今日は、母上が帰ってくる。
母上は、仕事の関係で家になかなか帰れない。
だから、今日は嬉しい。
家族で一番に母上に迎えたくて、玄関の前に立つ。
「若様、冷えますから…こちらを着て下さい。」
執事がコートを渡してくれた。
「ありがとう。」
私はコートを羽織る。
ガチャ
玄関ドアの鍵が開く音がして、玄関ドアが開く。
「母上、おかえりなさい。」
「ただいま、わたしの世界一の宝物!」
ギュッと、抱きしめられる。
頭にキスをされ、もう一度強く抱きしめられる。
其れが嬉しくて、嬉しくて、堪らなかった。
この時を過ぎれば、もう母上を独り占め出来なくなる。
だから、この時を噛み締めた。
可愛い弟たちと可愛い妹たちに母上を譲れるように。
「母上、大好きだよ。」
「わたしも、大好きよ。」
そして、最後にもう一度だけ母上を強く抱きしめた。
12/25/2023, 12:41:14 PM