『ジャングルジム』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ジャングルジムのてっぺんに
どっちが登るか揉めた小学生の夏。
結局2人で一緒に登って仲直りしたね。
でもいつからだろう。
私と君との間に距離が生まれたのは。
素直になれたらまた一緒に登れるかな。
今更だけどね
(権力者が下の方だとバレたあと)
ある日突然、鉄格子の四角い明るい単色の何かができた。
偉い人たちができた原因知ってるかと、報告書提出ついでに尋ねようとしたら、全く分からず調査中だからと、そもそも会えなかった。
これだけの大きさが自然発生するわけもなく、ついでにボクの管轄にあるせいで原因が一人に絞れてしまった。
溜息をつきながら犯人を探せば、できた何かの上に座っていた。
「…………演奏者くん」
「やぁ、権力者」
いつもの調子で彼はそう応じた。
「登っておいでよ」
「…………なんでこんなの作ったの」
「登ってきたら教えてあげるよ」
頑なに言ってくる。ひとつため息をついて、正方形のとこに足をかけながら、一段ずつ登ってどうにか彼の方まで行く。下を見ると格子状なせいで下が見えて、少しだけ怖気付いてしまうけど、どうにか平静を装って彼の隣に座った。
「……来たよ」
「きみが『ジャングルジム』知らないかと思って」
「………………それだけ?」
「あとは……高いとこからユートピアを見渡したかったのもある。やっぱり端までは見えないけど」
「…………ボクの管轄くらいなら見渡せるよ」
「……なんで、僕が犯人だと分かったんだい?」
「………………他の人の管轄の住人は別の管轄の場所までいけないの」
偉い人はどういう根拠か分からないけれど、自然発生を軸に調査してるらしい。…………こんなものが自然発生なんてするわけもないのに。
「……きみのこと、もう少し知りたいよ」
「………………ボクは君の方が気になるけどね」
寂しそうに言った彼に、若干冷たく返すと彼は笑った。
テーマパークのガイドというのは長くやるものではない。決まった光景で決まった台詞を決まったタイミングで話さなければならない。客もそのことは承知の上で、決まり切った展開をただ楽しんでいる。安全で変化がなく、それでいて客に逸脱しないようにさりげなく求めることも重要だ。
ガイドになりたての頃は、仕事を覚えるのにのが精一杯で、それなりに充実していたんだと思う。だが5年も続けると仕事も覚えて新人に教えられるまでになり、多少のトラブルにも余裕で対応できる。トラブルも多少で済まないものなんて起こりようがなかった。
俺は冒険がしたかった。子供の頃から知らない場所で迷うことが好きだったし、新しいことを一つずつ理解していくことが楽しかった。
大人になって仕事をするならば冒険者ではいられないことは理解していた。だが少しでも冒険者に近いことをしたくて、この仕事に就いた。
だがどうだ、今や求められるのは決まり切った環境と人間関係の中で上手くやっていく能力だ。
こんなの冒険じゃない。
すっかり倦んでしまい、このごろせめて休憩時間は施設の外に出ている。客に見えない部分の、粗雑で始末の悪い配線などに心を休ませられるとは。
などと荒んだ気持ちでいると、急に強く風が吹いた。
帽子が煽られ、あ、と思う間もなく飛んでいってしまった。
飛んでいった先を見ると、蔦が絡まったフェンスの上に引っ掛かっている。
あれ、無くすと仕事にならないんだよな、と仕様がなくフェンスを登り始めた。
複雑に絡まった枝に手や足をかけて登っていく。
まるでジャングルジムだな、と独り言ちた。
登りきり、帽子を手にして、ふと前を見ると、眼前に山裾の紅葉が広がっていた。
職場の近くに低い山があることは流石に知ってはいたのだが、紅葉がこんなに見事だったとは、5年間気が付かなかった。
最初の頃は余裕がなかったとはいえ、ここ3年くらい、俺は何を見ていたのか。こんな近くの美しさにさえ気づけなかったことに、衝撃を受けた。
その足で辞表を出し、今は山岳ガイドをやっている。
鉄棒はジャングルジムの氷山の一角バージョンだと勘違いしてわくわくしていた頃の自分は無敵に近かったと思う
「ジャングルジム」
公園の
ジャングルジムの
てっぺんは
あどけない眼で
仰ぎ見た場所
「ジャングルジム」
私の中はジャングルのように
ごちゃごちゃしていて、色々絡まっている。
そんな私の中を綺麗してくれた人がいた。
その人はとても優しい人で、面白い人だ。
私にとって大切な人だった......。
だがその人は私の前から姿を消した....、
私は一生懸命探し回った。
でも見つからなかった...
「ねぇ どこに行ってしまったの?・・・」
私、あなたと一緒にいたかったよ。
また、私の中はジャングルのようになってしまった。
お題「ジャングルジム」
あ。女児だ。
おれが見知らぬ女児を見つめているとき、女児もまた不審者を見ているのだろう。ジャングルジムの上、ちょっと笑って手を振った。
お山の大将ってやつだな、まさに。久々に登ったが、夕日が綺麗だった。
さて、女児もきっとジャングルジムをしたいだろう。そろそろ降りよう、と思ったところまではよかったのだが。
「……」
ポールを掴んでいた手を見ると、サビと汗が混じった茶色だった。どうしよう。降りられない。ちょっと擦りむくだけとはわかっている。わかっちゃいるが、もし足を滑らせたらと思うと動けない。
「ええと……まずはそこに手を……」
一人でブツブツとやっているのを不審に思ったのか、じっと見ていた女児は走り出した。
もっとまずくなってくるぞ。だって今人来たら逃げられないんだもの。
「ち、ちょっと君!!」
「─そう。んでそこに足かけたらもう降りれるでしょ?」
高く高くてっぺんへと
空に少し近づけた気がして
なんだかそこだけは空気も特別な色を纏って
まるで波間を縫う魚のように
キラキラと鱗をきらめかせて
私は流れてまっすぐにてっぺんだけを目指して
少し上がった息をふぅと整えて空を見仰ぐ
✼•┈┈ジャングルジム┈┈•✼
ジャングルジム
高いところが苦手な私は、
いちばん苦手な遊具。
公園が世界の全てだった頃。
正方形のあの牙城で、
たしかに僕は王様だった。
あんなに好きだったのに
興味が無くなるのは一瞬
雨が降った後の水溜りで
靴が汚れるのが嫌だった
平気平気と駆け出す友達
夕暮れ色のグラウンドは
子供の頃のわたしのまま
大人になるのってきっと
視野が広がるそんなこと
『ジャングルジム』
ジャングルジム
ジャングルジムを制すものは公園を制す。
なんつって、ガキの頃思ってたなー。実際そんなことはないが、公園内で一番高いジャングルジム、そのてっぺんから周りを見下ろすと偉くなった気がしていた。
ガキの頃は高いと思ってたジャングルジムも大人になった今ではそれほどの高さもない。てっぺんに腰掛け、周りを見下ろす。深夜の公園は誰も居らず、静まりかえったその雰囲気がまさに自分の現状と重なりやるせない。
上にいくことが偉いんだと思ってた。そのてっぺんから他者を見下ろすことが偉いんだと思ってた。本当にそんなことはないというのに。
そういや、初めてジャングルジムのてっぺんまで登った時。スゴいねーなんて褒められいい気になって。結果、ジャングルジムを独り占めしてあの時も人が居なくなった。みんなと遊ぶからこそ楽しい公園なのに。
仕事も。周りのみんながいてこその会社だ。
…また、みんなとやれるかな…。
地面に降り立ちジャングルジムを振り返る。やはりそれほどの高さはない。これを制したところで上には上がいる。一人で登りつめたって楽しくもない。
公園はみんなで遊ぶところ。会社もみんなでつくっていくもの。
もう同じ過ちはしない。
明日は朝イチで謝罪行脚だ。
お題『ジャングルジム』
小さい頃、ジャングルジムの頂上まで登れなかった。恐れ知らずな子供ならすいすい行けただろうけど、僕はそうはなれなかった。
そんな僕は今日、勤めてきたブラック企業を辞めた。
次のよりホワイトな企業を求めたゆえのステップアップのためだ。人手不足が故に上司や同僚から引き止められたが深夜まで残業して働く気にはなれなかった。
だから、一念発起して転職活動をして無事いい企業に転職することができた。
次の仕事が始まるまであと一月ある。
そこでふと、公園のジャングルジムの存在を思い出したんだ。
(今なら登れるかもしれない)
会社の退職手続きを終えて出た後、僕は公園のジャングルジムの前に立っている。
カバンを地面に置き、僕はジャングルジムを登り始めた。ジャングルジムってこんなに小さかったかなと思う。
だが、今ならなにも怖くない気がする。
そうしているうちに今まで止まっていた頂上より一つ下の段から頂上に足を掛けられた時、言いしれない興奮の感情が脳内を渦巻いた。
そのまま一気に頂上へ向かい、足を引っ掛けて腰掛け、ガッツポーズを決める。
すると、下にいた子どもと目があった。横にいたお母さんが
「あぁ、かわいそうに。貴方は本当に辛くなる前に人に相談できる子になりなさいね」
と言い聞かせているのが見えて、子供が意味もわからずきょとんとしている。
だが、僕は会社に行くふりしているスーツ姿の男ではない。
「大丈夫、未来は明るいよー!」
と叫んだら、お母さんが子供を連れてその場から逃げていった。すこし恥ずかしいことをしたけど、今の僕はなにも怖くない気がした。
知ってる?最近、夜に月の出ている公園の、とある場所で、まだ来ないって男の声が聞こえるんだって。そう語る興奮気味の友に、何それ怪談話?と言ったのがお昼のこと、今現在21時過ぎ、私は、公園のジャングルジムの前に居る。昼間の友の話しに少し心当たりあったからだ。昔よく遊んだな、錆び付いた鉄筋を指でなぞる。すると、ジャングルジムの上から、男の声が聞こえた。
ジャングルジム
夕方5時、団地の中庭
私はジャングルジムの
てっぺんにいる。
5時、町内放送
チャイムがなったら帰宅する約束、
学校でも我が家でもそうだった。
私は三姉妹のまんなか。
お姉ちゃんはお利口さんタイプ
5時にお家にいるだろう
妹はまだ小さくてジャングルジムには
登れない。
5時すぎ、団地の中庭の
公園にお友達の姿はなくなった。
静かだ、薄暗くなってきた。
そろそろ探しにくるだろう…
でもそれが
待ち遠しくて嬉しかった
『お母さんまだかな〜♪』
あの時は1番上まで上がって見る夕日と
その光が反射してキラキラした夏に役目が終わった
プールの水を見るのが好きだった。
誰がいちばん早く上までつけるのかとか
ケイドロでの檻にしたり
まだ小さい頃だから
背比べとかジャングルジムでしてたっけ、
あいつズルばっかするから
自分は少し怒ってたのも覚えてる。
でも楽しかったな、
もうあいつも自分も
会うことは少ないけど
久しぶりに登ったジャングルジムは
あの時と変わらない風景を見せてくれていた
─────『ジャングルジム』
「うおおおおおお!」
「…そんなに凄い?」
ゆっくり話したいから、ムンを公園に連れてきた。すると遊具を見てムン(20)が叫び出した。
「こっちの世界の公園ってこんなカラフルでつるつるなの?遊園地じゃんこれ」
「確かによくできてるよね」
遊んでくる!と彼女はダッシュして行ってしまった。
「あ、ちょっと!」
これが保護者の気分か…。
ベンチにいてもすることがないのでとぼとぼ着いていく。
「これ何!?」
「鉄棒だね、持って回ったりするやつ」
「これは?」
「ブランコ。上乗って揺れる」
「なななにこの幾何学的な遊具」
「ジャングルジムだね」
うおーすごい!木登りしてるみたいで楽しい!とはしゃぐムン(20)。
「私達、木登りなんて絶対できなかったじゃん」
脈絡なくそんな事を言ってきた。
「ああ、よく言われたな、『木に登るなんて…はしたない』」
…そうか、ムンは今特殊過ぎた幼少期をやり直しているのかもしれない。思えば彼女はずっと自由を希求して見えた。
北からの風で、彼女の白い服がはためく。
肺は風を食んだ。
ジャングルジムのてっぺんにいるのが
すごく楽しそうに見えたからと言って
大人の半分を越えた彼女は登っていった
上を見上げて誇らしげ
大人を脱いで身軽になったみたい
次々と遊具へと走る彼女は少年になった
No.130『ジャングルジム』
小さな頃、ジャングルジムは大きかった。
だから、ジャングルジムの1番上からなら飛べるんじゃないかと思った。
けど、飛べなかったよ。
私が大きくなってジャングルジムを大きいとは思えなくなっても飛べることはなかった。
ジャングルジム
「ねえねえママ! あたしもジャングルのジム、いきたい!」
ん?
ジャングル「の」ジム?
「あなたにはまだ、はやいかなー」
「はやい? なんで?」
なんで? はこちらが聞きたい。
「ね、ジャングルのジムって、誰から聞いたの?」
「おにいちゃん!」
あぁ、なるほど。
「なら、お兄ちゃんにお願いしてみたら? お兄ちゃんなら、知ってるから」
「! ほんと?」
「うん、本当」
それはもう、にっこりと笑ってみせた。
「わかった! おにいちゃんにきいてくるね!」
嵐のようにやってきて、嵐のようにとたとたと、いなくなる娘。きっと息子は困るだろうが、まあ自業自得だ。
なんたって、まだまだ若き4歳児にあんな嘘を教えるんだから。
「あれは、違うって!」
「だっていってたよね、『ジャングルのジムは、スリルがあっていいんだ』って」
「いや、あれはさ……!」
ほら、12歳児が4歳児に負けてる。
どのあたりで割って入ろうか。またはもう少し傍観するか。
さっきとはまたちょっと種の違う、笑いがこみ上げてくる。我ながら、悪いなぁ。