『今一番欲しいもの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
今一番欲しいもの
平和で静かに穏やかに暮らしていける、安心できる場所が欲しい。
【今一番欲しいもの】
私の感情を言語化してくれるものがほしい。
でも、わからないほうがいい感情もあるかもね。
「私が、今一番欲しい者は、あなたです。
あなたが、今一番欲しい物は、それです。
あなたではなく私が、誰よりコレを、今一番欲しいんだもの。 ……あとは何だろな」
物、者、藻の、Mono。今一番欲しいものって言われてもな。某所在住物書きは「もの」の予測変換を辿りながら、ぽつり呟いた。
ところでこのアプリに関してでも良いなら、有料で良いから広告削除プランか、もしくは文章に過去投稿分へのリンク埋め込む方法も欲しい。
1年以上前から、なんちゃっての続き物で書いてきてるため、伏線回収が面倒なのだ。過去作リンクができれば、もっと色々ギミックを仕込めるのだが。
「……無理かなぁ」
ぽつり、ぽつり。物書きはなおも呟く。
広告強制終了の方法を習得できたの「だけ」は、このアプリに感謝しても良いと思った。
――――――
今日も今日とて、手強いやら難しいやらなお題ですね。こんなおはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某アパートの一室に、雪国出身で藤森というのが住んでおり、
藤森の部屋には週1〜2回、不思議な子狐が不思議なお餅を売りに来るのでした。
現実感ガン無視とか、細かいことは気にしません。
大抵童話で狐は喋るし、なんなら「ごんぎつね」や「手袋を買いに」なんて前例もあるのです。
気にしない、気にしない。「そういうおはなし」だと諦めましょう。――さて。
「これが、狐の執着か……」
今日の藤森の部屋は、たいそう賑やかでした。
藤森は、ため息ついて突っ立って、首筋をカリリ。
視線の先では例の子狐が、狐の本能と食欲に従い、赤いかき氷をしゃくしゃく、もしゃもしゃ。
それはスイカアイスの素で作った氷を、しゃりしゃり、かき氷メーカーで削ったプチ贅沢。
先日、具体的には過去作7月18日投稿分あたりに、藤森が購入してきたプチプラでした。
その日もいつも通り氷を削って、ぼっちでしゃくしゃく、プチ贅沢を堪能しておった藤森。
『いいにおい、いいにおい!』
子狐コンコン、部屋に入るや否や、かき氷の香りを感知。発生源を正確に、瞬時に特定して、猛烈ダッシュからのかき氷をパクリ!
味を覚えた子狐は、これぞ自分が今一番欲しいものとばかりに、藤森の持つかき氷の器に顔からダイブ!
そのまましゃくしゃく、食べ始めてしまいました。
「おいしい。おいしい」
「子狐、あの、そのへんにしておけ」
「やだ。おいしい」
「そんなにがっつくと、頭が痛くなるぞ」
「だいじょーぶ!おいしい」
「ほら返しなさい。かわりに油揚げと稲荷寿司、」
「ダメ!さわらないで!ダメッ!」
ギャン!ギャン!
捻くれ者が近づくと、コンコン子狐、食べ物を取られまいと大声で威嚇して、噛みつこうとしてきます。
その全力の声量の、大きいこと、大きいこと。
防音の部屋で良かった。藤森は思いました。
かき氷の器を優しく取り上げようとすると子狐ギャンギャン、いっちょまえに吠え立てて、
かき氷の器から手を遠ざけると子狐しゃくしゃく、尻尾ぶんぶん。幸福そうに氷を食べます。
しまいにはペロペロ、溶けたスイカ氷のジュースも飲み干して、コンコン、こやこや。
おかわりが欲しくて、尻尾をバチクソ振り回し、おめめをキラキラ輝かせるのでした。
「子狐。おまえの今一番欲しいもの、本当にスイカのかき氷か。十分な量はもう食ったんじゃないか」
「キツネ、もっとたべたい。もっとちょうだい」
「腹が冷えてしまう。そろそろ温かいもの、欲しくなってこないか」
「だいじょーぶ!氷ちょうだい、ちょうだい」
「……メロン味も、あるぞ」
「メロンかき氷!たべる!!ちょうだい!!」
根負けしてしまった藤森、あんまり子狐の目が輝いて、あんまり子狐の尻尾がブンブンなので、
冷蔵庫の製氷室からメロンバーの素製の氷を取り出して、しゃりしゃり、しゃりしゃり。
黄緑色のかき氷を食いしん坊な子狐に、ひとつ、作ってやりました。
コンコン子狐は大喜び!これも今一番欲しいものだと、しゃくしゃく。顔からダイブして堪能します。
結果子狐、ぽんぽん冷やして痛くなってしまって、
数時間、藤森の居心地良いベッドでじっくり休憩してから、子狐のお家に帰りました。
その後数日、藤森は「うっかり」お弁当のお箸を忘れたり、「なぜか」麺つゆと冷やし中華の醤油ダレを間違えたりが「どうしてか」続きまして、
それから、その「うっかり」「なぜか」と同じくらい、ちょっと良いことが連続しましたとさ。
おしまい、おしまい。
愛が欲しい。
でも愛は欲するものではないと人に言われたことがある、
なぜだか僕は愛を求めようとする。
去年前の職場で恋愛をして相手を傷付けてしまったのに、
僕はもう人を好きになったり愛したい気持ちを遠ざけようとしたが、こんな気持ちが自分や相手を傷付けている。
好きな人の浴衣を見て一緒に花火を見に行ける権利かな
〜今一番欲しいもの〜
欲しいものは愛だった
そんな私は今愛を感じている
長い旅路の先にはとても優しい人が居た
笑っちゃうぐらい私が大好きで
たくさんの愛を伝えてくれる人だ
欲しいものは求め続ければいつか手に入る
だから諦めないことが大事なのだ
きっとその日を夢に見て
1日1日を生きてゆく
お題『今一番欲しいもの』
「今、一番欲しいものってある?」
と彼に聞かれて私はすこし考えた後、「ない」と答えた。それを聞いた彼は
「なんだかさみしいね」
と答えて、グラスに入ったウィスキーを飲んだ。彼は笑ってるけど本当の感情が見えない。それは明るい居酒屋にいようが、今みたいに薄暗いバーにいようが変わらない。
彼といると不安でたまらないのに、彼とどうしてもはなれたくなくて仕方ない。
もしさっきの質問に「貴方からの愛が欲しい」なんて答えたらどうだろう。
きっと笑いながら「えー、いつも俺は君のこと想ってるよ」とゆるく答えるか、めんどくさくなってしばらく連絡が来なくなるだろう。
彼は表に出してないつもりだけど、私の他にたくさん遊ぶ女性がいるようだし。
「この後、どっか行こうか」
そう言ってすべらすように彼が私の手首に触れる。私は彼の手首をとって、与えられる一時的な愛に今日もすがった。
今一番欲しいもの?
ごめんね。ないものねだりはしない性格なんだ。
こういったものは、結論ひと言で言い表せられるものなんてこの世には存在しないだろうなって思ったりする。
お金が欲しいと思っても、有効期限切れのお金は欲しくない。
お金が欲しい=偽札を製造したいわけでもない。
一番欲しいものは然るべき条件がある。
なぜお金が欲しいかといえば、それはお金から代替可能なものがいっぱいあって、という、要するに一番が決められない人が姑息な考えのもとに言っている。
とりあえず保留しながら選択肢を絞ってしまうようなもの。お金で買えないものは排除してしまって、最終的に後悔するのかも。
まあ、人間なんて、そんなもんだ。
欲しいものはいっぱいあるけど、その中の一番なんて、とてもじゃないが決められない。そんなの、欲しいものじゃない。
お金以外のものを欲しがったって、それは社会で生産された安全基準をクリアした製品みたいなものだ。
安全をすこぶる願ったものが来ても、それを疑う気持ちは消えない。
時と場合によって、一番欲しいものは変わる。
というのもありそう。
人間の脳は優柔不断で、常に揺れていて、それを楽しんでいるつもりでもある。
現実に取り組み、時には逃避して。
眠って、食べて起きて、眠って。
その時々で一番は違う。
もちろん欲しいものリストもたくさん持ってるだろうから、場面によって一番欲しいは違う。
ちょー眠いときは睡眠だし。
すごくお腹が空いたときは食べ物だし。
のどが渇いたときは水分だし。
いじめられて気持ちがしょぼんしているときは孤独だし。
洗われていないお皿を見たときは食洗機だし。
お金欲しいときは結局お金だけど、正直誰かの奢りの食事ほどうまいものはないし。
だから、このような問いの回答は永遠に保留して、少なくとも1000回くらいは問いかけてもらって、一番を考えながら無為に過ごせるという、一番欲しいものを何度も手に入れる遊びをしたい。
だからごめんね。ないものねだりはしない性格なんだ。
真冬の空気を真夏に
真夏の空気を真冬に
とっておけるものが
あればいいのに
#今一番欲しいもの
起きたことを変える力が欲しい。
後悔することが人生だって、言ってたけど
私はやっぱり、やりたいこと全部やり切る人生が好きだ。
たとえそれで何か間違ったとしても、それは後悔にはならないから。
とはいえ、
人は後悔しないことなんてできないのだろうと
最近は心の底から思う。
実際にはそんな力なんてない。分かってる。
だからこそ、私達は 物事の中心である金を望んだり、はたまた時間を望んでいるのだろう。
みんな変えたいことが本当に多かったのだろうか。
あほ石蛙
飛び込む勇気
無いけれど
居ても居られぬ
レッドオーシャン
夏は待ってくれない
夏に喰らいついていけ
今を生きろ
この一瞬を生きろ
今を楽しめ
今をやり尽くせ
今を楽しみ倒せ
今、この一瞬を…
「今」一番欲しいもの 完
先日博物館に行った帰り、館内のお土産売り場で『一生のお願い』を連呼している子どもがいた。
少しぽっちゃり型の小学生の女子である。
「一生のお願い!一生のお願い!一生のお願い!」
隣には細く長身な父親がいて、何度も連呼しながら背の高い父親を見上げている。
そんな女子の顔は…笑っていた。
父親は足元でせがむ我儘娘であっても、まだ可愛くて仕方がないのだろう。
鼻の下を伸ばしながら、内心(まいったなこりゃ)という満更でもない顔だった。
何に対して、一生のお願いを繰り返しているのかと見ていると、パンダの形を模った鉛筆削りだった。
わたしからしてみれば、(なんだこんなもの)という目で見てしまうのだが、あのパンダ大使でもある黒柳徹子だったら、この女子と同じ尊い目で見るのだろうか?
わたしの目には、女子の隣に「あらぁ、いいわねぇ」という黒柳徹子の幻影が見えはじめていた。
わたしから見る女子は、それなりにあざとかった。
だが我が子を愛おしく想う父親の目に映る娘の笑顔は違ったものに見えているのだろう。
我が子に対する声色も緩みきっていた。
しかしながら紛れなもなくとも、あざと女子の笑みは、わたしが知っているものだった。
…子ガキめ。
此奴、自分の立場というものを知っておるな…。
…そう、かくゆうわたしもこの手を何度、使ったことだろうか。
口は悪い事は確かだが、わたしが敢えて"子ガキ"と称したのは、其奴の顔が、思っているほどに困っていない顔をしていたからである。
実は、わたしは未だに『一生のお願い』を使ったことがない。
しかしわたしが未だに一生のお願いを未使用であっても、この光景は過去の記憶の中で幾度となく見てきたものであった。
…フッ、幼いガキよ。
この歳にして、味を占めた顔を親に仕向けているが、まだまだそんなことではこれから先上手く事が進むようには思えないな。
例え一生のお願いを使わなくとも、
父親という者は娘に弱いのだという事を、早く違う道で知るが良い。
『一生のお願い』という言葉は所詮まやかしであり、幻想に過ぎないのだ。連呼して叶うのは、ほんの一途期だけだ。
これは戯言か?いいや、哲学である。
言葉の真理と心理の化学反応だ。
そういう運を持っているか拾うかは、全て貴様の選択次第なのだからな。フハハハハハ
…と、かのパツキン愉悦王ギルガメッ…なんとか関智一みたいに成り切った様子で見ていると、
父親は、娘の頭を撫でながら宥め、顔が緩んで往くのを見た。
((あ…この顔は))
この瞬間、愉悦王なわたしが悟ったと同時に、子ガキも咄嗟に悟ったに違いない。
わたしがすかさず子ガキの顔を確認すると、既に勝利の笑みを浮かべていた。
そう、まるで過去の幼いわたしのような勝ち誇った、勝利の笑みを。
子ガキは、はしゃぎながら父親の背を追ってレジに向かっていく。
親バカ子ガキの2人を見送った後、わたしは思っていた。
…子ガキよ。お主もいつか気づくときがあるだろう。いつか大人になり自ら働いて生きていくのは、それなりにお金がかかるものなのだということを。
敢えて言おう!自分が何事もなく育っていたのは親の懐の深さがあったからだと!
あー…、お金欲しい。
お題: 今一番欲しいもの
『今一番欲しいもの』 (アンパンマン)
顔が濡れて力が出ない。
いつもみんなを困らせて悪さをする彼にいつもぼくは注意をしている。言ってもわからない場合はちょっと懲らしめることもしばしば。そのために彼からは目の敵にされてしまっている。
力が出ないぼくの体を彼は日頃の憂さ晴らしも込めて痛めつけることに躍起になっていた。彼と仲良くしようと思っているけれど、みんなを困らせる彼と仲良くなるにはどうすればよいのだろう。彼が痛めつけることに飽きたとき、仲良くしようだなんて思ってくれるだろうか。
遠くから唸りを上げて走る車のエンジン音が思考に沈んでいたぼくの耳に入ってきた。戦車のようにも見える車のハッチが開くと、見知った彼女が叫んで今一番欲しかったあれを投げつけてくれる。あれはぼくの力の源。あれはぼくの新しい思考。
気がつけば彼は空の彼方に飛ばされており、ぼくはそれまでの沈んだ思考を思い出せなくなっていた。彼に困らされていたみんながよかったよかったと安心しているのを後ろから眺めていたぼくは、ほんの少しだけ立ち止まって後ろを振り返っていた。
「私、今とっても欲しいものがあるの」
「へぇ、俺で用意できそうか?」
「うん」
「よし、言ってみろよ。金でも飯でもアクセサリーでも、なんでも用意してやる」
「あのビルが欲しいわ」
「俺のどこを見てビルが用意できると思ったんだ?」
後でちゃんと買いました。
今は4人で暮らしているそうです。
今いちばん欲しいもの
自分の時間。
今こうして書いてる時間がとても貴重。
もう少し、あと少し
エンデの話にあった時間泥棒の話を
思い出す
一般的な回答としては
休み
趣味的な回答としては
ゲームのガチャのとかランダム商品で
欲しいものを当てる運
創作者の端くれとしては
創作意欲
誰に伝えるかによって
変化する答えだが
結局
時間が一番なのかもしれない
【今一番欲しいもの】
今一番欲しいモノ
それはお金では買えない大切なモノ
私の悩みを晴らしてくれるモノ
それはキミの愛の証のモノ
余裕がほしい
日々を必死に生きるためだけに
時間を使うなんて疲れたよ
毎日、何かに心配をする
お金の心配
仕事の心配
病気の心配
人間関係の心配
将来の心配
そういうのをさ
気にしないくらいの
楽しむくらいの
余裕がほしい
「えっ!嘘だろう⋯マジかぁ⋯」
会社からの連絡メールを確認中に、スマホの画面が突然真っ暗になった。
電源ボタンを押しても、うんともすんとも言わず、再起動してみてもしばらく振動した後、ピクリとも動かない。
慌ててモバイルバッテリーを挿してみるが、効果は薄そうだ。
何せ、つい一時間前まではフル充電だったのだから。
見上げれば夏空。
濃い青色の空に、白い厚みのある雲が浮いている。
辺り1面の水の貼った田んぼには青々とした水稲が生え、時折吹く風にさわさわと音を鳴らして遊ばれている。
こめかみを伝って落ちてくる汗を手の甲で拭う。
まだ九時前だと言うのに、気温はぐんぐん上昇し陽射しは肌を刺すほどに強い。
おかしいな、ここは日本でも北の方、冬になれば雪が多く降り積る地域だ。
夏は、東京に比べれば涼しいはずではないのだろうか?
それにしても⋯⋯。
「はぁぁ、どうしよう」
見渡す限りの田んぼ。
所々に家もあるし、道路も通ってる。
事実バスを降りてから15分ほど、その道路を歩いて来たのだ。
問題なのはその間、たった一人の人間ともすれ違っていないということ。
まぁ、車とはすれ違ったが。
取り敢えず、約束の時間まで残り25分。
記憶にある地図を頼りに歩くしかない。
それにしても、色々と話には聞いていたけれど、田舎は本当に車がないと不便なんだと実感する。
本来であればタクシーを使う予定だったのだが、駅前にタクシーがおらず、駅員に確認したところ昨今の人手不足もあり、今タクシーは1台しか運行されておらず、ほぼ予約で埋まっているため対応は無理だろうとの事。
それでバスに乗ったのだが、そのバスも目的地までのルートはなく一番近いバス停で降りて、そこから徒歩30分ほど掛かるという不便さ。
これなら、年をとって反射神経が鈍って運転が危なくなっても免許返納に二の足を踏むその気持ちが痛いほどわかる。
「えーと、多分この辺り⋯⋯、あ、あった」
今まで歩いてきた道路から横に逸れるように接続している、車がすれ違うのがやっとと言うほどの幅の道。
その角の所に『鏡池神社』と書かれた石柱が建っていた。
石柱のところで立ち止まり写真を⋯と思いスマホを取り出しはたと気付く。
「あー、⋯そうだ、確かデジカメ持ってきたはず⋯」
背中に背負ったリュックから、だいぶ前に購入した私物のカメラを探す。
ついでにタオルと飲み物も引っ張り出す。
恐る恐るカメラの電源を入れると、待ってましたとばかりに、元気に起動した。
最近はスマホのカメラ性能が劇的に向上し、このカメラの出番もめっきりと無くなった。
入社して初めて貰ったボーナスでちょっとばかり奮発して購入した、コンパクトカメラ。
本当は一眼レフが欲しかったのだが、手が出せなかった。
それでも当時、吟味に吟味を重ねて買った大切なカメラだ。
個人旅行の時や、今回みたいな地方への出張などには大抵一緒に連れていく。
石柱のアップと引いて石柱を入れた構図で何枚か撮り、カメラを肩掛けのバックに入れる。
水分補給をして、タオルを首にかけリュックを背負い目的地に向かって歩き出す。
一歩一歩と進んでいくと、涼やかな風を感じるようになった。
道は一面田んぼだった世界から、集落を囲む山の一つへと続いている。
山に近づくにつれ気温が少しずつ下がり、山の麓に着く頃には吹く風がだいぶ涼しく感じられた。
「ははは⋯」
道は山の突き当りで、左に大きく曲がっている。
正面には石で作られた鳥居が間隔を置いて二つ設置されている。
一つは道が曲がる所に、もうひとつは山を少し入った所にありその間には砂利が敷き詰められている。
木々により日が遮られた薄暗い2つ目の鳥居の先、そこに長く続く階段を見つけ笑いが込み上げた。
神様はとことん、俺に試練を与えたいらしい。
お辞儀をして鳥居を潜り、一つ息を吐き出す。
気合を入れて顔を上げ、1段目の階段を上り始めた。
「ご連絡をいただければ、お迎えに参りましたのに」
「い、いえ。お手を煩わせるわけには⋯」
「てっきりお車で来られるのかと思っておりました。驚きましたでしょう?こんな辺鄙な所で」
「あ、いや、まぁ」
息を切らし、階段を上りきった俺を待っていたのは一人の女性だった。
ここの神社の神主さん奥様だというが、随分と若い気がする。
神主さんは60手前だと聞いていたのだけれど、どう見ても20代に見える。
下手をすれば10代でもいけるかもしれない。
いただいた冷たい麦茶を飲んで、俺は息を整える。
ここは山の中腹より少し下にある社殿。
隣には白壁に囲まれた純和風の屋敷が建っていて、お二人はそちらに暮らしているという。
神主さんは今急用で、街まで出ており俺は神主さんの戻り待ちだ。
「鏡池の事をお調べになられていると聞きましたが」
「あ、はい。今度神秘的な池の特集を組もうと思っていまして、その下調べになるのですが」
「左様でしたか。もうすぐ戻って来ると思いますが、そうですね。資料などお持ちしますので、少々お待ちください」
そう言うと奥さんは部屋の奥へと入っていった。
残された俺はと言うと、窓から見える景色に目を奪われていた。
田舎と言えど、駅がある付近はそこそこ栄えており、昨夜泊まったホテルもWiFi完備の近代的な造りだった。
客室数は少なく、宿泊者も多くはなかったようだが設備としては申し分なく、すぐ隣にはコンビニもあり、駅から徒歩1分で一泊素泊まり五千円を切るのだからリーズナブルだ。
また周辺に商店街やスーパー、それにオフィスビルっぽいものも見かけた。
ただ今いるこの辺りはその駅のある、いわゆる市街地から離れ山一つ隔てた場所にある。
故にこの場所から見える景色は、時代を一つ二つ戻ったようなそんな気にさせる。
近代的な建物は何一つなく、青々とした田んぼが広がり、所々に昔ながらの瓦屋根の家が建っている。
都会育ちで田舎とは無縁の人間なのに、郷愁の思いに浸っていると車のエンジン音が聞こえてきた。
隣の屋敷に止まったらしく、エンジン音が止まると共にドアの閉まる音がし、パタパタとこちらへ走ってくる音がした。
「あ、すみません。お待たせしてしまって」
勢いよく部屋に入ってきたのは、自分と同じ年頃の男性だった。
服装もハーフパンツにTシャツと、街中にいる若者と変わらない。
「えっと、あの」
「あ、ここの神主をしています、加賀美と申します。東京から来た冨野さんですよね?」
「あ、はい。そうです」
あれ?60歳くらいの方だって聞いてたんだが?
「いやぁ、鈴置の婆ちゃんにエアコンが動かないって呼ばれてしまって」
「エアコン、ですか?」
「この人もともと電気屋で働いていたので、ご近所さんからよく連絡が来るんです」
数冊の本を手に戻ってきた奥さんが、テーブルの上に本を広げながら言う。
「簡単な故障なら直せるし、そうじゃなければ古巣に連絡すればいいんで。今回は後者でしたが」
「そうなんですね。あの⋯」
「はい?」
「失礼ですが、こちらの神主さんは60歳くらいの方だと聞いてきたのですが、その⋯」
「あぁ、多分それ親父のことですね。去年俺が引継いだんです」
聞けば、昨年の今頃に倒れ半身が不自由になってしまったのだと言う。
それを機に息子である加賀美さんにここの神主を引継いだとか。
「それで、鏡池の事を知りたいんでしたね」
「はい」
「じゃぁ、簡単に説明をしてから、実際に見た方がいいかな」
「えぇ、その方がよろしいかと」
「ではまずこれから説明しますか」
そう言って、加賀美さんは奥さんが持ってきた本の中から絵本を取りだした。
「これが鏡池⋯⋯」
目の前にあるのは池と呼ぶには大きく透き通った水を湛えた場所だった。
「正確には池ではなく湖に分類されるらしいです。水深は15mくらいじゃないかって言う話ですが、正確なところは不明ですね」
「それはこの下が洞窟だから、ですか?」
「はい。前に一度調査に入ったらしいんですが、あまりにも複雑で危険を伴うので中止になりました。それ以降は調べていませんね」
「ここは普段立ち入り禁止、なんですか?」
「えぇ、禁足地にしています。先ほど説明しましたが、過去に何人かここで行方不明になっているので。子供が落ちたりすると大変ですしね」
「そうですか⋯⋯」
これだけ綺麗であれば、良い観光地になるのにと思ってしまう。
そして禁足地であれば、特集記事にするのは厳しいだろう。
「わざわざ来ていただいたのに、申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそお忙しい中ありがとうございました」
「あぁ、そうだ。折角だから、ちょっとこちらへ」
そう言って案内されたのは、今までいた場所の反対側。
大小様々な岩が円を描くように配置されている。
不思議なことにこの場所だけ底が浅いようで、白い砂が敷き詰まって中央からこぽこぽと水と空気が湧き出ていた。
「ここは?」
「手鏡池、と呼んでますね。ここで神に願うと一度だけその人の人生に必要なものを映し出してくれるそうです」
「え?」
「私の場合は妻が映りました。どうです、やってみますか?」
「⋯⋯なんだかちょっと怖いですね」
「そうですか?因みに親父は車が映ったそうです」
「車?」
「はい。その時一番欲しいものだったらしいんですが、買うのに躊躇していたそうで」
「で、買われたんですか?」
「えぇ、買って母をナンパして捕まえたと言っていました」
今一番欲しいものは⋯スマホだけど、それが映し出されたら嫌だな、とか考えていると加賀美さんが手鏡池に手をさし入れた。
「必ずしも映し出されるわけではないんです。私も子供の頃からやっていましたが、映ったのは3年前ですから」
「なるほど」
「今回映らなくても、また来た時に試してみればいいんです。いつでも来てください。お待ちしてますから」
「はい」
俺は加賀美さんに言われるままに、手鏡池の縁に立ち目を閉じた。
三度自分の名前を唱え、同じく三度、深くお辞儀をする。
そして、柏手を三度打って、静かに目を開き手鏡池を覗き込んだ。
「それでは、また。来られる際にはご連絡ください。駅まで迎えに参りますので」
「ありがとうございました。お伺いする時には、ご連絡差し上げます」
駅のロータリーから去っていく白色の車を見送って、俺は踵を返す。
先ずは公衆電話を探して会社に連絡を入れなければ。
それから次の目的地に行く前に携帯ショップに寄って、スマホの状態を確認してもらって。
頭の中で今後のスケジュールを組み立てる。
次の取材先はここから西に向かって二時間の電車の旅だが、スマホが無いことには色々と不便すぎる。
ほんの少し前はスマホなんかなくて地図を片手に歩いたものだ、と編集長がボヤいていたのを思い出す。
一度便利を手にしてしまうと、その有難味を忘れがちになる。
スマホも然り、車も然り、家電も然り、コンビニも然り。
「あ、あった!」
駅構内を歩き回ること10分、やっとの思いで公衆電話を見つけた。
携帯電話が流通し、ほぼ1人1台持つようになったためか、公衆電話の数は激減している。
「えーと、会社の番号は⋯⋯、あぁぁ、覚えてない、そうだ、名刺、名刺」
やっとの事で会社に連絡を入れ、次の目的地までの電車の時間を確認する。
出発まで37分、携帯ショップは、近くに⋯⋯あるのか?
駅員に聞いてみると携帯ショップは駅から徒歩20分、バスでも10分かかるらしい。
つまり、携帯ショップも車で来店することを前提とした場所に建てられているとのこと。
なので駅員のオススメは、ここから6駅先の大きな駅の駅ビルの中にあるショップ。
途中下車にはなるが、背に腹はかえられない。
俺は駅員に礼を言って改札を通り、ホームのベンチに腰を下ろした。
「はぁぁ、疲れた」
結局、手鏡池には何も映らなかった。
怖いとか言っていた自分が情けなくも感じるが、これでよかったのかも知れない。
また、ここに来る口実ができたから。
今度は、スマホは2台用意しよう。そうすれば1台が故障しても大丈夫だ。
そして今一番欲しいのは、一眼レフのカメラ。
あの綺麗な鏡池、そしてそこからの景色を撮りたい。
スマホのカメラでもなく、長年の相棒のコンパクトカメラでもなく、昔からのあこがれの一眼レフカメラで。
技術とかそういうのはまだ無いけれど、気持ちだけは十分に詰まったいい写真が撮れると思うから。
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(´-ι_-`) 長くてごめんなさい。