小さく確信した。
やるべき事はわかっていても、再びあの心地良い夢に戻りたいと布団に潜る。どうせ三十分後にはまたアラームがこちらを起こそうと電子音を鳴らすのだ。まだ時間はある。自分に言い訳をする間もなく、今この部屋でもっとも優しい寝具たちは瞼を閉じることを唆した。
自分の耳に入ってきた音をアラームだと認識するのに、三十分前よりは時間を必要としなかった。
ロック画面に表示された時間を見て、先程よりずっと暖まった部屋の空気を知って、幸せな時間というものはいつも一瞬だと悟る。渋々とまず上半身だけを起こし、数分をかけて名残惜しさを感じつつ、ベッドからようやく立ち上がる。
洗面所に移動する前にテレビの電源をつけ、いつもと同じ情報番組をBGM代わりにする。
空調の効いていない洗面所と冷えた蛇口の水に寒さを訴えながら歯を磨く。顔を洗う。指先の温度を犠牲にして目を覚ますことが出来た。
今日は燃えるゴミの日。前日の夜に出してしまえばいいとわかってはいるものの、何だかんだで毎度忘れてしまうのだ。
指定のゴミ袋に一通り詰め込んで、寝間着から適当な服に着替えて、家の鍵をポケットに入れて玄関の戸を開ける。
文明の利器によって自分のために作り上げられた適温から突然、自然のあるべき温度に晒される。羽織った上着をもう少し厚いものにするべきだったかな、などと考えながら、結局はゴミ捨てに行くだけだからと肌寒さを諦めた。
膨らんだゴミ袋を片手にアパートの廊下を歩き、階段を下りる。ふと自分が吐き出した息が白く立ち上っていくのに気が付いた。
子供の頃はこれが楽しくて仕方がなかったのを覚えている。ランドセルを背負って、防寒着に包まれて、はっはっと短く息を吐き出すことを繰り返したかと思えば、今度は汽車のように長く太く煙の真似事をした。横を歩く友達に見せて笑った。
冬の朝は嫌いじゃない。大好きだと言えるほど寒さに強いわけでも、待ち侘びている程でもないけれど、何だか青の白んだ空が、呼吸をする度に肺を冷やしていく空気が、どの季節よりも透き通った綺麗なものであるような気がする。
ゴミを出して、特に意味もなく深呼吸をした。寒さが喉を通っていく。肺に落ちて、やがて体の内側がひんやりとするのを味わった。もうそんな季節だった。
思えば日が落ちるのもいつの間にかすっかり早くなっていた。出掛ければ、目に入る店々がクリスマスの飾りつけをして限定の商品やらメニューやらを掲げていた。街ゆく二人組が仲睦まじく手を繋いで会話をする光景さえもがイルミネーションを彷彿とさせた。
微々たる変化は日々起こっているのだろうが、こうして以前との差が歴然とならなければ気が付けない。
去年の自分はこの冷たい空気を吸ってどんなことを考えていただろうか。あっという間だったような気もするのに、日々は確実に過ぎていて思い出せない。
ただ、きっと自分は来年もこうして季節の変わり目を感じるのだろう。一年なんてそんなものだ。多分。
それでも、クリスマスまではまだ少し遠い気がする。
始まったばかりの今日を、いつも通りの生活を再開するため、アパートに向けて踵を返した。
【冬のはじまり】