『これからも、ずっと』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
体調が悪い時はネガティブな言葉ばかり考えてる。
いや、体調が悪いわけでもないのかも。
この胃痛の正体はストレスだから。
また長い時間をだた拘束されるだけの時間。
誰か助けて、全然つまらん、勉強にもならない。
ただ貴重な時間を無駄にしてる感じ、休みとして休めないこの無駄な待機時間。
合わない。心の底から帰りたいって思った。
やることないなら、帰してくれ。そう思った。
連絡がほしいな。と思っていたところで。
連絡が来ると、ホッとする。
知らない人間ばかりのアウェーな空間に置き去りにされた気分だったから。
何気ない連絡が嬉しかった。
ありがとう!本当にこれは今の私には染みる。
心配してくれる声や、帰ってくれるのを待ってくれる
言葉が嬉しかった。
私もその親友や仲間がそうなった時、手を差し伸べたい。
そんな持ちつ持たれつの関係でいたい。
これからもずっと。
感謝してます。
これからも、ずっと…
安心と不安が一緒に訪れる
君の背中に負われ逃げれば
コニカラーで
写そ!
違うわ~ってかあε=(ノ・∀・)ツ
お題は👉️これからもずっと👈️
じゃあ~ってかあε=(ノ・∀・)ツ
※少しホラー要素が混じっております。
「桃(もも)達は一生友達だよね!」
「と、そうだね」
友達?聞こうとしてやめた。どうやら桃ちゃんは私の事を友達だと思っていたらしい。
「じゃあずぅーっと一緒にいようね」
「………」
「桃ー!」
「……ママ来ちゃった」
「うん」
「なんでさっき答えなかったの?一緒いたくないの?なんで?ねぇ、答えてよ!」
「そうだねって言おうとしてた」
「…そっか!」
「ほら、桃、帰るよ」
「…えりかちゃんは?さっき、ずぅーと一緒にいるって約束したの」
「えっとね桃、えりかちゃんにもお母さんとかがいるんだよ、だからずっと一緒にいる事は無理なの」
「やだやだやだ!!一緒にいるって約束したもん!!!」
「……ごめんね、えりかちゃん。こんな子だけどこの先も仲良くしてくれる?」
「はい」
「えりかー」
「私もお母さんが来たので…さようなら」
「ほら、桃、さようならって言いなさい」
「…………………」
「拗ねちゃったみたい、本当にごめんなさいね」
「いえ、じゃあ」
『〜で、跳ねたあと逃走したと言うことです』
テレビから聞こえてくる無機質な声で目が覚めた。
「えりか…桃ちゃんが…」
「うん、見たら分かる」
「………桃ちゃん……」
「お母さん、泣いてるの?」
「……」
「えりかちゃん」
後ろから桃ちゃんの声がした。
「桃ちゃん?」
「うん!これで一生一緒にいられるね」
クスクスと笑う声が聞こえる。
「えりかちゃん、嬉しいよね」
「……嬉し…く」
「嬉しいよね?」
「………嬉しい…よ…」
「桃もね、嬉しい!」
「…そっか、良かった」
「もう一生どこにも行かないでここで過ごそうね!えりかちゃんは桃だけの友達だから」
「桃、ちゃん、それは」
「ん?」
「……分かった」
「嬉しい!」
「じゃあ本当に」
桃ちゃんの足や腕がボキボキとおぞましい音をたてながらあり得ない方向に曲がっていく。
「ふだぃ゙だげだねぇ゙?」
体中から血が吹き出してきた。
「ぅ゙ぇ゙じぃ゙なー」
私はこれからも桃ちゃんと死ぬまで一緒にいることになったみたいだ。
一生一緒に…。
ーこれからも、ずっとー
これからも、ずっと
これからもずっと、続くって思ってたけど
人の気持ちなんて変わるものなんだと改めて
感じた。
そこまで真剣に考えてたら
裏切られたときダメージをくらってしまう。
平和な日常に刺激を求めて、ちょっぴり寄り道したり
見知らぬ道を見つけたり、誰かとお話をして
犬や猫で癒されて、世界はそうして巡っている。
何も変わらない日常にちょっと行動を変えるだけで
世界が違って見えてくる。
この変わらない日常に
この変わらない世界に
これからも、ずっと。
これからも、ずっと。
何かそう願うことは少ない。好きなアーティストもいつかは曲を作らなくなる。私が会いたいあの人の人生にも終わりが来る。
だから、今日を大切に生きようとは思えないけど。
私はずっとあの人が好き。
これからも、ずっと
これからも、ずっと貴方の側に居たいけれど ごめんね どうしたって私は貴方を
置いて行く運命(さだめ)私と貴方の
距離は近い様で遠い
でもこれだけは約束できる
いつか貴方を見つけて会いに行くから
その時に私を見つけてくれると嬉しいな
だからその時まで....待ってて....
《これからもずっと》
重たい言葉
機械さえ壊れ寿命が来る
星もいつかは宇宙の塵に還る
永遠の命など無いのだから
ずっとは 希望だ
希望を持って生きることに意味が有る
あなたとなら一生一緒にいられる
これからもずっとずっとずっと一緒
詩『親孝行』
(裏テーマ・これからも、ずっと)
私は、これからも、ずっと。
そう、見慣れた部屋で時を過ごし、
老いて、死ぬ。
引きこもり?を始めたときに、
覚悟はしていた。
人生を捨てたのだ。
心臓は動いているが、
自殺したのだ。
これからも、ずっと、
親に迷惑をかけて心配もされるだろう。
生きていることだけが、
親孝行だから。
世間的には無能で無駄な、
生ゴミたろう。
親孝行が終わったら、
とっとと始末する。
まるで「ごめんね」と言うように、
その時はヒゲくらい剃って。
「あなたがいないと生きていけない」と言われた時、嫌悪感は二番目に訪れた。
一番目は、もはや言うまでもなく。
私は死ぬまでお前のものかと考えると、ひどく気落ちする。
お題:これからも、ずっと
これからもずっと
友達でいようねって
君が言うから
この気持ちは秘密にしなくちゃ
これからも、ずっと
これからもずっと、私は私でいたい
出来ないことも足りないことも含めて、自分の価値観を信じて生きたい
[これからも、ずっと]
これからも、ずっと生きていく。
辛くても、苦しくても、死にたいと思っても。
生きていく。
その辛さを乗り越えなければならない。
生きていくために。幸せになるために。
大好きな歌手【hiKari】がこの世を去ってから、もう10年近く経つ。
彼女が生涯でリリースしたのは、たった12曲。
私はどれも大好きだが特別目立った曲などは無く、カラオケで配信されているのは1曲のみ。
17年間生きてきて、未だにhiKariのファンだという人には出会えていない。
入れ替わり立ち替わり生き死にを繰り返すこの世界で、彼女を知っている人にすらもう出会うことは出来ないのではないか。
そうして肩を落としていた午後6時。
私以外誰もいない教室に、どこからかよく知る歌が聞こえてきた。
透き通った綺麗な声に、胸に突き刺さるくらい切ない感情が伝わってくる。
「hiKariの『夕焼けの色』…?」
曲名を呟き、歌声に導かれるように教室を飛び出した。
声の主は案外早くに見つかった。
2つ先の教室で歌っていたらしい。
そして今、興奮気味の私が彼女に名前を聞くところだ。
「あ、あなたの名前は…⁉︎」
「私は2年3組のキノシタ マナ。あなたは?」
「あ、わっ私は1組の…ハセガワ コユキ」
自分から突撃したのに、あまりにも冷静すぎる彼女を前にたじろいでしまう。
だけど私達にはhiKariという共通点がある。
お互いに“キノシタさん”、“ハセガワさん”の堅苦しい呼び方から“マナ”、“コユキ”に変わるまで時間はかからなかった。
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「じゃあマナはお母さんの影響でhiKariが好きになったんだ?」
「そうだよ、ずっと家で聴いてたから。特に『夕焼けの色』は1番耳に馴染んでる」
「私も!私もその曲が1番好きなんだ。私は家族にhiKariを好きな人は居ないけど…マナは今もお母さんと一緒に聴いてるの?」
「ううん、ママはもう何年も前に亡くなってるから。でも今も1番好きな歌手だよ」
「そ、そうなんだ…。あ、私もね、大好きすぎてピアノで弾けるようになりたいから密かに練習してるんだ」
聞かない方が良かったかな…と思いながら慌てて話を逸らした私の言葉に、マナは目を輝かせてこう言った。
「コユキ、ピアノ弾けるの?だったら私と一緒に文化祭出ない?
コユキがピアノを弾いて、私が歌う。どうかな?」
「いいよ!さっき聴こえてきたマナの歌声、hiKariと似てるわけじゃないのに…なんて言えばいいんだろ、なんかこう…胸にグッとくる歌い方がhiKariに似てた」
と、ここまで言って自分の言動を悔やみ、慌てて訂正する。
「ごめん違う!マナの歌声にhiKariの影を見てるわけじゃないんだ。マナにはマナの良さがあって…だから、つまり……」
「あっはっは!いいよ、そんなに慌てなくても。コユキが言いたいことは何となくわかったから。ありがとね」
その後私達は連絡先を交換し、その日を境に頻繁に会うようになった。
放課後は先生に許可を取り、音楽室を貸し切って練習する毎日。
約2ヶ月かけて私のピアノの技術がマナの歌声に追いついてきた頃、いよいよ文化祭の幕が上がろうとしていた。
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「ねぇコユキ、今日パパが見に来てるの。うちの高校、1日目だけは一般開放してるでしょ?だから見に来てよって誘ったんだけど、良かったら一緒に声掛けに行かない?」
「もちろん行こ行こ!マナのお父さんって、どんな感じの人?」
「普通にそこら辺にいるおじさんだよ。会えばわかるって」
マナに手を引かれるがまま向かった先には、若い男性が1人。
こちらに気付いたようで片手を上げ笑顔で話しかけてきた。
「やぁ、マナ。彼女がいつも話しているお友達だね。コユキちゃん、だったかな?マナがいつもお世話になってます」
「えっ、あ、はい、いえ…。あ、あの、マナちゃんのお父さん、ですか」
「そうだよ。僕がマナの父です。そんなに堅苦しくしなくて大丈夫だからね」
「……はい」
突然話しかけられて固まってしまった私に変わり、マナが間に入る。
「パパ、コユキがピアノ弾いてくれるんだよ。曲は『夕焼けの色』。パパもこの曲が1番好きでしょ?楽しみにしててね」
「あぁ、とても楽しみだ。初めてだね。“サヤカ”の歌を外で歌うのは。おっと、hiKariだったね」
………ん?
「あ、そっか、コユキには言ってなかったね。hiKariって、私のママなんだ。本名はサヤカ」
えええええええええええ⁉︎
声にならない声が脳内で響き渡る。
え、ということは…
「え、じゃあ家で聴いてたっていうのはもしかして…な、生歌を…⁉︎」
「あ、突っ込むところそこなんだ。そうだよ、毎日家で聴いてた。目の前で歌ってくれたから。MVに出てるhiKari、いつも椅子に座ってたでしょ?ママ、学生の頃に事故で両足麻痺してるから」
「あ、だからメディアには1度も出てこなかったのか…。色々聞きたいことはあるけど、でも生歌聴けるって羨ましい気持ちが勝っちゃって…!えええ、ええ…」
もう言葉にもならない。
驚きを隠せない。
そんな私を見て笑う2人は、なんだかすごく楽しそうだ。
最初はただ、マナのお父さんが若くてかっこよくて、おじさんとは程遠いじゃん…なんて思って驚いていたのに。
まさかこんなにも大きな爆弾を抱えていたとは。
でも、マナを見れば見るほど思うことがある。
「hiKariによく似てるね。笑った顔」
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マナのお父さんとの挨拶を済ませ、私達はステージ裏で待機していた。
いよいよ次は私達の番だ。
「それでは登場していただきましょう!曲目はhiKariの『夕焼けの色』です」
司会者の言葉を合図に、ステージへ上がる。
マナと目配せをし、静かになった体育館にピアノの音を響かせる。
まさかマナのお母さんがhiKariだったなんて。
正直驚いたが、同時にマナの中にhiKariが生きているのだと知れて嬉しい気持ちもある。
人が1番最初に忘れるとされている声が、唯一彼女を現世に留まらせているものだと、そう思っていた。
だけどその“声”があったからこそ、私はマナと出会うことが出来たんだ。
その事実は、これからも変わらない。
もしかしたら今この場には、私達以外hiKariを知っている人はいないかもしれない。
でもそれでいい。
マナの歌声と、私の演奏でこの会場にいる全ての人に“hiKari”を知らしめてやろう。
きっと今、私達の想いはひとつだ。
これからも、ずっと 君といれる気がしてた、
2人で遠くの星に行って 2人で寝る そして起きる
でも神様はそんなに優しくないみたい
2人を簡単に引き裂いてしまう
そして私に呟くの、「ずっとなんてないのよ」
あぁ、そんなのとっくの昔から知ってる
でも知らないフリをしたかった、忘れていたかった。
これからも、ずっと忘れていたかった。
探し物はなんですか
心の声はちいさくて
気づいてもらえない
目の前にあるものに
人は忙しくしている
気づいてほしいんだ
分かってほしいんだ
心に色はありますか
嘘をついてませんか
諦めてはいませんか
心の声をきいてみて
言い訳もきいてみて
きっと、みえてくる
『これからも、ずっと』
頭が痛い。
体が冷たい。
遠くで誰かが叫んでいる。
ぼやける目に映るは一面の赤。
水道管が破裂して
水浸しになったコンクリートが熱を奪う。
死ぬのかな、と思った。
死ねなそうだな、とも思った。
すごく眠かったので寝た。
目が覚めた。常夜灯だけが照らす部屋。暗い。
視界の端に点滴の管が見える。5パックたぁ豪勢な。
心電図のやつ地味に痒いな。
そこ迄考えて、ア、死に損なったんだな、と理解した。
ので、ナースコールを押した。
バタバタと走ってくる足音。
名前を聞かれて呼ばれて、
何か色々確認されている。
諸々が終わった時にはもう朝だった。
眠いな。と眠りながら思う。
左手が暖かい。
うっすらと目を開けると、
祈るように両手で比較的無事な左手を握りしめながら
俯く君がいた。座ったまま寝てんなこれ。
泣いた跡がある。
ちょっと可哀想なことをしてしまったかもしれない、
と思った。
でもこの身はなんだか分からないけど
死のうとしても死ねなそうなくらい頑丈だし、
これ迄と同じようにこれからも
死に損ない続けると思うので、
いい加減慣れてくれないかなぁとも思う。
そういえば前にこれを友人に言ったら
すごいドン引きされたのだった。
その後色々言われたけど、結局よくわからなかった。
ので、昔からよく言われるし、恐らく何かしらが
「普通じゃない」事だったんだろうと理解したんだけど、
もしかしたら違うのかな。今度聞いてみよ。
「そんなんじゃいつか愛想尽かされるぞお前……」
そんなことも言ってたっけ?
おかしいの。
自分のものに愛想つかされるも何も無いじゃんね。
ずっと一緒だったんだから、
これからもずっと一緒なのは当然の事では……?
でも普通の人からすると違うみたいなので、
家族にでもなっておけば大丈夫でしょ。
なんか知らんけど家族だと別になるみたいだし。
ほんと変な人たちだよね、普通の人?って。
起きないな、こいつ。
思いついたらすぐやりたいんだけどな。
手がぬくいから、起こすか悩む。
結局ぬくぬくが勝った。
もう一緒に住んでるんだし、
起きたら養子縁組でもしよ。うん、それがいい。
「これからも、ずっと」
『これからも、ずっと』
それは、お昼ご飯を食べ終えた私が休憩室の時計を眺めながらぼんやりしていた時のことだった。
「畑野さんって、音楽やってたんですか?」
「え!?」と咄嗟に振り返ると、同僚の斎藤さんが後ろに立っていた。肩までの茶髪を傾けた彼女がこっちを見る。
「えっと……どうしてですか?」
「いやぁそれ、ちょくちょく見かけるなと思って」
斎藤さんが机の上に置かれた私の両手に視線を移した。
何を言ってるのか分からないといった表情をした私に、彼女が続ける。
「それって、ピアノでこの曲弾いてるんですよね? 私はちっちゃい頃にほんの少し習ってた程度なので詳しくないですけど、畑野さんってもしかしてピアノすごくお上手なんじゃないですか?」
私はハッとした。
私が事務として勤めるこの整骨院では、BGMにクラシックのCDを流している。仕事中は業務に集中しているためおそらくこんなことはしてないはずだが、気が抜けている休憩中には曲に合わせて勝手に指が動いていたらしい。それもおそらく今日が初めてではなく、度々。
「そんなそんな。私も昔ピアノやってだけです。今はもう全然弾いてないですし。今のも無意識でした。すみません」
申し訳ない気持ちといたたまれない気持ちで頭を下げる。
「何で謝るんですか。すごいことじゃないですか。私なんて指が動くどころかこの曲の名前すら覚えてないんですよ。ピアノ習わせてくれた親には申し訳ないくらいです」
斎藤さんはそう言って苦笑いを浮かべた。
そこに、「何の話?」と院長が休憩室に入ってきた。
「畑野さんが昔、ピアノを習ってたって話ですよー」
斎藤さんが答える。「そうなの?」と興味を示す視線が私の方に飛んでくる。
そんな状況から今すぐにでも逃げ出したくてたまらない私の頭に、思い出したくない記憶が蘇ってきた。
「──ダメだった……」
そう両親に告げたあの日、私はピアノをやめた。高校3年生の夏休みのことだ。
3歳からピアノを習い始めた私は、すぐに音楽に夢中になった。毎日何時間もピアノの前に座り、友達と遊ぶよりピアノを弾いてる時間の方がずっと長い幼少期を過ごした。
だんだんと上達する自分が誇らしくて、家族やうちを訪れた人々には積極的に演奏を披露した。あの頃の私は、みんなに褒めてもらえるのがたまらなく嬉しかったのだ。
小さい頃の私はピアノのことがとにかく大好きで、その分上達も早かった。小学校低学年の時に初めて参加したコンクールでも賞をとったし、それからも小さな大会ばかりとはいえ、コンクール上位の常連組の一人となった。そして、将来の夢もピアニストになった。
ただ、そんな日は長く続かない。
歳を重ねるごとになかなか思うように上達しなくなり、中学生の頃には音楽を楽しめなくなっていた。成長しないから楽しくないのか、楽しめないから成長しないのか。
ただはっきりしていたことは、自分は今全然楽しくないということだった。
それでもこれまで続けてきたピアノを辞めてしまう勇気はなく、高校に入ってもピアノは続けた。
「お前の音を聴いていても楽しくない」
中学から指導を受けていた先生にそう言われた時、私は怒りや悲しみというより、妙に納得した気持ちになった。そりゃそうだろう、だってこっちも楽しくないんだから、と。
「このコンクールで賞とれなかったら、ピアノ辞める」
高3になってすぐ、私はそう宣言した。
学業をおろそかにしてまでも、私は最後の意地で練習に励んだ。結果次第では、今までの人生がすべて無駄になるような気がした。怖かった。
そんな恐怖と不安に追い立てられるように、私は毎日ピアノに向き合った。
これで最後だと決めたコンクール、私の結果は惨敗だった。
その時、糸が切れた音がした。胸の中でぷつりと。
次の日から、私は目標を受験勉強に切り替えた。すべての感情を取り払うように、私は無心で手を動かして受験勉強に励んだ。
あれから私は、音楽から距離を置いて生きてきた。
大学でも就職してからも、何かを演奏することはもちろん音楽を聴くことすらほとんどない。
ただ、街中で知っている曲が流れて来ると、無意識に耳がそれを追ってしまう。頭の中に、昔何度も練習した譜面が自然と思い浮かんでくる。その思考を止めることはできなかった。
「──ねぇ畑野さん。もし良かったらお願いできないかな」
顔を上げると、2人がこちらに注目していた。
「えっと……」
一体何の話だろうかと、頭の上に疑問符が浮かぶ。
「来月やる開業10周年記念の音楽会で、畑野さんも何か演奏してくれないかな」
「えっ!?」
あまりの驚きに声が裏返る。
「小さな集まりの予定なんだけど、僕の下手くそなバイオリンだけじゃ来てくれる人に申し訳なくってさ」
「でも、私もう何年もピアノ触ってないんです。なのに人前で弾くだなんてとても……」
「そっか。そうだよね……でも残念だな」
これで何とか断れそうだと思った矢先、斎藤さんが口を開いた。
「じゃあ練習しましょうよ!」
「──え!?」
「だって、今でもあれだけ指が動くんですもん! 1ヶ月練習すればきっと弾けるようになりますよ!」
なぜか自信満々な彼女がこちらを見た。私は必死に断る理由を探す。
だが、私がそれを見つける前に院長が笑顔を作った。
「そうなの? じゃあぜひ弾いてよ。畑野さんのピアノ、楽しみだな」
院長のその言葉でどうにも断ることができなくなった私は、途端に心の中に不安が襲ってきて、音を立てないように深くその場に息を吐いた。
本番当日。音楽会用に飾り付けた院内に、いつも通ってくれる患者さんや職員の家族が十数人ほど集まった。
始めて1年ちょっとだという院長のバイオリンの演奏に盛大な拍手が送られたあと、私の出番がやってきた。
院長がどこからか手配してきたアップライトピアノに手を乗せる。
あのコンクール以来、初めて人前で演奏する。胸が破れそうなくらいに強く鼓動を打つ。
小さく息を吸って鍵盤を押す。
練習して分かったことだが、曲を覚えていたのは頭ではなく何度も練習したこの指先の方だった。今もこうして緊張で真っ白になった頭に変わって、指先が自然とメロディを奏でていく。体に染み込んだメロディが弦を伝って、空気を振動させる。
それは懐かしい感情だった。楽しい。音楽って楽しいんだ。
そうやって心が弾むと同時に音が弾んだ。
そんな感情で胸がいっぱいになっていた私にとって、それは本当にあっという間だった。
椅子から立ち上がり後ろを振り返ると、その場の観客たちの拍手が私を包み込んだ。院長や斎藤さんをはじめとする同僚たち、患者さんや今日初めましての人でさえも私の方にこぼれんばかりの笑顔を向けていた。
その光景を、滲んでいく自分の目の中にしっかりと焼き付ける。そしてその感情を、私は心の中にしっかりと刻み込んだ。
きっと私は、この数年の間も決して音楽を嫌いにはなれなかった。むしろ嫌いになろうとしても、私は音楽の側からずっと離れられなかった。
なぜなら、私が音楽に出会ったあの時から、音楽は私のこの中にずっとあったから。
そして──これからもずっと、私の中にあり続ける。