何でもないフリ』の作文集

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何でもないフリ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

12/11/2024, 4:51:48 PM

ポーカーフェイス。
私は「何でもないフリ」をするのが得意だ。

「何でもないフリ」をすることで、時間が経って、結局、何でもなかったということは、よくあるし・・
でも、ある意味、その時の自分を欺いているわけで、自分と向き合えていないこともある。

時には「何でもないフリ」をしてやり過ごす。
でも、時には、きちんと自分と向き合う。
難しいけれど、そういうバランスって大切なんだろうなぁ・・

12/11/2024, 4:29:02 PM

何でもないフリ

気の迷いだったよ
予感のようなものだったよ
きっといなくなりたくなるだろうなあだなんて。

お互い、踵を返し切れないこと
察し合っていたよ
後ろ髪があってよかったね、引かれるものがあってよかったね
惹かれるものを持っててよかったね
お互い素敵な人でよかったね

沢山の対話があったね
大事な言葉を幾つも貰ったよ
棺桶にも入れたいプレゼントだよ

あなたは心の専門家なんだったね
いくらでも解ろうとしていたね
豊富な知識を駆使して
機微を両手で掬うあなたの眼差しと
慎重に受け取る声が大切だったよ

包まれる勇気がなかったの
変化を待つあなたのあたたかさと余裕に
申し訳なくなってしまったの
もう少し時間が必要だった

ある日あなたは泣き出してしまった
境界が溶けたせいで
私が深層に詰めて隠していた
タールのような恐れが 
あなたを傷つけてしまった

今度こそ
あなたの差し出した慈愛に対峙したい
それを今しようとしてるよ

もう隠さない、素振りなんて、あなたに言われた通り
全部出してしまおう
キャラクターもレッテルも
持ち続けるだけあなたが苦しくなる。
余裕を演出できるほど私は強くない。

きっと、そんな弱いくらいが本当は強いと
あなたは真っ直ぐに言うだろうから。

逃げる為に閉じて
鍵までかけたドアを開けた。

「ただいま」

優しくて聡明なあなたは怒らない。
全部伝わってるよ、と綺麗な目で語る。

「うん、おかえり」
「もう守るために隠さなくていいからね」

12/11/2024, 4:18:11 PM

→短編・何でもないフリで、お行儀よく座ってらっしゃい。

お止しなさいよ、お止しなさいよ。
遥か昔に貴方の舞台は幕を下ろしたんですよ。

やれやれ、
華やかな昔日の栄光を急に思い出したのですね。
ふむ? 彼らを告発する?
困ったなぁ。
ねぇ、マダム?
少し昔話をしましょうか?
当時の貴方は、パトロンたちが引き起こした不徳に気づかないフリをした。知らん顔でそっぽを向いてらしたじゃないですか。
お忘れですか?
今になってソイツを蒸し返すのは賢い選択ではありませんよ。
何度でも言います。お止しなさい。

それにしてもそのお洋服、よく見つけてらしたこと!
よくお召しでしたね。
さぁさぁ、鏡はこちら。よくご覧なさい。
今ではすっかり虫食いだらけ。

あぁ、長く立ってらしてお疲れになった?
どうぞ、車椅子はこちらです。
さぁ、お部屋に戻って着換えましょうね。
そんなキョトンとしたお顔をして、どうしたんです?
虫食いの服を着た理由がわからない?
まぁ、そんなこともありましょう。
そうだ、少し聞いて下さいな、マダム。
今の貴方の生活は、かつてのパトロン方のご厚意の上に成り立っている。そのことを忘れちゃいけません。
気まぐれの義憤は、貴方を宿無しにしてしまいますよ。
私が何を言っているのか分からない? 彼らには感謝しかしていない?
そうですか、それなら結構。

面倒なことは言いません。
ありきたりですけれど光射すところには影がある。
だから、どうぞおとなしく座ってらっしゃいな。

テーマ; 何でもないフリ

12/11/2024, 4:11:36 PM

本当に何でもないのか

何でもないフリなのか

自分でも分からなくなったの


上手になったのに

苦しくなるだけなのね




_何でもないフリ

12/11/2024, 4:05:58 PM

【何でもないフリ】


自分に『大丈夫』と言い聞かせ
何でもないフリをする

そんなもの
全然、大丈夫ではないし
フリでしかない

だって、本当に大丈夫な時には
『大丈夫』なんて
わざわざ言葉にして
意識したりなんか
しないでしょ?

玄関チャイムの音が苦手な私は
うーばーイーツのCMで
『ビクッ』としたら
それはもう、弱っている時なんだ

しっかり休んで
自分を甘やかして
もっと楽して
生きていきたいねぇ

12/11/2024, 4:05:54 PM

ポーカーフェイスとまではいかないが、平静を装うのは得意な方だと思う。感情を露わにしても何も変わらないという諦めがそうさせている。それは実の家族に対しても変わらない。あまりにも人生において自分の意思を蔑ろにされることが多かったせいだ。その蔑ろにしていた当人とは縁が切れて5年が経った。それでも染み付いた習性というのはなかなか変わらない。

12/11/2024, 4:04:31 PM

何でもないフリ

彼女は何でもないフリをしているが、きっとつらいのだろうな。
人に痛みや辛さを見せることに慣れていない人間にとっては、萎縮してしまい余計に視線を考えてしまう。
また恐ろしく感じてしまうものさ。

12/11/2024, 4:02:56 PM

本当は今すぐにでも

逃げたいよ

泣きたいよ

叫びたいよ


生きることに前向きじゃなくなって

心から笑えることが少なくなって

頑張りたいのにどうしてもできなくて

それでまた自分を嫌いになって

この世の全て消えちゃえばいいのにって思う



こんなこと誰にも言えないからさ

それでも私は"何でもないフリ"をして
周りに愛想笑いを振りまいて

明日も生きるんだ

12/11/2024, 4:02:51 PM

大丈夫。気にしないで。

申し訳なさと安心の混ざった顔

この程度なんでもないって!

一雫の嘘、渇いた心から滲み出る

まだ大丈夫。まだ絞り出せる。

12/11/2024, 3:57:55 PM

何でもないフリ
いったい誰のため?

相手のため?
余計な心配をさせない
相手の精神を守れる

自分のため?
これまでの自分が
崩壊してないと知らしめる
自分の精神を守れる

誰のためだとしても
どんな理由だとしても
その瞬間大切と思っているものを
守ろうとしている

人は同時にたくさんのものを
大切に思っている

大切を天秤にかけて
仕方なくもう片方の大切を
犠牲にすることもあるけれど
同時に大切を守ろうとすることもある

なのに守ったはずの大切を
それによって傷つけてしまうのは
いったいどんな理屈なのだろう…

12/11/2024, 3:57:51 PM

最近君の笑顔が増えたようだ
ただでさえ可愛い君がもっと眩しくなった
君がずっとずっと遠くにいるみたいに僕は思う
どうやら僕の勘は案外当たるらしい
早足で歩いていた僕の視界に君が映る
隣の男と親しげに喋っている君の姿が
そっかどおりで。
考えたくもなかったことだがなぜだか妙にしっくりくる
君の魅力に気づいてるのが僕だけのはずがない
それはずっと分かっていたことだ
僕はさっきと同じように早足で歩く
この頃寒くなってきて乾燥肌の僕には辛い
でも全然平気だ、寒いのにも痛いのにも慣れてる
大丈夫、痛くない。
僕はネックウォーマーに顔を埋めた

12/11/2024, 3:50:56 PM

何でもないフリ


友達いっぱいいそうだよね。

◯◯さんならどこに行ってもやっていけそうだよね。

プライベートにしろ、職場にしろ、新しく知り合った人にはそんな風に言われることが多い。

長年の付き合いがある人や親にまでそう思われているきらいがある。

いや、間違ってはいない。

たしかに間違ってはいないのだが……。

ときどきその言葉が私を息苦しくさせることがある。

なぜなら、それが心からの褒め言葉ではないことを私が感じ取ってしまうからだ。

たしかに私は自他ともに認める超ポジティブ人間で楽しいことが大好きだ。

人への気遣いも忘れたことはない。

一人で寂しそうにしている人がいたら声を掛けずにはいられないし、陰口で盛り上がる人の輪には極力入らないようにしている。

要は人の目に映る私は完璧な人なのだ。

ただ、完璧な人が人に好かれるわけではないことも私は知ってしまっている。

何でもないフリだけがどんどん得意になっていく。

つらくないフリ
痛くないフリ
悲しくないフリ
寂しくないフリ

本当の私はいったいどんな人間なのか?

それすらもう分からなくなってしまっているのだ。


この世にただ一人、なぜか娘だけは私の素性を知っている。

「お母さん、マジで闇深いわ~。」

そう言われるたびに、私は娘にニヤリと笑ってみせるのだ。




お題
何でもないフリ

12/11/2024, 3:47:14 PM

なんでもないフリしてたってお見通し
相変わらずウソ吐くの下手だね

#何でもないフリ

12/11/2024, 3:46:53 PM

13

「ただいまー!戻ったぜ」
そう言って元気良く扉を開けたものの、部屋は暗く物音の一つもしなかった。

俺は一先ず玄関の明かりを付けると、ポケットに入れていたスマホを取り出し、時間を確認する。
19時32分。普段この時間にはあいつはもう帰っているはずである。
そのままメッセージを確認したが、何の通知もない。
俺はそのまま目線を下に落とした。茶色の革靴がきっちりと揃えられ置いてある。

―――という事は―――。

俺は目線を廊下の奥にあるリビングへと移す。
開け放しのカーテンからは藍色の空が覗いている。部屋は暗く、ほとんど何も見えなかった。
俺は暫くその場で考えたのち、普段よりもなるべく静かに靴を脱ぐと、そのまま廊下をそっと進む。
そうして出来る限り静かにリビングへと入ると、俺は部屋の隅へ視線を移した。

頭から毛布を掛け、一人うずくまっている影。
俺は部屋の電気を暗くしたまま、そちらへとゆっくり近付いた。

「―――帰ったのか」

毛布の隙間から顔を覗かせ、そいつはぽそりと口を開いた。 

「ああ、今帰ったぜ。遅くなってすまねえな」
「―――別に。いつもこれくらいだろう」

俺はそいつの前まで来ると、なるべく物音を立てぬようにゆっくりと近くに鞄を置き、その場に屈んだ。
すぐ近くにあるそいつの綺麗な顔は毛布に半分ほど隠れていたが、長い睫毛に囲まれた翡翠の瞳は普段よりも弱弱しい光を湛えていた。
毛布を握るその手は変わらず白かったが、指先は少し赤かった。

「今日は寒ぃな。もっと厚いコートでも着ていけば良かったぜ」
「年がら年中同じ格好でいるくせに。―――ココアでも淹れる。待っていろ」

そいつはそう言うと、被る毛布を取ろうと頭に手を伸ばした。
白く細い指が僅かに震えている。
俺はその手をそっと掴み、ゆっくりと下へ降ろした。

「良い。そんな事は後で俺がやる」

そいつは一瞬息を詰まらせた後、俺の手をぱっと振りほどいた。 

「余計な気を遣うな。俺は大丈夫だ」

そいつがそう気丈に言い放って立ち上がろうとした瞬間、外から突如車のクラクションが鳴り響いた。
びくり、とその細身の身体が揺れる。両耳を手で塞ぎ、その美しい顔面を苦しみで歪めている。

「―――こんな日、今までだって何回も乗り越えてきた。大丈夫だ、何ともない」

己に言い聞かせるようにそいつはそう言うと、震えるその手を耳から離した。

瞳が揺れている。
こんなにも辛いであろうに、己の内から来る苦しみに懸命に耐えるのか―――

俺は一歩そいつに歩み寄る。
そうして己の手でそいつの両耳をそっと塞ぐと、その翡翠の瞳をじっと見つめた。

「おい―――」
「なあ、今日は寒いんだ。もう少し、お前にくっつかせてくれよ」

そう言って俺はそいつの後ろにそのまま回り込み、毛布を再び頭に被せ震えるその背中をそっと抱きしめた。

「やっぱあったけえな、くっついてると」

「………ばか」


冬の澄んだ星空が、窓の外で輝いていた。

12/11/2024, 3:42:36 PM

何でもないフリ

「なんでもないよ、?」

いつの間にか"フリ"だけが上手くなってこの社会で生きて行けなくなるのだ。

12/11/2024, 3:42:28 PM

何でもないフリ


優しい人がやる

それが君。

焦っている時にする
それが僕。

強がる時にする。
それが君。


背中合わせで 君と僕

12/11/2024, 3:35:09 PM

何でもないフリもあれば
何かあったフリもある

そこに共通すること

一人ではないってこと

フリって 一人でいたら 必要のないこと 
一人っきりではできないこと しなくていいこと

それを知って 何を感じる???

12/11/2024, 3:33:41 PM

『何でもないフリ』
感情を表に出すな。常に無表情でいろ。私は小さい時から両親にそう言われて育ってきた。どれだけ悲しかろうが、怒っていようがそれを顔に出せば激しく殴りつけられた。そんな生活を何年も続けていると、感情を隠すこと……つまりは「何でもないフリ」をすることが当たり前になっていた。当然、周りからは変人扱いされ、いじめられ、孤立した。
そのまま月日は流れて大学受験の時、面接で落とされた。感情があまりにも表に出ないので何を考えているのかが分からないというのが理由だった。
不合格を伝えると両親は私を罵った。
なんでそんな簡単なことができないんだ。なんでこんな子に育ってしまったんだ。そんな事を言われて呆然としていたのだろう。その時の記憶は曖昧だが、気がつけば私は両親を刺し殺していた。警察に自首しようか。そうも考えたが、こんな奴らのために人生をこれ以上掻き乱されるのは御免だと思い、死体はバラバラにして誰にも見つかることのないであろう場所へと隠した。それから私はこれまで通りの生活を送っている。私はこの事を誰にも気づかれないために、この命が尽きるまで「何でもないフリ」をし続けるのだろう。

12/11/2024, 3:30:51 PM

テーマ:何でもないふり

君に恋人ができたようだ。
13年と云う長い片思いだった。
幼稚園からずっと一緒だった。

僕がもっと大人で男らしかったら
君は僕を選んでくれたのだろううか?

生憎僕はどちらかというと
中性的で病気がちで君の好みの正反対だったね。

恋人ができたと楽しそうに
僕に話してくれるけど
僕が何にも思ってないとでも思っているのだろうか。

今更考えても仕方ない。
…と諦められたらどれだけよかったか。

何でもないふりなんてできるか。
君と其奴が別れるまで待ってやろうじゃないか。
君のことを一番わかっているのは僕なのだから。
だから今は"何でもないふり"をしていてあげる。

12/11/2024, 3:26:07 PM

ふとした時に、離れた手の温もりを思い返す。決まってその日の夜は、堰を切ったように過去の記憶が押し寄せてくるため感傷で溺れる前に、弱音もろとも酒で無理矢理流し込んで蓋をするのが常だった。
 今日も同じく、馴染みの酒場へやってきている。人目のある、適度にざわついた場所は助かる。家で一人晩酌などした日にはたちまち寂しさに襲われて駄目になってしまいそうだからだ。図体ばかりでかい堅物の戦士が、脆いものである。これでも若い頃は、毎日賞金稼ぎに魔物の棲みつく森へ繰り出していた。食い繋ぐための報酬目的に始めた冒険者という肩書きは、生まれ持った力と磨いた剣技でどこまでいけるか試すにはちょうど良く、難しいクエストに挑戦しては強敵を倒せる喜びに夢中だった。時折ギルドから栄誉を讃え礼状を頂く、なんてこともあったが、本来冒険者は四人で一つのパーティーを組むのが通例だ。しかし、チームプレイが苦手な自分は結局一人で行くことの方が多かった。
 そんな日常が続いたある日のこと。連戦後の休憩中、ランクSの敵に遭遇した。持参の回復薬も底を尽きこれまでかと死を覚悟した刹那、巨大な氷の刃が敵の核を貫いていた。前方数十メートル先には魔法使い──かつて太陽の下で肩を組んで笑い合った、旧知の友が居た。未熟だった少年時代、修行場で出会った彼もまたパーティーを組まず一人で戦う冒険者になっていた。はぐれ者同士、風の噂で評判は知っていてお互いにもしやと思ってはいたが、会えてすぐ意気投合し、以降は二人でダンジョンを挑むことが多くなっていった。
 十数年前のあの事件が起こるまでは。

「注文のおつまみ、お持ちしましたぁ」

 愛想の良い女性店員がことり、とテーブルに皿を置いていく。酒の肴に頼んだチーズと塩胡椒のきいたケモノ肉は食欲を唆る香りを放っている。酔って味が分からなくなる前にと口の中へ放り込んだ。咀嚼しながら、思い出してしまったことを後悔する。
 十数年前、謎の黒い渦が自然発生する事件が起こった。街に警報が届いて数日後、ギルドの名簿からは奴の名前が消えていた。受付も、知り合いの戦士も、同じ職業であれば少なからず彼の名を耳にしたことはあるだろう魔法使いでさえ、誰も知らないと言う。暫く姿を見せない時は必要ないと言っても連絡をしてくる奴が突然消えるなど可笑しいと思った。同時に、どうして自分だけが覚えているんだとも。けれども、一ヶ月、数ヶ月、数年と時間が経つにつれ幾ら探し回っても何処にも居ないという結論に至った。それなのに未練がましくもこうして酒を煽りながら待っているわけだ。

「いや違う!!!」

 ドン! と、思わず強く机を叩き大きな声を出してしまった。客は何事かと一斉にこちらを振り向いたが酔っ払いが右往左往するここでは日常茶飯事らしく、すぐに先程までの喧騒が戻ってくる。歳を取ると見境が無くなって困るな。理性と共に残った羞恥心で酔いは覚め、心配して声をかけてくれた店員に勘定を頼むとそそくさと酒場を出ることにした。
 最近はこんな事ばかりだ。それもこれも夢に件の友が出てくるからだ。夢に出るのは今に始まったことじゃないが最近は特に頻繁で、まるで絶対忘れないよう呪いをかけられている、ような。……別れから十数年、最早きっぱり切り離して前を向こうとすると必ず夢に出てきて存在を主張する。それにまんまと嵌り、逆恨みと言われようがこれだけ続けば恨みたくもなるもの。考えてみれば忽然と姿を消した奴にとって自分の存在なんて薄っぺらいもんだったかもしれない、なんて──

「よーし! まだくたばってなかったようだな。感心感心」

 突如、爽やかなハーブの香りが風に乗って鼻孔を擽り、空から降ってきたのは酷く聞き馴染みのある声。裏地に模様の入った夜闇色のマントを翻し、裾に付いた水晶を満足気に眺める魔法使いが宙に浮かんでいる。消えた彼も、よく似たマントを羽織り自慢していたことを思い出した。

「しっかし、随分草臥れたねえ。これが彼の有名な〝白銀の騎士様〟とは思えないおいぼれ……っとお!」
「剣の太刀筋までは衰えていないぞ」
「感動の再会にいきなり斬り込む奴があるか! 死ぬかと思った」
「生き霊じゃないのか?」
「一度死にかけたがな。ほらよ、生きてるだろう」
「手が、温かい……」

 浮かぶのをやめて地上に降りた彼の気安い口調は紛れも無く記憶の中の友を表していた。手を取って生きている事を確認させるのは、死と隣り合わせの状況で生きる自分達には分かりやすい生存報告のようなもので。幼い頃癖付いた家族との習わしを、笑わず聞いてくれた思い出が蘇り涙が零れた。年甲斐も無く、ただぼろぼろと。


「黒い渦に呑まれた時はどうなることかと思った」

 翌日、彼は自分に何が起こったのかを事細かに説明した。まず、謎の黒い渦は上級悪魔の悪あがきによって出来たもので、近付いた冒険者を魔界へ飛ばすというなんとも傍迷惑な罠であった。彼もその餌食の一人だったのだがパーティーを組まずとも戦えるほどの魔法使いなので当然そこらの冒険者より強く、すぐに自力で這い上がることも可能だったがどうせなら悪魔を返り討ちにして更に黒い渦も無くそうと思い、虎視眈々と計画を立てていたと言う。その間、連絡が出来ない代わりに返り討ちにした悪魔から呪いのかけ方を教わり、絶対自分を忘れないよう文字通り呪文をかけていたらしい。否応無く夢に出てきたのはその所為だった。魔界では時間の流れが変わることを知らず、歳もほとんど経ることなく過ごしていたため帰ってきてとても驚いたそうだ。だからってふざけるな。取り残された者がどんな思いで、ときつく言いたくなったが、誰に忘れられてもいいからお前にだけは忘れてほしくなかった、と言われれば口を噤むしかなかった。
 目の前で笑う彼の姿は十数年前と変わらず、老いてしまった自分の姿はすっかり変わってしまったけれど、握った手の温もりも冒険へ向かう二人の姿も、これからも変わらないんだろうなと思うと今夜は安心して眠れそうだった。


#仲間 #手を繋いで

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