『ベルの音』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『ベルの音』
ベルの音がきこえたような気がする。
私は、いい子だったからプレゼントもらえるよね!
もしもらえるなら、お人形さんがいいな!
おてがみもかいたし、サンタさん、早く来ないかな〜?
今日は彼女が仕事が遅くなっていて孤独の時間を過ごすことになった。
彼女が恋しくて、胸を締め付けられる。心の空洞の寒さに耐えられず、ソファの上だと言うのに膝を抱えて小さくなっていた。普段あった視界の色が褪せて灰色に見えていく。
普段、彼女がこういう時間を過ごしているんだなと改めて痛感する。
元々寂しさには弱い方だけれど、彼女を好きになって、一緒に暮らすようになってからはずっとそばに居てくれた。ずっと笑顔や彼女の温もりが近くにあった。
だからこそ、寂しさが心へのダメージを受ける。
ああ、彼女が本当に大好きなんだ……。
ピンポーン。
「へ?」
今は夜で、こんな時間に配達なんて来るわけがない。
俺の心になにか予感を覚えて立ち上がって玄関に向かい走り出した。
迷いもなく玄関の鍵を開けて扉を開く。
「わっ!!!?」
両手に荷物を抱えた彼女が、目を丸くしていた。
その瞬間、心が暖かくなって、無くなっていた色が華やかに色付いていく。
「どうしましたか?」
俺の表情を見て、様子がおかしいと察した彼女が不安の顔を向けてくる。俺は両手に抱える荷物を取ってサッと廊下に入れて置く。そして彼女を玄関の中に引き入れて、バタンと言う音が聞こえる時には彼女を抱き締めていた。
「おかえり」
心の底から安堵の声がこぼれ落ちる。
「……ただいまです。遅くなりました」
「うん、寂しかった」
俺は抱きしめる力を強くする。彼女の温もりが腕から、身体から広がっていった。
「普段は私がそんな寂しい思いしているんですよ?」
「うん、この時間つらいね」
ほんの少し力を抜いて彼女の顔を見つめて、苦笑いしてしまう。
彼女は思い知ったかと言わんばかりの、悪い笑みを俺に向けてくれる。
「耐えられるようになっちゃダメですよ」
「え!?」
「ずっと私に夢中でいてくださいね」
その言葉に力が抜けるけれど、心の底から笑いが込み上げて口元が緩んだ。
「安心していいよ。ずっと夢中だから」
そう笑顔で返して、彼女にキスをした。
おわり
二一八、ベルの音
“ベルの音”
チャイムの音、ものすごく怖くて嫌い。
何か具体的なきっかけがあるわけではなく、他人が私の家に訪問してくるという感覚が恐ろしく、憤ろしい。
今日は数回目の私の誕生日だった。
1 すごく好きな財布を手に入れた。
2 好きになりたての彼に祝ってもらえた
3 これみよがしに大好きな国語教諭にかっこいいと言えた
4 大好きな君に誕生日プレゼントをもらえた
5 あの女の子からおそろいのネックレスを貰った
6 母、兄が体調不良であった
来年はどう過ごしているのだろうか。真実は来年の私にしか分からないけれど、来年の私は、昨年の私の語彙力の低さに失望していることだろう。
4 ベルの音
――リン……チリリン――……。
あー。ご飯の時間だ。
――リリン…チリンチリン――……。
あー……。お風呂の時間だ。
――リンリンリンリンリン……。
ああー……。子作りの時間だ……。
いつからだろうか。
ヒトが中心だった世界は滅び、それに、成り代わったのが大猩々(ゴリラ)たちだ。
謎の病原菌によって、感染した大猩々は、肉体と知識をヒト以上に進化させた。
筋肉隆々であった大猩々たちは、病原菌により、さらに、逞しい巨躯へと変貌をとげたのだ。
知性を手に入れた大猩々たちは、進化した最強の遺伝子を持った大猩々と、ヒトが交尾すれば子がなすのではないか、と考えていた。
人類と大猩々は近縁な類人猿……。
これは、実験的であり。そして、彼らの性欲を満たすはけ口としても使われた。
今、ヒトは、ベルの音一つで、規律を守って生活をしている。
……慣れれば快適、と言い聞かせて。
【ベルの音】
隔てられた壁越しに触れ合う手と手
同じ髪型に同じ顔
だけど性別と服装、
合わせた手の位置が少しだけ違っていた
片方が笑えばもう片方も笑って
もう片方が首を傾げれば片方も反対側へ首を傾げた
辺りは暗く何があるかわからない空間だったけど
お互いに触れ合っていればその暖かさを感じるとともに
少しだけ周りが明るくなった気がした
片方がもう片方の場所に行きたいと
直接触れ合いたいと思うようになった
こんな暗闇の中
心細い時にいつもそばに居てくれる
もう片方の場所へ行って寂しさを埋め合いたかった
お互い言葉がなくても胸の内の本音が
痛いほど伝わっていた
お互いを隔てる壁を何度殴っても向こう側へ届かない
拳も胸も痛くて泣き出してしまった時
初めて反対の表情を見せたもう片方が歌を歌う
その声はとても上手とは言えないほど
滑舌が悪くて笑ってしまう片方
その歌声で何故だか心から安心できる気がした
泣き止むとその歌を教えてくれるもう片方
言葉は無くともお互いの心境は
手に取るようにわかったから
片方も歌い出す
2人の歌は暗い空間の外側へ漏れ出して
誰かのそばを通り抜けた
2024-12-20
ベルの音
「○ねよ!」
そう言われて打たれ、地面に這いつくばう。相手は空手家の先輩だ。私のひょろひょろの体で到底太刀打ちできるわけがない。毎日のように打たれて蹴られて踏みにじられて、私の心身は痣と傷だらけ。きっと私はきらきらな人生の線路から脱線して、もう救いようのない状態なんだろう。
親からの虐待にクラスメイトや先輩からのいじめ。先生やカウンセリングの人に話しても大袈裟だと言われる。私はこのとてつもなく広い世界で1人ぼっちなのだ。こんな人生楽しいどころか死にたいほど苦しい。…あぁ、○ねばいいのか。今まで何百回と言われてきただろう。今さら気づくなんて、やっぱり馬鹿だなぁ、笑
「4番ホームに電車が参ります。危ないですので、黄色い線の内側までお下がりください。」
放送と同時に耳をつんざくような音量でベルがなる。こんなにうるさかったっけ、。普段はあまり気になるような音じゃなかったのに。…あ、こんなこと考えてる場合じゃない。4歩くらい歩いて、線路に飛び込む。私の線路も、こんなふうにまっすぐだったらよかったのになぁ、。そんな思いと同時に後ろから大量の目線を感じる。最後まで最悪だn ドンッ──
最終列車のベルの音。
今年ももうすぐ終わる。
この列車に乗り遅れてしまったら、年を越えて新しい一年に出会うことが出来ない。
ベンチに一人座る男。
最終が行ってしまいますよ、と声をかけるが、その場を動かない。
うつむいて、何かを口ずさんでいるようだ。
そっと男の顔を覗き込むと、穏やかな笑顔で、クリスマスソングを歌っていた。
「年を越えることは、難しいのですね」
彼は歌いながら、コクリと頷いた。
列車のドアが閉まり、ゆっくりと動き出した。
男は顔を上げ、列車の窓を凝視する。
いつしか歌うことをやめ、その目には涙を浮かべていた。
そして、窓の向こうに妻と娘の姿を認め、彼は泣き笑いの表情で、二人に手を振った。
「クリスマスは、楽しかったですか」
答える代わりに、男はまたクリスマスソングを口ずさむ。
「それなら、素敵な人生だったじゃないですか」
彼は頷き、私に右手を差し出した。
私はその手を取り、彼をゆっくりと立ち上がらせた。
そのまま、改札へと向かう。
駅構内のスピーカーから、ベートーヴェンの「交響曲第9番ニ短調作品125」が流れてくる。
「第九」、駅長の趣味だったな。
昭和の名残りは、この駅にも根強く残っている。
私達が変えていくか、これからも守り続けるか。
振り返ると、男が目を細め、曲に聴き入っているのを見て、まあしばらくこれでいいか、と心に思った。
改札の向こうで、二人の老夫婦が待っている。
男の両親だろうか。
彼は二人の姿を認めると、一瞬目を丸くして、その後すぐに満面の笑顔となった。
この瞬間が、この仕事の醍醐味だ。
男は老夫婦と再会を喜び合い、私に礼を言うと、三人肩を並べて駅を離れてゆく。
その背中に、「第九」のメロディは妙にマッチしていた。
駅長の趣味も、なかなか悪くない。
ホームに戻ると、すでに最終列車は走り去っていた。
次の停車駅は「令和7年」駅。
今私がいるこの駅は消え去り、人々は新しい駅で降りて、新しい一年を始める。
来年も、イイ年でありますように。
『ベルの音』
ベルの音が聞こえる。非常ベルの音。
ここはマンション、近くの部屋で火事が起きたらしい。
はやく逃げなければ。
だが火の手はすぐそこまで迫っており、煙も充満していて視界も悪い。息も苦しい。
だんだん視界がぼやけてきた。やばい、体に力が入らない。
あぁ、明日は彼女の誕生日なのに。
プロポーズしようと思って、指輪も買ってたのになぁ。
悔しいが、もう俺はダメらしい。
意識が遠のいていく。
未だに甲高く鳴り続ける非常ベルの音だけが、廊下に虚しく響いていた。
【ベルの音】
Ring Ring Ring!Ring Ring Ring!
「さぁ、今夜も年に一度の大イベントだよ!」
「さぁ、仕事だ!仕事だ!」
年に一度。
僕達はあちこちの国から集まり、あちこちの国へと散っていく。
そう、僕達はサンタ。
今夜も夜が明け子供達が起きるまで急いでプレゼントを運び配らなければならない。
それはもう一分一秒も無駄には出来ない。
こっちからしたら地獄のような所業だ。
ただし、煙突や窓がなければ僕達は家には入れない。こんな世の中だ、窓の鍵なんてよっぽどでなければ空いてなんていないだろう。
それに僕達の姿は純粋にサンタを信じてくれなければ見えない。
だってそうだろう。自分の寝てるとこに大の男が現れたら…即通報されて牢獄行きだ。
さて、話が脱線しちゃったけど。
僕達は、朝目が覚めて。
枕元にあるプレゼントを見つけた時のあの喜びと驚きが入り交じった子供達の笑顔が大好きなんだ。
…本当だよ?
だから、今年も楽しみに待っててね!
ベルの音
ベルの音って、何か自然と気分が高揚する。何かとんでもないことがおころうとしてるんじゃないかというワクワク感みたいな
こんな温かみがありポジティブシンキングにさせてくれる音がこの世の中に、身近に存在してくれることに感謝
凶や厄、病気、怪我のようなあらゆる負の要素を持ってる人もこの音が鳴ってる時だけは、福神が憑依してるだろう
【ベルの音】*193*
スマホの通知音…
それぞれ音変えたりはしてないんだけど
微妙に違いがあって
自分だけわかる『あっ!』がね、何気に上がる♪
それにしても柳楽くんかっこいいなぁ
いつからだろう
ファミレスのボタン、バスの停車ボタン、会計で店員を呼ぶチーンと言うベル、神社の鈴、ベルやベルににた音のするものなどを押すことに興味がなくなったのは、、
大人になっていくんだろうな。
嬉しいような、寂しいような…
1週間ほど前、旅行に行ってきた。住んでいる地元よりもはるかに都会。大きな駅に電車がひっきりなしに出入りしている。発車ベルをずっと聞いていたので帰ってからも幻聴に近いほど聞こえていた。
つくづく都会の人はあの忙しなさに慣れていてすごいなと思う。私は1日居ただけでベルの音に翻弄されたというのに。駅によってメロディも違った気がする。また行きたいな。
店員として呼び出されるなら電子音よりも金属音の方が良い。キンとしているのに長閑な音はどうしてか人を焦らせない。「はーい」という間延びした声が後に続きそうなレトロ調を求めて、コーヒー好きでもないのについ高価な喫茶店に入ってしまう日もある。毎日毎時、時には毎分聴き続ける警告音じみたブザーから、一時でも目を背けたいのだ。
お題「ベルの音」
《ベルの音》
けたたましい 耳をつんざくような 突如鳴る リピートに次ぐリピート 目覚し時計 置き電 火災報知器 リンリン ガランガラン ゴーンゴーン ヂリリリリリリリリ シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン トナカイのそりから響く
『ベルの音』(創作:ポエム)
あの丘のベルを鳴らすと恋が実る
どこかで聞いた
そんなジンクスを胸に抱きながら
ひとり静かにベルの音を立てる
わたしの恋する かの人へ
遠く遥かな かの人へ
風がベルの音を運んでくれたなら
かの人の頬を優しくなでることだろう
わたしの恋は実らない
雲の上の かの人へ
それでも今も
ベルの音を送り続ける
想いを風に乗せて
ベルの音
うちは小さな古道具屋なので店の中はさまざまな古い物で溢れている。
例えば、ネジを回しても3回に1回は止まってしまう懐中時計。針山が硬くて針のさしにくい裁縫箱などだ。みんな使い古されて捨てられたものばかりなので、店で綺麗になって次に使ってくれる人を待つている。時には、自分で歩いて出て行ってしまう物もいる。この前はハンドベルが付喪神になって大きな音を鳴らしながら店から出ていった。あまりに大きな音で店中の付喪神から苦情が出たほどだった。
「なんだいあれは」
「あーうるさい。うるさい。」
「ゆっくり休めないだろ。」
チリン、チリンと本当に大きな音だ。あんなに大きな音では人に嫌われて、どこにも行くところはないのではと心配をしていた。そんな時、いつも買い付けに行ってくれる妖怪の三つ目小僧が慌てた様子でやって来た。
「あんたの所にいたベルの付喪神を駅で見たよ。機関車の運転台にいてさぁ、機関車の発車を知らせてたよ。」
「あらいいじゃないですか。発車を知らせるベルなんて天性の仕事ですよ。」
「いや、そうでもないみたいで、発車の時だけでなく自分勝手にベルの音を鳴らすらしいよ。運転士が困っていたよ。」
「確かにそれでは機関車の発車の合図の意味がないわね。」
「あのままだと捨てられちまうな。何度も捨てられてたら付喪神も不満が溜まって妖怪になちまうぞ。」
「まあ、引き取りに行きますけど素直にここにいてくれるか。それにあんなに大きな音を出されると他の物の迷惑になりますし。困りましたね。」
カラン。カラン。
店の扉が開いて常連のお客さんが入ってきた。彼は冬になるといつも仕事の途中で寄ってくれるのだ。
「今の話しだけれど、そのベルを僕が引き取ってもいいかな。冬の夜空は暗くて音もしない世界だ。でも、ベルの音があれば賑やかになる。トナカイたちも喜ぶよ。それに僕が来たことが遠くからでもわかる。みんなが僕を待っているからね。早く知らせることができるのはいいことだ。」
赤い帽子に赤い服。白いひげを蓄えたぽっちゃりとしたおじいさんがにっこりと笑っていた。
「本当に!ありがとう。サンタクロースさん。夜空ならいくら大きな音を立てても平気よね。ベルを迎えに行ってくるわ。」
付喪神となったハンドベルは、サンタクロースと一緒に世界中の夜空を飛んでいる。
特に12月24日は忙しくあちこち回っているらしい。
彼は、ベルの音を響かせ子供たちにサンタクロースの到着を知らせている。
メリークリスマス
ベルの音
私がまだ幼い頃、4歳か5歳ごろ
私の家は二世帯住宅の2階建ての家で1階には母方の祖父母が住んでいました。
クリスマスの日の夜、母さんと父さん、兄、姉とケーキやチキン、他にもクリスマスっぽい食べ物が並べられたテーブルをみんなで囲んで楽しく話しながらご飯を食べていました。
昔の実家は少し古い建物で今のようなインターホンなどはなく、扉につけられたベルを鳴らしてもらうような玄関だったのですが、2階でご飯を食べているとその玄関のベルが鳴ったのです。
冬の夜に誰かが来たのを知らせてくれました。
私や兄、姉は『誰だろう??』なんてことを言いながらキョトンとして、互いの顔を見合わせました。
勘の悪い私たちに痺れを切らした母は、父の背中を小突いていました。
父は厳しい人ではなかったのですが、普段あまり冗談を言ったり、笑ったりする様な人ではなく、とても真面目な人でしたが、そんな父が下手くそな作り笑いをしながら、
『サンタさんが来たんじゃないか? みんな玄関に行って見 ておいで』と言いました。
私はそんな父の顔を見て、幼いながらに、なんとなく感じ始めていた"サンタさんはいない説"が確信に変わってしまいました。
ただ、父の普段見たことのない笑顔を見てサンタはいないなんて事は言えずに素直に玄関に行き、置かれていたオモチャを手に取り、『サンタさんからのプレゼントだぁ!!』と
サンタさんを信じるフリをしました。
きっと、サンタの有無を知っている兄や姉は喜ぶ私を見て、
『サンタさん来てくれて良かったね!!』と笑顔で声を掛けてくれて、お互いのオモチャを見せ合いっこして、クリスマスを祝いました。
ふと、父と母の顔の方に視線を向けると2人は優しい笑顔で私たちを見ているのに気づき、思わず『プレゼントありがとう!』と言ってしまいました。
父は急に真顔になり、『サンタさんにお礼を言いなさい』と
言って背中を向けてしまい、私はもう少し父の笑顔を見ていたかったので少し、寂しい気持ちになりました。
ただあの時、私が見た父の優しく笑った顔は今でも覚えています。
今はもう実家も新しくなり、ベルの着いた玄関はありませんが喫茶店などの扉を開けるときに鳴るベルの音を聞くと、ふとあの日のことを思い出します。
父さんと母さんが子供の夢を守ろうとしてくれたあのクリスマスは一生忘れないと思います。
そして、孫たちの為に恐らく玄関にこっそりとプレゼントを置いてベルを鳴らしてくれた、じいちゃんとばあちゃん。
みんなありがとう。
「ベルの音」
「もうすぐクリスマスだなぁ」
私は、目の前に広がるイルミネーションの光を見ながらそう思っていた。
ベルの音が聞こえた気がした。
『ベルの音』
なんとなく学校帰りに寄ったカフェ。
いつもは見向きもしなくて、なんなら今日初めて知った。
ひっそりとした場所にある訳でもないのに、何で今まで気付かなかったんだろうと思い、足を止めて見ていた時ドアを開けたベルの音がした。
「おや、お客さんかな?」
「あ……」
「良かったら入っていく?」
出てきたのは自分より年上のお兄さん。20代後半くらいだろうか。
お兄さんの問いに頷き、中へと入った。
人気のカフェのようにキラキラとした場所では無くて、木をベースに落ち着いた色味とゆっくりとした音楽が流れている。
カウンターに座り、メニュー表を見た。大好きなミルクティーがあったのでそれを注文した。
「ちょっとまっててね」
そう言ってお兄さんはミルクティーを作り始める。
ちらりと辺りを見た。
誰もいない空間に、独り占めしているような気分だ。
「はい、お待たせ。ミルクティーです」
差し出されたそれにゆっくり口を付けた。
ほんのり甘いミルクティーに、ほっと心落ち着ける。
「なにかあったの?」
お兄さんは聞いてきた。
「……なにかあった訳じゃないんです。でも何もないんです、私」
周りのみんなは将来どうするとか、やりたい事があるとか、もうそんな事を考えていた。
自分が置いていかれるような気になって、勝手にいじけていただけなのだ。
「何も無くてもいいじゃん」
「……え?」
「無理やり作るものでもないからね、そういうの。何かあった時に備えておくのは良いのかもしれないけれど」
「い、良いんですか……?」
「決めるのは君だけどね。でも、大事なのは君の思いだからさ。それは君しか知らない」
周りのみんなに合わせることはないんだよ。
お兄さんはそう言った。
そっか、いいのか。
ふ、と軽くなった気がした。
最後の一口を飲み干し、支払いをする。
お兄さんは店を出る前「応援してるね」と言ってくれた。
「ありがとう、ございます」
カラン、とベルの音がした。この音にも応援してもらったようで帰り道の足取りは軽くなっていた。