かたいなか

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「私が、今一番欲しい者は、あなたです。
あなたが、今一番欲しい物は、それです。
あなたではなく私が、誰よりコレを、今一番欲しいんだもの。 ……あとは何だろな」
物、者、藻の、Mono。今一番欲しいものって言われてもな。某所在住物書きは「もの」の予測変換を辿りながら、ぽつり呟いた。

ところでこのアプリに関してでも良いなら、有料で良いから広告削除プランか、もしくは文章に過去投稿分へのリンク埋め込む方法も欲しい。
1年以上前から、なんちゃっての続き物で書いてきてるため、伏線回収が面倒なのだ。過去作リンクができれば、もっと色々ギミックを仕込めるのだが。
「……無理かなぁ」
ぽつり、ぽつり。物書きはなおも呟く。
広告強制終了の方法を習得できたの「だけ」は、このアプリに感謝しても良いと思った。

――――――

今日も今日とて、手強いやら難しいやらなお題ですね。こんなおはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某アパートの一室に、雪国出身で藤森というのが住んでおり、
藤森の部屋には週1〜2回、不思議な子狐が不思議なお餅を売りに来るのでした。
現実感ガン無視とか、細かいことは気にしません。
大抵童話で狐は喋るし、なんなら「ごんぎつね」や「手袋を買いに」なんて前例もあるのです。
気にしない、気にしない。「そういうおはなし」だと諦めましょう。――さて。

「これが、狐の執着か……」
今日の藤森の部屋は、たいそう賑やかでした。
藤森は、ため息ついて突っ立って、首筋をカリリ。
視線の先では例の子狐が、狐の本能と食欲に従い、赤いかき氷をしゃくしゃく、もしゃもしゃ。
それはスイカアイスの素で作った氷を、しゃりしゃり、かき氷メーカーで削ったプチ贅沢。
先日、具体的には過去作7月18日投稿分あたりに、藤森が購入してきたプチプラでした。

その日もいつも通り氷を削って、ぼっちでしゃくしゃく、プチ贅沢を堪能しておった藤森。
『いいにおい、いいにおい!』
子狐コンコン、部屋に入るや否や、かき氷の香りを感知。発生源を正確に、瞬時に特定して、猛烈ダッシュからのかき氷をパクリ!
味を覚えた子狐は、これぞ自分が今一番欲しいものとばかりに、藤森の持つかき氷の器に顔からダイブ!
そのまましゃくしゃく、食べ始めてしまいました。

「おいしい。おいしい」
「子狐、あの、そのへんにしておけ」
「やだ。おいしい」
「そんなにがっつくと、頭が痛くなるぞ」
「だいじょーぶ!おいしい」

「ほら返しなさい。かわりに油揚げと稲荷寿司、」
「ダメ!さわらないで!ダメッ!」

ギャン!ギャン!
捻くれ者が近づくと、コンコン子狐、食べ物を取られまいと大声で威嚇して、噛みつこうとしてきます。
その全力の声量の、大きいこと、大きいこと。
防音の部屋で良かった。藤森は思いました。
かき氷の器を優しく取り上げようとすると子狐ギャンギャン、いっちょまえに吠え立てて、
かき氷の器から手を遠ざけると子狐しゃくしゃく、尻尾ぶんぶん。幸福そうに氷を食べます。
しまいにはペロペロ、溶けたスイカ氷のジュースも飲み干して、コンコン、こやこや。
おかわりが欲しくて、尻尾をバチクソ振り回し、おめめをキラキラ輝かせるのでした。

「子狐。おまえの今一番欲しいもの、本当にスイカのかき氷か。十分な量はもう食ったんじゃないか」
「キツネ、もっとたべたい。もっとちょうだい」
「腹が冷えてしまう。そろそろ温かいもの、欲しくなってこないか」
「だいじょーぶ!氷ちょうだい、ちょうだい」

「……メロン味も、あるぞ」
「メロンかき氷!たべる!!ちょうだい!!」

根負けしてしまった藤森、あんまり子狐の目が輝いて、あんまり子狐の尻尾がブンブンなので、
冷蔵庫の製氷室からメロンバーの素製の氷を取り出して、しゃりしゃり、しゃりしゃり。
黄緑色のかき氷を食いしん坊な子狐に、ひとつ、作ってやりました。

コンコン子狐は大喜び!これも今一番欲しいものだと、しゃくしゃく。顔からダイブして堪能します。
結果子狐、ぽんぽん冷やして痛くなってしまって、
数時間、藤森の居心地良いベッドでじっくり休憩してから、子狐のお家に帰りました。
その後数日、藤森は「うっかり」お弁当のお箸を忘れたり、「なぜか」麺つゆと冷やし中華の醤油ダレを間違えたりが「どうしてか」続きまして、
それから、その「うっかり」「なぜか」と同じくらい、ちょっと良いことが連続しましたとさ。
おしまい、おしまい。

7/22/2024, 4:45:27 AM