『この世界は』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
この世界は
この世界は、悲しくて尊い。
私はこの家に100年以上棲みついている日本人形。
小さなこどもには、私が動けることがわかるみたいで
遊び相手になったり、1人遊びを見守っていた。
でも、みんな大人になったら旅立ってしまう。
こどもの成長は嬉しくもあるけど
いつも見送ってばかりなのは
拭えない寂しさがあった。
『ねえねえ、しょうらいのゆめってなに?』
『わたしはパンやさんになりたい!』
『コックになってりょうりつくる!』
『ぼくはサッカーせんしゅ!』
『あたしはおいしゃさんかな』
『いすずちゃんは?」
『えっ……と』
『ないの?しょうらいのゆめ』
『あ……ほ、ほいくし……とか、かな?』
『ほいくしかぁ。わたしはね、じぶんだけのおみせをひらきたいんだー』
……
〝将来の夢〟なんて。
小さい頃はいくらでも思い浮かべられる。
いつからだろうな。
自分の未来の姿をうまく想像できなくて。
「将来の夢は?」
そう聞かれるたびに適当に返していた。
あるときはお花屋さん。
あるときは保育士。
あるときは学校の先生。
夢があるみんなが羨ましかった。
「五十鈴?どうしたの?」
「っ……な、なんでもないよ」
「……五十鈴」
「なに?」
「悩みがあるなら、いつでも相談していいからね」
「……うん」
眩しい。
私だけ、取り残されているような感覚。
大人になれば見つかるよって
親は言うけど。
このままやりたいことも、夢も、見つけることができなかったのなら、私はどうすればいいんだろう。
ふとした瞬間に見つかるものなんだろうか。
「五十鈴、行くよ」
「あ、うん……」
またひとつ、ため息が出る。
#6
#夢
この世界は「生きにくい」と思う時がある。
この世界は「信用できない」と思う時がある。
正直者が馬鹿をみて、嘘つきが潤う。
正義の味方がいつも勝つわけではない。
この世界はそんなもんなんだと思いながら、僕はどんどん鈍くなる。
それでも、今日を生きていくのが困難な人を救うために動く人たちがいること知る時、まんざら悪くないかなと思ったりもする。
この世界は。
人生が苦しい。
悲しくて仕方ないのに、理由なんてこれっぽっちもない。それがまた哀れで悔しくなる。
けれど、そんな風に考えるから苦しくなるのだと幸福の最中から諭される。
何か出来る事が誇らしいように、何もできない事が情けないと感じる事は卑屈なのだろうか。
この世界は無知で保たれる幸福に囲われている。
「この世界はわしが知らんことがよけある。ほんじゃあきに、おまさんと一緒に知りたいんじゃ」
真っ直ぐに見つめられ、指を絡められた。熱く滾る好奇心を包むその目は、夜の闇の中でよく映えていた。
「……うん」
私もこの世界のことを知らない。
死んでしまったはずなのに、まだ心臓は鼓動を打ち鳴らし、脳は常に思考を走らせる。
握られた手が温かい。長くて少し硬い指をしている。骨が太くて、武器を扱う人のそれだ。
「わしはおまさんに選ばれて幸せちや。ここじゃない、また別の世界を知ることもできるき」
苦い顔をしているだろう。口元は隠しているが、眉や目に感情が出やすい身では意味を成さない。
それに、私はテラの大地が怖くて仕方ないから。
「大丈夫か?わしがそばにおるき……」
彼の指が、そっと目元を拭う。
いつの間にか泣いていたらしい。
「ありがと」
頬に添えられた手を包み込む。
そこには仄暗い感情はなくて、季節外れな温かみを感じた。
「潰えた夢の続きを」
(※刀剣乱舞×アークナイツ)
2024/01/16
この世界は
あらゆるものが存在するこの世界は、
広く深く、混沌としていて目が眩む。
大きな世界には、
私は砂より小さな命だろうけど、
それでもこの世界の片隅で息をしている。
ただ一度だけ。
#148
ドッペルゲンガーというものがある。
二回見ると死ぬと言われる超常現象で、通常であればまず出会うことすらない。
そのはずの存在だったが、青年の前に姿を現すのはこれで二度目だった。
一度目は大学の帰りに見かけただけだった。ソイツは何やらきょろきょろと辺りを見回していたと思うと、こちらを見てニヤリと笑った。あまりに不気味なので気のせいだと思い込もうとしたが、翌日女友達に行ったはずのない場所で見かけたと言われ、背筋が凍る思いをした。
そして今、目の前にソイツがいる。
安物ブランドでどうにかこうにか見繕った全身のコーデに、ちょっと無理してデパートまで買いに行ったコート。梳かしてワックスで軽く固めた髪に、右頬のほくろ。
似ている、どころではない。つま先から頭のてっぺん、癖のついた髪の毛先に至るまで、瓜二つだ。
青年は後ずさった。
ドッペルゲンガーを信じているわけではないが、目の前の男は気味が悪かった。
ニタリ、とドッペルゲンガーが嗤う。
「ヒッ」
小さな声が漏れた。
捕食者の笑みだ。理屈ではなく、直感した。
脇目も振らず、振り向いて逃げ出した。ここにいてはいけない。絶対的な死の予感が青年を駆り立てた。
道ゆく人々が怪訝な顔で振り返る。群衆の中から知り合いの声が聞こえた気がしたが、振り返って確かめる余裕はなかった。
大学のトイレに駆け込み、個室の鍵をかける。少しは時間を稼げるはずだ。
震える手でスマホを取り出し、SNSを開いてフォロー中一覧をスクロールする。友人は多いが、こんな荒唐無稽な話をまともに取り合ってくれる相手がいるだろうか。
考える時間ももどかしくパッと目についた相手に通話をかける。
コール音を聞きながら額の汗を拭う。息をついて顔を上げ──、
──ひゅ、と息が止まった。
あるはずのない顔がそこにある。
便座の蓋の上にしゃがみ込み、頬杖をついて、ドッペルゲンガーがニコニコと彼を見ていた。
コール音が止み、相手が応答した気配があったが、もはや気にしている余裕はない。
巨大な手が伸びてきて顔を鷲掴みにされる。避ける場所はどこにもなかった。
手が触れたところから皮膚が砂のように溶けていく。
数秒もしないうちに青年だったものは消えてなくなり、スマホだけが派手な音を立てて床を転がった。
「──い、おい大丈夫か? なんかすげー音したけど」
ドッペルゲンガーは緩慢な動作で便座の蓋から降り、青年のものだったスマホを拾い上げた。
「──悪い、ポケットの中で勝手にスマホが反応しちゃったみたいでさ。今便器に落としそうになって焦ったわ」
「んだよ便所かよ。もうすぐ講義始まるぞ」
「わかってるって。すぐ行く」
何食わぬ顔で通話を切り、表示されたSNSのタイムラインを眺めた。そこには青年がせっせと投稿していた友人との写真や自撮りが大量にアップされている。
「この世界は広すぎると思って、探すのも諦めてたけど。なんだ、案外狭いもんじゃないか」
場所のヒントはたくさんあったから、ネットで自分のオリジナルを見つけてしまえば、特定は容易だった。
「ありがとね、たくさんアップしてくれて。お陰で──俺がホンモノになれる」
もう一度、ニタリと笑って。手で頬に触れて青年が決してしないだろうその表情を直し、ドッペルゲンガーは何食わぬ顔でトイレを出た。
青年が消えた証拠は──いや事実は、どこにもない。
(お題:この世界は)
この世界は慈愛で満ちていたって
全て奪われたあの娘には
きっと与えられない
この世界は友情で満ちていたって
ネジの外れたあいつには
きっと与えられない
この世界は恋情で満ちていたって
傷をつけられた少女には
きっと与えられない
この世界が美麗で満ちていたって
腐りきった僕の目には
腐ったものしか映らない
この世界は
この世界は、複雑で、めんどくさくて、ときどき辞めたくなることもあるけど、それでも、愛おしくてたまらない。
「すいません、白状します。この世界は夢なんです」
突然隣に座っていたフサ男が何事かを言い始めた。
体毛がすごくてフサフサしてるから、フサ男。
毎回とんでもないことをしでかす男だが、今度は何をする気だ?
興味がわいたので話題に乗っかってみる。
「夢って、誰の?」
「マンモスの夢です」
「マンモスの夢?」
思わず言葉を繰り返す。
マンモスときましたか。
「マンモスが氷河の中で氷漬けになっていて、ずっとコールドスリープみたいな形で寝ていたのです。
ですが、最近気温が上がって氷も解けて、覚醒し始めてるんです」
ふーん、突拍子もないけど、暇つぶしの茶番に使える位程度には筋が通ってる。
これからどう話を転がすのだろうか?
「マンモスが起きたらどうなるの?」
「全部無かったことになります」
フサ男はとんでもないことを言い出した。
「茶番にしては、設定が怖すぎる」
「茶番ではありません。これを見てください」
フサ男はテレビを点ける。
テレビではお笑い番組をやっていたが、すぐに切り替わり会見の様子が映し出される。
なにかの緊急会見らしい。
その会見席の真ん中で偉そうに座っている男性がしゃべり始める。
「皆様、ここにお集まりいただきありがとうございます。
日本が誇る研究機関が重大な発見をしましたので、ご報告させていただきます」
思い出した。
なんとかっていう総理大臣だ。
「この世界は、誰かの夢だと言事が判明しました」
総理の発言に耳を疑う。
フサ男の言っていた通りじゃないか!
「皆さん信じられないのも無理はありません。
のちほど証拠はお見せします。
ですが、まず最初に伝えたいことは、我々は諦めておりませせん」
会場からおおーという歓声が起こる。
当然だ。
誰も消えてなくなりたくはない。
みんなこの世界が好きなのだ。
「我々は対策のための組織を作ることに決定しました。
そういうわけで増税いたします」
またも耳を疑う。
今、なんて言った?
「総理、増税とはどういうことですか!?」
会見に来ていた記者が質問の形で抗議をあげる。
ナイス記者!
「対策には必要なことで――」
「そう言って前も増税しましたよね。
しかも無駄遣いして!」
「お仲間が脱税した分を使えばいいでしょう!!」
「本当は嘘で、税金上げたいだけではないんですか!!」
「違います。本当に、夢で――」
「金の亡者どもめ!」
会見は紛糾していた。
物が飛び交い、記者が詰め寄ろうとして、警備員がそれを阻止しようとする。
外からも入り込もうとする人間がいる事も、テレビからの様子で分かった。
もはや暴動だった。
これが自分たちの愛した世界だというのか……
「この世界は本当に夢なの?」
テレビを見ながら、フサ男に尋ねる。
「そうだよ」
「そっか。
でも、さすがに夢が無さすぎる」
「ゴメン」
フサ男は、心の底から申し訳なさそうに謝ってくる。
「なんで謝るのさ。ていうか、なんで分かったの?」
「ああ、それはね。明晰夢というか、僕がそのマンモスなんだよね」
だよねーwそーですよねーw
まあ、うん
前の人が愛情表現が重かったんだよ
だから、今の彼女を見て
不安になるだけだよ
ほんとに苦手な人は
苦手なんだから
強要しちゃだめだよ
【んふふ】
もうむりしんどい
不安でしょうがない
違う。
愛して欲しいって見返り求めちゃう
今度はこっち側か、w
この世界は
この世界に○○がなかったらどうなるんだろう、と
考える時がある。その○○が 「お金」 の場合はどうなるのだろうか。今いきなりお金が廃止されたら、この世界は大混乱に陥るだろうな。でも、大昔はお金がなくても暮らしていたんだよな。そっちの方が平和かもね。じゃあこの世に、 「感情」 がなかったらどうなるんだろう。みんな感情がないんだから、
もう辛いことも悲しいこともないね。でも、感情がなかったら楽しいことも、嬉しいことも分からないな。それだと、人生はつまらないな。
嫌なことがたくさんあるこの世界だからこそ、いい思い出が輝くんだろうね。
この世界は
知れば知るほど醜く残酷で
声の大きい人だけが幸せを掴み
そうでないものは我慢を強いられる
弱肉強食
私のような弱者は、このような世界では生きていけるはずもないんだ
この世界は
まだまだ平和とは程遠いみたい。
事件だって沢山起きてるし、戦争だって起こってる。建物で土地が埋められて、動物達の生きる場所だって無くなってる。
でも、朝の日の出や夜の夜空はとても綺麗で…、舞い落ちる花びらや雪はやさしい。山へ登れば澄んだ空気を感じる。植物は繊細なようで、強い芯を持ってる。
この世界は、まだまだ生きている。
見上げた宙の広さが
心の内側にもあって
あの無数の星の煌めきが
わたしにもあるとあなたが言う
信じられないよ
となりの星は青く見える
沈んだ海の深さが
わたしの日々にもあって
だれも来れやしないと
零した底であなたと会った
信じられるよ
となりに座ったあなたが言うなら
わたしは
いつか見つけるだろうか
宇宙飛行士みたいに
自分を眺めて
なんだ、わたしにもあったんだって
「わたしの星は青かった」って
ああ今、わたしの内側に浮かぶ
小さな地球がきらりと光って
笑ったような気がした
涙も海も全部かかえて
青く光る星はとても
美しかった
「この世界は」
え、 進撃ですか?
共感者求む
#14 【この世界は 】
すべてが私の主観で出来ているの
私が私の世界を決めていい
なのにいつも自分が
世界から排除されているかのような
そんな心地で過ごしているの
私の世界で、私は
小さな天幕の中紡がれる物語は
とても退屈でとても即物的
#この世界は
Theme:この世界は
この世界は冷たい荒野だ。限られた資源を巡って争わなければ生きていけない。
だから人間は少しでも生存に有利になるためにコミュニティという名の徒党を組む。
しかし、二人の人間がいたらそこには必ず上下関係が存在するように、そんな『コミュニティ』の中ですら人間は自分の利益を最優先する。
裏切り、掌を返すのは当たり前。ときには、適当な理由でスケープゴートを作り出し『正義』の元に徹底的に痛め付けることさえある。保身や娯楽のためにね。
わざわざそんな本を読まなくたって、ちょっと顔を上げれば実例がたくさんあるじゃないか。
『ディストピア論』という本を読んでいたときに、友人をそんなことを言いながら本を取り上げた。
ディストピアをテーマにしたSF小説を書いてみようと思って、参考になりそうな本を読んでいた矢先だった。彼は本の目次を眺めながら冷笑を浮かべている。
おかげで読んでいたページが分からなくなってしまった。私は苦笑いを浮かべる。
彼のペシミズムは、幼少期から続くこれまでの人生経験から来る根の深いものだと私は知っている。彼を論破することはできないだろう。わざわざ論破する必要もないが。
代わりにひとつ質問をしてみることにした。
「じゃあ、あなたのユートピアはどこにあるの?」
彼は少し考えてから答えた。
「少なくともこの世にはないよ。死後の世界にユートピアだのエリュシオンだのがあるとも信じられないけど、この世界よりは幾分マシなんじゃないの」
私にとってもこの世界はユートピアにはほど遠い。
「明日なんて来なければいいのに」と泣きながら眠りにつく日だってある。
でも、それでも。
「私もこの世界がユートピアとは思わないけど、ディストピアとも思わないな。だって、あなたと話ができるから。それだけでも価値のある世界だよ」
単純な奴、と捨て台詞を吐いて(彼が聞いたら怒るだろうが)、彼は本でポンと私の頭を叩くと、本をデスクに置いて去ってしまった。
この世界は
一面の青
優雅に泳ぐ魚
鮫ものんびりと
小さな巨大水槽
『この世界は』
世界は広いと聞くことがあれど、わたし自身の感覚では決して広くはない。なぜなら、わたしは小さく小さく生きているから。
ゲーテの「ファウスト」を読んだとき、グレートヒェンはファウストとの出会いで愛を知り世界の広さを知り眩しいほどの喜びを得た(苦悶も知ることになる)のだけど、わたしは、そんなものより守るべき小さな世界が小さな幸せが壊されたと感じた。グレートヒェンはファウストに出会わなければ良かったとさえ思っている。
この世界は素晴らしく広い。
それでもわたしは、自分の手で守れるだけの小さな世界に生きていたい。それがわたしの身の丈だから。