『クリスマスの過ごし方』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
クリスマスなんて恋人が居なくても
家族が集まらなくても楽しんでやる!!
なんて意気込んだ今年のクリスマスは
朝から溜め込んだ録画消化に使った。
途中で着替えて
コンビニに向かって
ちょっとしたコンビニスイーツと
ご飯調達をした。
寒すぎてベイマックスになるのが冬の風物詩だと思う。
早足で家に帰ってこたつで暖まる。
夜になったらYouTubeで動画を見る。
インスタやXは見ないようにしても
いつの間にか開いてしまっているのは
何かに操られてしまっているのではないかと
錯覚してしまう。
そこにはクリスマスパーティの様子や
クリスマスプレゼントのストーリーや写真ばかり
いいなーと思うと同時に
この過ごし方も今しか出来ないかもだし
最高すぎると思うことにした。
今年もサンタさんは来なかったけど
楽しかった私のクリスマス
─────『クリスマスの過ごし方』
クリスマスの過ごし方は家族と過ごそうと思う。
変な新興宗教にハマった家族と変な神様という家族で過ごそうと思う。
サンタさんへ、私へのプレゼントは死が欲しいです。
09
クリスマスなんてねぇよ
バイトだよ
慰めろよクソ
「クリスマスの過ごし方」
25日…何もしていない。いつも通り仕事に行き、帰ってきてご飯を食べて寝た。それだけ。
クリスマスケーキやチキンは24日に食べたこともあり25日は普段通りのご飯を食べた。当たり前だがクリぼっちだ。
毎年思うことがあるのだが、クリスマスといえば24日の方が盛り上がっている気がする。25日は後夜祭というか余韻の日というイメージが強い。なぜだろう。外に出てクリスマスを味わわないせいだろうか。25日はクリスマス気分が湧かない。
クリスマスの過ごし方
クリスマスワンルームワンナイト
寒空の下ドアの前で床の植木鉢を持ち上げる、目の前のドアを解錠できるスペアキーを手に持ち、僅かに付いた土埃を取り払う、普段この鍵は使われないのだから当然か。
いつも使っている鍵は会社のロッカーの中にはあるが、ロッカーにも鍵は付いているしそうそう開けないだろう。忘れてしまったのはしょうがない急いでいたのだ。
カチャリ、と耳心地の良い解錠の音がする。
ただいま
平日ど真ん中の水曜日、街中流れるクリスマスソングとカップルをかき分けたどり着いた我が城。
パチンと灯りを付けて響く第一声は誰もいない空間に虚しく消え、代わりに寂しさを返した。
氷点下の気温に晒された築何十年のボロアパート、期待に漏れず室内は寒々しく暖房なしでは居られない。
扇風機に似た形のハロゲンヒーターと炬燵、更にはエアコンの電源を入れて台所に立つ、予約していたミニホールケーキをお皿に移しチキンはレンジへ。
兎にも角にも寒い、私の口は外にいた時と変わらず寒いしか発する事しか出来ず、悴んだ手をヒーターへ伸ばす。
ほんのり温かい熱波が私の固まった指先をゆっくりと溶かしてゆく、無心で手を閉じては開いてを繰り返していれば、短く高い音に戻された。
今日はクリスマス、毎年恒例ソロイベント。
激務でイヴを会社で過ごそうとも私には関係無い、一人の方が気楽で好きだ。
洒落たツリーも飾り付けも要らない電気代が勿体無い、
ケーキとチキンと炬燵と私、それだけあれば充分。
テレビを垂れ流しにして洗い物は明日の自分に託し、家事を何もせずまったり過ごす、これが私のクリスマスの過ごし方。
料理を置いてテレビを付ける、着の身着のまま炬燵へイン。着替えてなんか居られない、炬燵が温かく私の足を歓迎する。
ほんの一瞬違和感を覚えたが、認識する前に液晶越しから流れる楽しげな音楽に、些細な思考は隅へと流された。
イルミネーションでキラキラした都会の映像、美味しそうなローストチキン、気難しい話しかしない政治家も今日ばかりはサンタ帽子を被り、ニュースキャスターと浮かれている。
さあ食べよう、だけど肝心のスプーンが無い。生憎素手でケーキを食す習慣は無いので致し方なし。
私は離れがたい炬燵からしばしの別れを告げ、台所へ立つ。
この時、時刻は19時を指していた。
テーブルのスマホがチカチカと点滅している、開かなくてもわかる彼からのメッセージだ。入社して半年が過ぎ教育係の私の手から離れた筈の後輩君、安易に連絡先を教えてしまったのは間違いだったかも。
最近距離が近く、欲しいと思った物をピンポイントで送ってくるのだ、当然全てお断りしている。
私生活を覗かれている気分で正直怖い。
今日の予定だってしつこく聞かれた。
だけども、私は好きで一人のクリスマスを過ごすと決めているのだ。誰にも邪魔はさせない。
プラスチックのスプーンを携えて座る、今度こそケーキにありつける。
メリークリスマス
いただきますの代わりに呟いてみた。
まだ、「ただいま」よりも先に言ってしまうとは、
私も相当浮かれているのかも知れない。
おわり(一部編集)
クリスマスを君と過ごせるほどのキョリではないから、
君の匂いに似たハンドクリームをつけた。
まるで隣に君がいるみたいだ。
主の祈り
天にいますわれらの父よ、
御名があがめられますように。
御国が来ますように。
み心の天に行われるとおり、
地にも行われますように。
わたしちに日ごとの食物を、
きょうもお与えください。
わたしたちに負い目ある者をゆるしましたように、
わたしたちの負い目をもおゆるしください。
わたしたちを試みに会わせないで、
悪しき者からお救いください。
権威、栄光、祝福はとこしえに、
メシアの御名と共なる神に帰します。
アーメン
クリスマスの日には、急募されていたサンタのアルバイトをしていた。
サンタが24日の夜に配りきれなかったプレゼントを、一件につき千円(サンタ側負担)で届ける仕事だ。
だから、クリスマスイヴの夜より後に現れたプレゼントは、たぶん僕が運んだものだろう。
題:クリスマスの過ごし方
久しぶりにゆっくりできる時間に
サンタさんからのプレゼントを堪能
まだ勇者は世界を救えないけど
わたしのサンタさんはいつもわたしを救ってくれる
「クリスマスの過ごし方」
辞めたいと
喉まででてるが
言い出せず
そのまま直帰
バイト帰りのクリスマス
気になるあの人のクリスマスの過ごし方が気になって仕方がない。
好きじゃなくて、気になっているだけの人だけれど、好奇心が先走る。
メリークリスマス
サンタさんは私の心にワクワする気持ちをプレゼントしてくれたました!
ありがとサンタさん🎅
眠っている純粋な気持ちを思い出す宝石箱はここに
家族で過ごす人、恋人と過ごす人、友人と過ごす人
クリスマスだけの付き合いで過ごす人、1人で過ごす人
みんなはどんな過ごし方かな?
子供の時のクリスマス、大人になってからのクリスマス
世の中には色々なクリスマスが溢れてるよね
楽しいって人が多いのかはわからないけど
この日はとても辛いことを思い出してしまう
良い思い出もあるけど、どちらかというと嫌な思い出しかないのかもしれない
その話はまたいつか、話を聞きたい人がいれば伝えたいと思います。
そしてあの人は楽しく過ごせているのかな
また、気が向いたらたわいもない話をしようね。
【お題:クリスマスの過ごし方】
ガチャリと、事務所のドアを開く。
外の窓から明かりが見えていたため、誰かが残っているのだろうとは思っていたが、ドアを開けた先は、なぜかお祭り騒ぎであった。
バタバタと動き回るウチの従業員と、赤と緑の紙やらなんならで飾りつけられた室内。
ある程度広めの机の上には、チキンを中心とした、様々な料理が並んでいる。
これらを指揮しているのは、どうやらシエルのようである。
「シエルさん、この騒ぎは一体……」
「あっ! 華扇くんお帰り! 今日はクリスマスだよ!」
「くりすます?」
シエルは、異世界からの転移者だ。
レークスロワでは、転移者はさほど珍しいことでもなく、基本的には放置されているが、彼女は訳あって保護対象となった。
その訳は、彼女の指揮を忠実に聞いて行動している、うさぎ耳の青年……元々桜花國、西側の領主をしていたが、十王並びに柱達の反感を買い、何をやらかしたのか捕まっていた過去のある男、盡兎(じんと)。
獣人というのは、番と呼ばれる、生涯の伴侶がいるそうで、シエルは盡兎の番である。彼の監視と首輪が必要だと思っていた十王にとって、彼女は適任者だった。
そして、レークスロワの常識をシエルに叩き込む役目を任されたのが、私達、探偵事務所ドラセナである。
よって、元々四人で活動していたのが、六人と大所帯になったものであるが……。
度々、シエルは訳分からないことをする。どうやら、今日もソレらしい。
「十二月二十五日は、僕が住んでたとこでは聖夜って呼ばれててさ、それがクリスマス」
「また、宗教みたいな話ですね」
「宗教だよ。神様の生誕祭だもの。あぁだからって勘違いしないでね? 僕は別に興味無いから」
ではなぜ、異世界に来てまで生誕祭をやっているのか。
疑問が顔に出ていたのだろう、シエルは苦笑いを零した。
「いいじゃない、美味しいものを食べる日があってもさ。僕にとってのクリスマスは、美味しいものを食べる日なんだよ」
「シエル、こちらはどこにおきますか?」
「あぁ、盡兎くん、熱いから気をつけて。それはそっちのテーブルで……」
一瞬、遠い目をした彼女であったが、すぐに準備に戻る。
シエルと入れ替わるように、トコトコっと、白い片羽を持った女性、チェカが隣に来た。
「お帰りなさい華扇さん。お仕事お疲れ様です。」
「ありがとうございます。なんだか、騒がしいですね全く」
「ふふ、でも楽しそうじゃないですか。姫川さんや宮野さんまで張り切っちゃってますもん」
奥を見ると、確かに姫川が料理をせっせと作ったり温めたりし、宮野がそれを手伝っている。この二人も転移者で、私達とは、色々あって行動を共にしている。
「やれやれ、異文化交流とはこんな感じなんですかね?」
「あははっ、確かに。ここにいる皆、転移者ですからね」
「類は友を呼ぶとはよく言いますが、なぜ転移者がこんなに集まったのやら」
クスクスと、チェカは可愛らしく笑うが、私が出会った転移者第一号が、自分であると理解しているのだろうか。
「華扇くん! チェカくん! 準備できたよ!」
「はーいっ!」
チェカが片手を上げ元気よく動き出す。
私もそれに続いて、席に着いたのであった。
ーあとがきー
今回のお題はクリスマスの過ごし方!
……レークスロワってクリスマスないんですよ……だから、クリスマス系のお題は書かないことがままあったのですが、せっかくだからと書いてみました。
今回の語り部は華扇くんっ! とりとめのない話で、暗い部屋にいた子ですね。彼が外に出てからの話。
このメンバー、レークスロワ出身は、華扇と盡兎の二人、後は異世界からの転移者となります。
転生者ではなく、転移なので、向こう側で死んだわけではないですね。
彼女達の話も色々あるので、今後のお題次第では出そうかなと思ったり。
あとですね、クリスマスの概念がないってことは、初詣とかの概念もないです。きっと、この辺りのお題も来るだろうなぁ、どうしようかなぁと今から悩んでおります。
それでは、この辺りにいたしましょう。
また、どこかで。
エルルカ
深夜12時に仕事が終わる
途中のコンビニに寄ると
普段より幾分か豪華な陳列棚が目に映る
食べられるはずだった売れ残りのチキンやピザや値引きされたケーキが無機質に忽然と並べられていた
結局何も手に取らず
いつものコーヒーを買って帰路についた
既に大人になった自分には無関係なイベントであり もはや日常の一部でしかないのだと感じた。
あなたとキラキラした街を歩いて
ご飯を一緒に食べて
ベンチに座って
ちょっとお話
とっても幸せな一日
最高のクリスマスをありがとう
『クリスマスの過ごし方』
ワクワク感は無くなってきたかな
けっこう普段通り
でも子供たちや恋人たちの笑い声に
少し耳を澄ましてる
『クリスマスの過ごし方』
地球では今日、クリスマスだ。
私の仕事は少々特殊かつ危険で、地球外で行われている。最年少で試験を突破し特殊生命体ナンバーズ調査の資格を得た
何かの運命か、いや、こいつの調査は毎年の12月25日。運命でも、なんでもない。今日はサンタを調査することとなった。
No.088「サンタの悪夢」
確認情報:寝たきりで動く事のない赤い服を着て髭を生やした地球で語られる「サンタ」の容姿と酷似している。088は毎年12/25に夢を見る。夢に映るのは4~5歳の子供。夢に映る人物は実在しており、全員が亡くなっている。
死因、死亡時刻等に共通点はなく、その年死ぬ子供を映し出していると思われる。
今回も、例年通り夢の監視を行う。専用の管を繋げ、サンタの悪夢と同調する。
子供が80人ほど映し出されていく。全員を記録し、0:00に近づき日を跨ごうとした時。夢の同調が断ち切られた。最後に見たのは鏡、鏡に写されたような、自分の姿。
近くに、プレゼントが落ちていた。
追記:サンタの悪夢は、死ぬ間際の子供たちにプレゼントを渡している。それが災いし子供達が死んでいる見解もあるが、一般的には、これから死にゆく子供達のため、善意でプレゼントを送っているという見方が多い。実際に中身はお菓子やおもちゃなど、子供が喜ぶものばかりだ。
ただ、渡されたものは死が近いので「死のプレゼントボックスとも呼ばれている」
23
「さすがに道が混んでいる。駅周辺を抜けるまではこのような感じだろうな」
渋滞気味の道路をゆるりと走らせながら、我が社の社長・火鋤神凪(かすくがみ なぎ)はそう言って少し困った顔で笑う。
俺は助手席に座りながらどうにも落ち着かない心を鎮めようと、こっそり深呼吸してみたり別の事を考えるように努めようと努力していた。だが、余りにも唐突かつ予想外なこの状況の前では、それらの行為は少しも意味を成さなかった。
(―――ってか無理だろ!凪様…じゃなかった、凪社長直々に運転されているプライベート用車の助手席に乗ってるんだぞ…!?)
目立ちたくないと言いつつ乗っている車は超が付くほどの高級車で、内装たるや全てがラグジュアリー。
俺のような一般人が乗るのが本当に申し訳なくなってくる程である。
そもそも元々護衛を任されていたとはいえ、今となっては大企業の社長兼取締役と一般部署に勤める一社員である。同じ社内に籍を置いていても、その差は一目瞭然であった。
(…そりゃ、あの頃はよく会話する事はあった―――けど)
帝鐵コーポレイションと我が火鋤神株式会社が争った「帝火抗争」。俺と八神隊長、同僚の東城翔は先代・火鋤神佐近直属の護衛であった。
抗争の最中、敵の刃に倒れた佐近から社長の座を譲り受けた凪は、社長の座と共に俺達護衛をも共に譲り受ける事になる。
護衛といえば所謂SPのようなものと認識されるかもしれないが、この場合に於ける"護衛"とは言わば懐刀のようなものである。
敵の調査を行う事も勿論、命とあらば奇襲を仕掛け、命を賭け敵と刃を交える事など幾度もあった。
故に、俺達―――少なくとも俺にとって主人・火鋤神凪の存在とは己の命そのものであり、その言葉は絶対的―――命令というよりかは神託に近いようなものであった。
先代・左近に仕えていた時はそのような感情は抱かず、主君と部下の関係性そのものであったと記憶している。
けれどこの火鋤神凪という人物に仕えるようになると、その関係性はまるで違った。
(―――なんつーか、神様に近いような人と会話してるような感覚だったんだよな)
それは火鋤神凪という存在そのものがそうさせるのかもしれない。
少年のようなあどけなさを持ちながら、深碧色に一滴の金を落としたその瞳は常人離れした雰囲気を彼に纏わせる。
朱殷色の長い髪を一つに高く結び、常に和装を身に纏い、表情から一切の真意を悟らせぬその姿は君主そのものだ。
そして、少し低く艶のある声―――
あの姿とあの声で死ねと命令されていたら、当時の俺であれば一寸の迷いなく自死していただろう。
それ程までにこの人に心酔しきっていた。
(もしかしたらあの時は抗争の雰囲気でそういう感じになってたのかも知れねえな)
兵士が戦時中に経験する心理的状態に"従順性"や"英雄崇拝"といったものがある。
あの頃の自分が、それに近い状態だったと考察すれば納得がいく。
ただ―――。
それを鑑みたとしても、火鋤神凪という人物が人を限りなく強く惹きつけ、また恐ろしい程人に畏怖の念を抱かせる存在である事には変わりない。
現に現在、社長である火鋤神凪に対して好意的な印象を持っていない人物に出会った事は無く、火鋤神凪が進める社の政策に不満を抱く者は存在しない。
そう考えると、少し末恐ろしい人物ではある。
(年齢不詳だしな…見た目は俺より全然年下に見えるんだけど、社長の妹の翠様が幼かった頃に既にこの見た目だったって噂もあるし……)
全てに於いて謎めいている―――。
「…どうした、俺の顔ばかり見て。そんなに男前か?」
そのような事を考えていたら自分でも気付かぬ内に社長の顔を凝視してしまっていたらしい。
社長はそう言って悪戯な顔で笑ってみせる。
「す、すみません!…いや、その…どうして今日は俺を連れ出して下さったのかと思いまして」
俺は誤魔化す為に咄嗟にそう言った。
何となく、社長の謎について考えていたとは言いづらい。
「んー?」
社長は運転しながら顎に手を触れる。
「さあ、何でだろうな。まだ秘密だ」
そう言うと悪戯に目を細めた。
「秘密…ですか」
秘密にする程の何かがあると言う事だろうか。
社長は暫くそのまま黙って運転していたが、不意に「なあ雷生(らいせい)」と口を開く。
「お前は何でクリスマスが嫌いなんだ?」
「…っ!」
突然の核心を突く質問に思わず俺は怯んでしまう。
「どうした、言いづらい事か?言えないなら無理に答えなくて良い」
「いえ、そう言う訳じゃ無いんですが……聞いても特に面白い話じゃないですよ?」
「構わない。お前さえ良ければ教えてくれないか」
俺は一度瞼を閉じ、深く息を吐く。
この話をするのは少しばかり、心の準備が必要になるのだ。
気付けば車は混雑を抜け、夜の市内を駆け抜けていた。光の線となって視線を通り過ぎてゆく色とりどりのネオンが美しく、眩しい。その中で、少し遠くに立ち並ぶオフィスの高層ビルは黒く暗く、小さな灯りを静かにそっと灯している。
―――目まぐるしい今に埋もれていても、決して消えず常に其処に存在している過去のように。
「俺の両親は、俺がちっさい頃に離婚しました。親父の顔はよく覚えていないですけど、唯一覚えているのは俺がハイハイしている時見た、母と言い争っている姿だった。そんな頃の事を覚えているんだから、よっぽどショックだったんでしょうね、当時。
それから母は女手ひとつで俺を育ててくれていましたが、母はそりゃあもう厳しい人で、俺が少しでも何か出来なかったり間違えたりしたら、すぐに殴ってくるような人でした。まあ、今考えてみれば母も全て一人で仕事に家事に子育てとやらなきゃいけなかった訳ですから、大変だったんでしょう。世の中も、今みたいに子育てに手厚い訳でも無かったですし。
―――前置きが長くなりましたが、そんな訳で母は仕事で家にいない事も多かったんです。学校の行事にも来れなかったし、当然、クリスマスも誕生日も、イベント事はうちにはありませんでした。
学校の奴らが話すプレゼントの話や、嫌でも見かける街中の装飾、幸せそうなカップルや家族を見るのが本当に本当に嫌だった。
それをいい大人になってもいつまでも引きずっている―――って訳です」
まあ、今は一緒に過ごす恋人が居ないっていう妬みが一番ですけど―――そう言って俺は嗤った。
(…あれ?)
何らかしらの反応がすぐに返って来るかと思っていた俺は、何も反応がなく、車内が沈黙に包まれている事に気付き、運転席の方を見る。
赤信号で止まっている中、社長はじっと、まっすぐにこちらを見ていた。
(…!?……しゃ、社長が…俺を…見つめている…!?!?)
緊張か動揺か、それとも別の何かなのか、鼓動が速くなるのを感じて俺は思わず目を逸す。
「――――すまない」
どうして良いのか分からず俺が己の膝をじっと見つめていると、社長は少し経った後そう言った。
俺は思わずバッと社長の方を再び見る。
「なっ……え!?何で凪社長が謝るんですか!」
社長は今度は伏し目がちに、とても悲しげな表情を浮かべていた。長い睫毛が眼に影を落としている。
「そのような理由だったとは。辛い記憶を思い出させてしまったな」
「いえ、全然大丈夫っす…!…こちらこそ、社長にそんな思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」
こんな話、言うべきじゃ無かった。
けれどどうしてか、凪社長にはつい全てを話してしまうし、知っていてほしいと思ってしまう。
(…あの頃の信仰心がまだ抜けてないのか?いや…それとは何か違う気も…)
「……雷生」
社長は赤い信号の光を見つめながら、ぽつり、と呟くように言った。
「俺にはお前の過去を変える事は出来ぬし、お前の過去にもなってやれない。
―――けれどお前の"今"になれたら嬉しく思うし、今日も含めこれからそうなれるよう努力しよう」
社長はそうして、俺の方を見、菩薩の様な優しい顔でそっと笑った。
一回大きく心臓の音が鳴る。
思わず俺は目を見開いた。
「…あ…ありがとう…ございます…?」
顔が熱い。俺はそのような間の抜けた返事を返すと再び己の膝へと視線を戻した。
(な…な…なんだ…!?お、俺の"今"!?え!?今ってなんだよ!?いや…そんな深い意味は無いのかも…。マジでどうなる、俺……!?)
信号か青に変わる。
車は夜をゆっくりと駆け出していった。