『クリスマスの過ごし方』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
イルミネーションとか見に行くのかな
自分はちょっといいかな、イルミネーションとか遊びとかちょっと今いいな。なんだろうこの気持ちわかんない。
今日は、母上が帰ってくる。
母上は、仕事の関係で家になかなか帰れない。
だから、今日は嬉しい。
家族で一番に母上に迎えたくて、玄関の前に立つ。
「若様、冷えますから…こちらを着て下さい。」
執事がコートを渡してくれた。
「ありがとう。」
私はコートを羽織る。
ガチャ
玄関ドアの鍵が開く音がして、玄関ドアが開く。
「母上、おかえりなさい。」
「ただいま、わたしの世界一の宝物!」
ギュッと、抱きしめられる。
頭にキスをされ、もう一度強く抱きしめられる。
其れが嬉しくて、嬉しくて、堪らなかった。
この時を過ぎれば、もう母上を独り占め出来なくなる。
だから、この時を噛み締めた。
可愛い弟たちと可愛い妹たちに母上を譲れるように。
「母上、大好きだよ。」
「わたしも、大好きよ。」
そして、最後にもう一度だけ母上を強く抱きしめた。
結局今日も部屋に1人で隔離されてる。
お母さんが世話してくれるのだけが救い。
でも、
インスタで友達がはしゃいでるのを見て寂しくなった。
もうこうなったらこの隔離してる間にずっと書き続けてた小説完結してやる。
誰だよこんなインフルエンザとかばかみたいな病気生み出したの!!
お前のせいでクリスマスひとりで苦しんだっつーの!
祝祭の最もたる日。日常から離れて、非日常を満喫する日。心躍り、他人との幸せな時間を共有する日。広告が最も活躍する日。お風呂にゆっくり浸かりながら、今年一年を振り返りながら過ごす。
ラン
『クリスマスの過ごし方』
ひとりぼっ... .. . .
ちくしょう!!
小さい頃はサンタさんを待ってた
小学生の頃はクラスでクリスマス会
中学生の時 仲間と一緒にパーティをした
初めての手料理は
どれも美味しくなくて大笑いしたね
就職してからは
毎年 レクリエーション
みんな楽しそうだったね
その時々で
クリスマスの過ごし方は変わっていった
どれもね
大切な 大切な一時
クリスマスは特別な日ではないけど
いつも
その時々の笑顔があったかもしれない
【クリスマスの過ごし方】#49
今日は何もしたくない
飲み会もキャンセルしたし
一日中寝て過ごそう
お腹空いたな
なにも食べるのないな
コンビニ行くか…
がまんしよ
ケーキくらい買っておくんだったなぁ
それにしても毎年ハードだよなぁ
一晩中飛び回って
夜になってから配れって
あれやめてくんないかな
トナカイは言うこと聞かないし
嫌われてんのかな
時給上がらんし
キツイわぁ
辞めんけどね
『クリスマスの過ごし方』
「クリスマスの過ごし方」、か。
うーん、僕家で引きこもってたなー
うちのねーちゃんは、彼氏と外行ったけどね
幼馴染のあいつも結局俺を誘わなかったね
まー、こんなに寒いのに外に出るなんて却下だからな
「好きな人といると、心が温かくなる」?
そんなことないだろ、そんなん妄想だよ
去年はあいつと一緒にいたけど
全くあったかくなかったからな
迷信だよ、そんなもん
うん、そうなんだよ
…でもな、聖夜くらいそんな迷信に惑わされてみたいよな
俺なんか去年を省いたら、もう10年クリボッチだぜ?
悲しくってしゃーないよな
なにも考えたくはなかったよ
一人だもんな、うん
そんな悲しい沈黙を裂くように
あいつからの電話が掛かってきた
『はーい?もしもしー?』
「っあ、出た出た、さっきから何回も電話かけてたんだけど?」
『んー?ごめーん』
「思いがこもってねーよ…で、なんでかけたかわかるかー?」
『しらねー、知ってていいことねーんだよ』
「はぁ…どーせクリぼっちなんだろうから、ゲームでも誘ってやろうと思ったのになー」
『あー?俺暇だからもう寝るけどー?』
「はっ?おまっ、クリスマスはこれからだぞ!?何、いまからねんの!?」
『え、悪い?』
「…少しくらい、構えよ…俺が誘ってやってんだからさボソッ」
『えっなんかいった?』
俺はあいつの言葉に、照れているみたいだった
クリスマスの過ごし方?
いや、いつも通りっす
ケーキと鶏のモモはイブに食べちゃったし、いつも通りの月曜日っす
クリスマスの過ごし方
大好きなものに囲まれて…
しあわせ気分
いつもはがまんしてるから
クリスマスだけは…
可愛い服着たり、好きなもの
我慢しないで食べたり…
好きなものとおしゃべり
したり…
好きというきもちに
すなおになって…
笑顔になれる時間
を過ごすの…
300字小説
サンタへのプレゼント
平日、単身赴任のサラリーマンのクリスマスの過ごし方なんて決まってる。
年始年末の休暇に間に合うように、昼休みまでずれ込んだ仕事をひとまず終え、はしゃぐ冬休みの学生達を脇目に定食屋に駆け込む。
テレビの左上の時刻を気にしつつ、運ばれてきた食事をかきこみ……。
ピロン……。スマホが鳴る。妻からの動画付きメッセージ。再生すると
『サンタさんが来たぁぁぁ!!』
起きてすぐ枕元に置かれた、俺が送ったプレゼントの包装を破り捨て、高々と欲しかったおもちゃの箱を掲げる今朝の息子の姿。
途端に生姜焼き定食が、宮廷料理もかくやという味に変わる。
次いで妻からのVサインのスタンプ。
俺も同じスタンプを送ると動画をもう一度再生した。
お題「クリスマスの過ごし方」
クリスマスの過ごし方
ほんの少しだけ残業して会社を出ると
街は華やかな光に溢れていた
今日はクリスマス
道行く人たちも皆浮かれた雰囲気である
残念ながら自分にはなんの予定もない
今日はもちろんのこと
イブだって普通に仕事をして
普通に帰ってカップ麺を食べて
寝て起きて仕事に行ったんだ
一緒に過ごす恋人はもちろん
家族だっていない
当然サンタさんだって来ない
立ち寄ったスーパーで
半額シールが貼られたケーキが目に止まる
よく見るとお肉やサラダも半額になっていた
せっかくの機会だしフードロスにもなる
たまには自分も浮かれて過ごしてみても
いいのかもしれない
クリスマスの過ごし方?
まずは、塩コショウを振りかけられて。
ローズマリー。玉ねぎをお腹に詰め込まれる。
ニンニクも忘れずに。
あとはじっくりオーブンで日焼けする。
肌が乾燥してパリパリになったら。
皿に大人しく乗っかる。
そして、子供が嬉しそうに覗き込んでくる。
俺は食べられるために生まれてきたからな。
骨までしゃぶって食べてくれよ。
#クリスマスの過ごし方
クリスマスだからって昔みたいに俺はハッピーにはなれない
【クリスマスの過ごし方】
受話器から聞こえてきたノーラの声は、ご機嫌とは言えないものだった。
「絶対にあやしい」
そう断言する彼女が疑っているのは、ぼくたちの父さんのことだ。
「ビリーと一緒にイブの前にはそっちへ帰るから、って言ったら、父さん、なーんかあたふたしだして」
ぼくはシェフ見習い、ノーラは音楽学校の生徒で、二人ともそれぞれ実家を離れて勉強中の身。けれどもうすぐクリスマス休暇だから、ぼくもノーラも一緒に実家へ帰る予定。ノーラはついさっき、電話でそのことを父さんに話したそうだ。
「なぜそんな早くに?私への気遣いなら必要ない、もっとゆっくり来たらどうだ、なんて、気まずそうに言うんだよ!」
父さんの口真似をして憤るノーラ。かなり興奮気味だな。
「これはもう絶対、新しい恋人と暮らしているんだって、きっと!」
実家には今、父さんが一人だけで暮らしているはず……なんだけど。
ぼくたちの母さんは半年ほど前に病気で亡くなってしまった。
母さんは画家、父さんは児童文学作家で、両親とも自宅が仕事場。ぼくたち家族四人は普段一緒にいる時間がほかの一般家庭よりも長かったからだろうか、けっこう仲の良い、気の合う家族だった。ぼくたちが大きくなって家から巣立っても、お互い電話や手紙でひんぱんに連絡を取り合っていた。母さんが亡くなってからは特に、ぼくもノーラもできる限り電話や手紙、はがき、時には実家まで会いに行ったりして、父さんに寄り添ってきた。
けれど最近ふた月前ぐらいから、どこか父さんの様子がおかしくなった。忙しいからと長電話に応じてくれなくなったり、話していてもどこか上の空だったり、手紙の返事も滞りがちになって……
ノーラの推測どおり、本当に父さんに恋人が出来たからだろうか?
「だけどノーラ……あんな不器用な父さんに、母さん以外の彼女ができると思うかい?」
父さんは素敵な言葉を見事にあやつって、読む人を夢のような世界へといざなう物語を綴る人気作家なんだけど、人見知りが激しくて感情表現もとぼしく、お世辞にも人付き合いが上手いとは言えない人だったりする。
「それに、父さんはずっと母さん一筋だったじゃないか。死んだからって、たやすく心変わりできるような質じゃないよ」
冷静なぼくの意見にも、ノーラは耳を貸さない。
「だってほかに思いつかないもん。それに父さん、無愛想だけどハンサムだし。押しかけ彼女に居座られてるとか!ありそうだよ!」
とにかく父さんの不審な態度を確かめなきゃ!ノーラの必死ながなり声は、耳から腕いっぱい受話器を離しても充分に聞き取れた。続いて聞こえた言葉に天を仰ぐ。
「だから予定を前倒しして、今から出発しよう、ビリー。用意して待ってて、車ブッ飛ばしてそっち行くから!」
思い込んでしまったノーラにはお手上げだ、どんな名演説家でも彼女の鉄の心は変えられない。大きくため息をついてから受話器を引き戻し、やれやれと諦めの心境で「イエス、マム」とだけ告げて、ぼくは電話を切った。
「さあ、着いた!気付かれないうちに中へ踏み込むよ!」
荒っぽいノーラの運転で車に揺られること約二時間、もうすっかり暗くなったころにようやく家に到着。庭に駐車させると同時に、ノーラは車から飛び出して玄関へと走った。ぼくもふらつく頭であとにしたがい、ドアの鍵をぼくの合鍵で開けて中へ入った。中は全体的に間接照明だけで薄暗く、シンとしている。二人でリビングやキッチン、バスルームを覗いて廻ったけど、どこにも父さんの姿はなく、恋人とおぼしき人の気配も感じ取れなかった。
「もう寝たのかな。だとしたらベッドルーム……」
もし本当に父さんが新しい恋人と同居しているのだとしたら……気不味くて、とてもその部屋を訪れてみようなんて思えない。ぼくが言葉をにごしてためらっていると、険しい顔でノーラが凄む。
「だったらさっさと行こう!決定的瞬間で現行犯逮捕できるチャンスだ!ほら、グズグズするな!」
尻込みするぼくの腕を絡め取ったノーラに、有無を言わさず引きずられて行く。ベッドルームの手前まで来ると、そのとなりの部屋のドアから灯りが漏れているのに気付いた。その部屋は母さんのアトリエ……ノーラも気付いたようで立ち止まり、二人して顔を見合わせた。するとアトリエのドアがいきなり開いた。
「――ビリー、ノーラ……!お前たち、なぜ此処にいる!?」
開いたドアから、素っ頓狂な声と顔をした父さんが出てきた。居合わせたぼくたちは三人とも驚いてしばし呆然と見つめあった。ぼくたちが驚いたのは父さんの格好。絵の具まみれのエプロンを身に着け、その下にはやはり絵の具まみれのよれたトレーナーにジーンズ。常にドレスシャツやスラックスで上品な身だしなみを心掛けていた父さんだったのに、まるで生前の、仕事中の母さんのような作業着姿だったからだ。
「く、来るのはイブの前日ではなかったのか?」
最初に我に返って言葉を発したのは父さんだった。かなり動揺した様子で、ぼくたちから目をそらし気味にしている。その不審な仕草にノーラがここへ来た目的を思い出して、父さんを睨みつけた。
「父さん、新しい彼女はどこ!?」
力いっぱい見開かれた目が、父さんの端正な顔を滑稽なぐらいに歪めさせた。ノーラにぶつけられた言葉があまりにも意外なことだったらしく、その滑稽な顔のまま、すぐには返事ができずに口をパクパクさせて、父さんは呆気にとられたようだった。
そのはっきりしない様子がノーラの業を煮やしたみたいで、絡め取っていたぼくの腕を離すと力強い足取りでベッドルームの前に立ち、ノックもせず豪快にドアを開けて中に踏み込んでいった。ノーラがクローゼットやベッドの掛け布団をまくったり、ベッドの下を覗き見たりする物音を耳にしながら、ぼくは固唾をのんで、父さんは訳が分からないといった風情で立ち尽くし、彼女の行動を見守った。やがて、
「……誰もいない……」と、釈然としない面持ちでノーラがベッドルームから出てくると、ぼくは思わずホッと詰めていた息をはいた。良かった、とにかく父さんのディープなプライバシーを暴かずに済んだようだ。
「お前たち……一体何のつもりで私の身辺を嗅ぎ廻りにきたのだ?」
いくら父さんが鈍い唐変木でも、なんとなく事態が呑み込めてきたらしい。不機嫌に声を尖らせてぼくたちをなじる。ぼくはどう言い訳したものかと返答に困り、なにも言い返せなかったけど、ノーラは怯むことなく立ち向かった。
「だって父さん、最近すごく変だったじゃない!あたしやビリーを避けるように、邪険にしてさ!!」
父さんが大好きなノーラは、つれなくなった父さんの態度に不安で寂しくてたまらなかったのだろう。涙をポロポロ零しながら訴えた。
「……きっと新しい恋人ができたからだろうってビリーと相談して、それで確かめにきたんだよ!」
ぼくの方に目を向けた父さんへ慌てて顔を横に振り、ぼくは無関係だとジェスチャーで示した。ノーラの一人勝手な思い込みによる独断専行は昔からのことだから、ビリーは巻き添えを食ったのだなと察してくれたらしい。父さんは何度か頷いて、深いため息を一つ零すと言った。
「お前たちの疑いを招いて要らぬ騒ぎを起こしたのは、たしかに私が原因なのだろう……心配させて悪かった」
観念した口調で詫びると、決まりの悪い、恥ずかしがるときに見せる片頬を撫でる仕草をしつつ、母さんのアトリエに入るよう手招いた。
「……お前たちが来るまでに完成させたかったのだが……」
父さんのあとに続いてそろそろと中に入る。そこには母さんの作品が昔のままにたくさんあった。けど中央のイーゼルには見たことのない絵が架けられていた。それは…………
「感想を口にするのは禁止だ」
なにか言おうとする前にすかさず父さんから禁令が出され、言われたとおりにぼくは口をつぐんだ。しかしノーラはまったく意に介さなかった。
「なにこれ、変な絵!!」
素直で率直なノーラの言葉に父さんは静かにまぶたを閉じて、与えられた屈辱の試練を堪え忍んでいた。
「じゃあ父さんはずっとこの絵に取り掛かっていたんだね。クリスマスに帰ってくるぼくたちにお披露目するために」
イーゼルに架けられたF30号サイズの油絵。ぼくたち三人は簡易椅子に座ってその絵を鑑賞しながら、父さんのこれまでの不審な行動の理由を明かしてもらった。
「そうだ。執筆や雑事に追われるかたわらの作業だったから、一向にはかどらなくて……ついお前たちとの時間を疎かにしてしまった。反省しているよ」
「こっちこそゴメン……父さんの計画をパーにしてしまった」
殊勝に謝るノーラ。父さんはいいんだと呟いてノーラの頭を優しくなでた。
「絵を描いてみようと思ったのは、またジェニファーと一緒にいられるような気がしたからだ。つかの間でも寂しさを忘れるために。それに描くのならば目標を決めて、それなりの作品に仕上げたいと思って始めただけのこと。計画というほど大層なものではないのだから気にするな」
自嘲の笑みで父さんが答える。母さんの亡き後、気丈に振る舞っていたけど、辛かったんだね。壊滅的に絵が下手で、描くのが好きじゃなかった父さんが、母さんのように油絵に挑戦するほどに。
ぼくたちは四竦みの家族。父さんは文才はあるけど絵の才能は皆無。母さんは絵が得意だけれど料理はてんでだめ。ぼくは料理に自信があるけど、絶望的な音痴。ノーラは絶対音感の持主で歌にも演奏にも長けている。けど、文章力に難あり……なんて具合で。
それにしても、すごい変な絵……自力でゼロから描くのは無理だと考えた父さんは、世に出回っている色んな絵、たとえば名画からとかポスター、絵本やコミックまで幅ひろく、描くものに合致した絵を拾い出して模倣し、組み合わせて描いたようだ。ちぐはぐなところが多々あって、背景のこの部分は印象派を思わせる色使い、けどクリスマスツリーは現代アート的なあっさりした描き方……などなど。絵のテーマは「家族のクリスマス」。そこにはぼくたち三人はもちろん、母さんもちゃんと描かれている。(絵が下手すぎて、誰が誰だか判別つけがたいけど)そのほかに感心したのは、子どもの頃に飼っていたプーリー犬のベンジャミンやフランクリンも一緒に描いてあったことだ。懐かしい、楽しい思い出が溢れ出して心が暖かくなった。
「めちゃくちゃだけど……良い絵だね」
「うん、変な絵だけど、あたしは好き。みんな一緒にいて楽しそうだから」
ぼくたち二人の賞賛の言葉は、父さんのお気には召さなかったようだ。むっつりと拗ねた顔をして黙っている。
「ねえ、ビリーのモデルはクラーク・ケントだよね?なのに隣のあたしはラガディ・アンって、奇抜な取り合わせがまた良い味出してるよ。テーブルのごちそうなんて中世のものだし。不思議な世界、ダリの絵といい勝負かもね」
心の底から感心して話すノーラ。ぼくはもう耐え切れず、思わず吹き出してしまった。でしょ、でしょ?と、ノーラもつられて笑い出す。ひとしきり笑うと、黙っていた父さんが口を開いた。
「……ビリー、ノーラ。お前たちの思慮深さから出た今回の行動にはいたく感謝する」
感情のない口調に、ハッとして父さんの方を振り向く。怒らせてしまった!
「素行を疑われるほどだらしない父親を案じて予定外に早く帰り、私の心臓を縮ませてくれたことや、寝室を引っ掻き回してくれたこと、実に嬉しく思っているよ。そうだ、お前たちが帰ってきたら、ぜひとも二人にお願いしたいことがあったんだが。聞いてもらえないだろうか?」
静かに怒る父さんは不気味で怖い。逆らうことなくノーラとぼくは頷いた。
「もーろびとーこぞーりてーむかーえまーつれー……」
ノーラの妙なるピアノの調べに乗って、ぼくのひどく調子はずれな歌声がファミリールームに響く。
父さんのお願いという名のお仕置きだ。ぼくに苦手な歌を歌わせ、ノーラには悪夢以外の何物でもない、作詞と朗読をさせる。目には目を、笑われたら笑い返す。まったく人の悪い報復だ。ノーラはケラケラ笑いながら演奏し、父さんも顔を真っ赤にして上品に爆笑している。ノーラの番になったら、ぼくも思いっきり笑ってやるからな。
人それぞれ、家族それぞれ、クリスマスの過ごし方はいろいろある。ぼくの家族の今年のクリスマスは、母さんがいなくなって初めて迎えるクリスマスなのに、こんなにはしゃいだスタートになってしまった。クリスマス当日に父さんの絵が完成したら、またひとはしゃぎするかも知れないな。さらに父さんの絵の中では、母さんもベンジャミンもフランクリンも、ぼくたちみんな一緒に楽しく笑って過ごせるんだから、今年はとても素敵なクリスマスになるよね、きっと。
友達や家族と賑やかに過ごしたイブとは対照的で、25日はこころ静かに過ごす。それでいながら、微笑まずにはいられないくらいの豊かな時間が流れて、天使から祝福を受けているかのような気持ちで一日を送る。
実際、私のしていることと云えば、24日におすそ分けしてもらったジンジャークッキーと高級感あるインスタントなコーヒーをリビングのテーブルに置いて、ソファーには座らずに床に敷かれたギャッベに腰を下ろして読書に耽る。
その年の目新しい書物を読むわけではない。
小学一年のときに父親から譲ってもらった47年来の旧知の友と言っても不思議ではない愛読書に目を通す。初めて読破したのは中学になってからなので、かれこれ45回は確実に再読していることになる。
〝飽きもせず〟と我ながら思うこともあるのだけれど、こういう日だからこそ傍において、こころで会話をするかのように頁をめくって読み耽る。そこには私だけの特別感がある。そんなふうにして過ごすことで、クリスマスは特別な日に思えてくるのである。
テーマ/クリスマスの過ごし方
何もかもどうでも良くなっていました。
子どもの頃憧れた仕事に就いて3年。
上司から日々罵声を浴びせられ、大好きだった仕事はただの労働になりました。
自炊をしなくなり、友人と会う機会も減ってゆき、趣味に打ち込む気力を失い、ただ単調に繰り返す、昨日の続き。
仕事帰り、弁当を買いに寄ったスーパー。
仲良く買い物をする親子やカップルを見て、帰っても誰もいない部屋を思い出しました。
帰りたい、けど、帰りたくない。どこにも行き場所がない。
閉店間近のスーパーの駐車場で、ハンドルに凭れ時間を潰してどれほど経ったか。携帯の通知音が鳴りました。
「メリークリスマス。元気にしてますか?」
へんてこな改行と、きらきらと、顔文字。
祖母からのメッセージが光っていました。
今年のクリスマスの過ごし方はゆったりとしている。
恋人の家で湯豆腐を食べて、彼は赤霧島を飲んで私はレモンサワーを飲んで。
お互いに仕事を終えてから合流した。疲れてるけど彼と一緒だからか穏やかに過ごせた。
気を抜いて彼の布団に寝そうになった。
なんとかこうして書いて足掻いてるわけである。
#茶こぼし
「先輩、スゲーっすね。」
私にそんな事を言う後輩は君くらいだ、と思いながら。
何が凄いのか褒められると聞いてみたくなって。
「凄い?どれ?」
「先輩が淹れたお茶は全部美味かったっス。」
「へぇ?」
「会議の時も、この前休憩で一緒になって淹れてくれた時も。同じ味がしました。」
「ほぉ。」
今時、ペットボトルで済ませる所を。
うちの会社は逆にペットボトルの方が高く付くので、急須と湯呑みでお茶を入れる。
人数も少ないからこれで別段困りはしない。
私も緑茶好きだし。
ただ何がそんなに凄いのかピンと来ないな。
「誰が淹れても美味いと思うよ?」
そう言ったけど後輩君は首を振る。
「俺はまた飲むなら先輩の淹れたお茶が良いっス。」
「大袈裟だなぁ。」
そう言えば、最近の子は茶殻入れと言うものを知らないらしい。
灰皿見たいなやつだけど、実際は淹れ終わったお茶っ葉やお茶パック、冷めてしまった残りのお茶なんかを入れたりもする。
一々三角コーナーを見なくて済む、精神衛生上便利なやつだ。
「今度、出掛けませんか。俺と2人で。ぜんざい食いに。」
唐突に日本語が分からなくなった。
可愛い後輩が私と出掛けたい、って言った?今。
「あちっ、!?」
「エッ、大丈夫っスか、冷やして、水っ、氷、氷!」
ポットの給湯ボタンを押した先に、急須がある筈だったが、バカな事に急須の蓋を開け忘れていた。
飛んで掛かったお湯は私の指とシンクを濡らす。
後輩君が大慌てで蛇口を捻り、水に指を突っ込ませると反対の手で冷蔵庫を開けて製氷器に手を突っ込んでいた。
その距離が届くのか。
「手、長いね、」
「長くねぇっス。先輩の指の方が小せえっス。」
「あ、良いよっ、氷ありがとう」
何やらムスッとした顔でハンカチをザッと濡らし鷲掴んだ氷を手早く包むと指を冷やしてくれた。
「20分、測って見に来るんでそれまで冷やしてて下さい。」
「う、うん。分かった。」
手慣れてたな。
凄い。
応急処置も出来るのか。
それより、ぜんざいだ。
和菓子は薄焼き煎餅しか食べまけん、みたいな顔をしてぜんざいが食べたかったのかな。
けど、今まで差し入れで貰った最中とか羊羹とか、かるかんとか食べてなかったよな。
「そろそろ10分経ったかな。」
流石に5分ほども経ってくると流水が勿体無くてボウルを引っ張り出した。
何の時に使ったのかも覚えてないけど、有って良かった。
休憩時間がこれで潰れてしまうな。
けど後輩君が時間を測ってるなら、冷やさない訳にもいかない。
実際、ジンジンと痛む事だし。
午後の仕事の事を考える。
タイピングもそんなに上手くは無いので、指一本負傷したところで特に困り事は無さそうだ。
運転も。
あぁ、もしかしてお風呂とか炊事で痛むのかなぁ。
絆創膏ってあったっけ?
防水のものなんて無かったよなこの会社。
「先輩っ、指どうですか」
「おっ、おかえり。ほんとに測ってたんだっ。」
律儀な後輩君だ。
時計を見ればあと1分で20分経つところだ。
「絆創膏、防水で、これめっちゃ効く奴っス。」
「えっ、丁度欲しかった。凄いねありがとう」
私がモタモタ絆創膏を貼る間、後輩君がすみません、と謝って来た。
そんな事よりぜんざいが好きなのか教えてくれ、と言うと照れ臭そうに横を向いた。
「... ...先輩と出掛けたい、と思ったら。お茶の美味い店が良いかなと思って。そしたら甘味屋さん見つけて、メニューに懐かしいのが載ってて。」
「ぜんざい?」
「いや、それは見れば分かるっス。」
「ぜんざいじゃない?」
「一緒に出掛けてくれたら、分かります、」
仕方が無いので今度の休みに2人で出掛けることにした。
ーーー
「梅ヶ枝餅?」
「地元以外で食べる地元の味はマジで美味いんで。」
「私食べた事ない。」
「これ食ったら他の和菓子食えなくなりますっ。」
そう言えばこの後輩、一時期近所に来ていたキッチンカーのタコスが美味いからと言う理由で、毎回買いに出ていたのを思い出した。
すぐ隣にスーパーが有るのに。
「美味いっスか?」
「うまぁっ」
「でしょっ!」
人並木に雪景色 宝石のような夜の中
遠くで響く鐘の音に こっそりと願いを込め
バラ水晶の夢を見る