『ここではない、どこかで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
良いもの悪いもの
どちらにしても
知らないところで
生まれるって
気付けるときは来るのだろうか
理解できるのだろうか
ここではない、どこかで
爪の隙間に土が詰まっていた。そして小石が肌を引っ掻いて赤い線を作っても気にしていられなかった。ぬめった何かの生きものがいて、大きな岩も埋まって塞いでいる。
嫌なものは避け、右も左も上下もわからないままもがき続けておよそ半日。男はようよう這い出た先で月を見た。
獣の呼吸が鼓膜を揺らし、それが自分の喉から鳴っていることを知る。ひとみが大きく拡大して興奮を如実に表していた。
それから、その様を高い針葉樹がじっと見下ろしていた。
四半刻後、やがて男の頭が垂れて手足を視認する。見るに耐えない死者の装束をおぼつかない手つきで脱ぎ捨てて、裸で走り出した。
ざわざわと木々が騒ぐ木立を逃げる。その影が右に左に揺れて男の顔を過ぎていく。
土地も方角もわからないままだった。しかしそれでもここではないどこかへ。
起きたばかりの男の胸中も、右に左にと忙しなく揺れていた。
あの時別の道を選択したら
また違った未来があったのだろうか
あの日別の答えを見つけていたら
今ここにはいなかったのだろうか
あの日、あの時
こうしていれば、、、
ここではない、どこかで
わたしは生きているのだろうか
そんなタラレバを考える
わたしはきっと臆病者
#ここではない、どこかで
「ここではない、どこか」
懐かしいこの場所は
君との思い出の場所
二人仲良く写真を撮り
二人で笑いあって
二人で抱き合って
二人でキスをした
この場所には思い出は残せた
次の場所を目指そう
準備はいいかい
さあ行くよ出発だ
目的地はいつも通りさ
ここではない、どこかだよ
ここではない、どこかに旅立つときが来たってはっきりと分かっている。
これまでの日常が急に色あせて、みんな茶番に思える。
置かれた立場は座り心地が悪くて仕方がない。
やるべきことばかりに、取り囲まれて
やりたいことが見えない。
ここではない、どこかで
知らなかった自分に会えたりしないだろうか。
怠惰で気まぐれで、優しい正解に閉じこもりたいと熱望している。
1度しかない人生なら、誰に認められなくても
自分が居心地がいい行き方をしてみてもいいだろう。
ご褒美のように遊ぶのではなく
人生そのものを余暇のように遊びたい。
私は私らしく伸び伸びと行きたいだけ。
ここではない、どこかは
きっとすぐそこにあって
勇気を出してドアを開けるだけ。
明日のことも、1分1秒先のことも、
正直なところ何も分からない
数年続けた仕事を手放してみることにした
毎日辞める理由を探していて、
一回手放してみてから考えればよかったのか
そう思って一歩踏み出したら
背負ってた荷物の重さに初めて気づいた
なーんだ、その荷物って自分のための荷物じゃないじゃん
先のことなんて分からないけど、
分からないからこそ何でもできるし、
やってみてもいいのか
やれないって誰が決めたの?
"もう頑張らなくていいんだよ"
選択肢は無限大、自分のために生きるんだよ
ここではない、どこかで
まだ喉に違和感と軽く痛む時があるけどほとんど回復したな。全身にあった虚脱感もなくなったし体調よし。
今回の原因はやはりらっきょうの食べ過ぎだろう。正直食べ過ぎってのはかなり強く思ってたからな。
らっきょうを間食に食べると決めた時にいろいろ調べてたから適切な量を絶対越えてるってのはわかってた。でも腹へった時にちょうどよかったしうまかったからついな。
自分の体を過信しすぎてたな。割りと病気知らずで生きてきたからな。反省せねば。
これからはらっきょうを控えよう。まぁらっきょうの味に飽きてきてたから体調を悪くしなくてもそろそろ食べるのやめてたんだけどな。
最近のブームはりんご。スーパーの青果売り場を見てたら六個で五百円のりんごを見つけたから最近は朝と昼の食前にりんごを一個食べるのがマイブーム。
これなら一日二百円以内で済むかららっきょうと経済的負担はほとんどかわらない。
このお徳用りんごの存在は実を言うと結構前から知っていた。ならなんでりんごを買わずにらっきょうを買っていたかっつーと前に外れを引いたからだ。
青果の怖いところはここよ。味が安定しないっつーか中が痛んでいる時がある。今までりんごを買わなかったのはぱさぱさりんごが嫌いだからだ。
でも今回の胃炎でらっきょうにはこりた。俺はこれからりんごでいくぜ。幸い今日までのりんごは全部美味しいからちゃんとものを見て買えば大丈夫だろう。
一日一個のりんごで医者いらず。これからは健康になっちまうな。あ、今週のジャンプはアンデラが面白かった。
学生の頃は、海外に憧れていた。
今いる世界と違うところに行きたかっただけではなく、自分の才能、ポテンシャルを活かせるのは日本ではないと、友達や家族と一緒にいるなかで思っていた。
アフリカでは、貧困にあえぐ子供達が…
教育が行き届かないこの国では…
新聞やネットから受けとる情報は私に向かって助けを求めていると思っていた。世界を良くしたい、困っている人を助けたかった。
その思いを胸に秘め、20代でアフリカで教師をした。海外でも仕事内容が変わるわけでもない。目の前の生徒に全力で指導し、同僚たちと切磋琢磨したつもりだった…
ここでの経験は、かつて持っていたはずの利他的な思いをお前のエゴでしかないと残酷に切り捨てたのだ。
2年の勤務期間を終え帰国すると、今いる場所で頑張ろうという気になっていた。以前は身を乗り出してみていたニュースも残念ながら、自分には関係のないことのような気すらした。同時に自分はこの程度だという負け犬根性が腰を据えてしまった。
30代に差し掛かった今、配属された学校で懸命に勤務している。身の丈にあった仕事をしながら…
「ここではない、どこかで」
ここではない、どこかで
人は生まれ、人は死ぬ
それらを鏡の向こうのように
笑って見ていても
いつかその日は来る
鏡の外から見つめられる日
自分の中の砂時計が割れる日が
ーアイツは生きている。
俺が生きてるから、アイツだって生きてるにきまってる。
ここではない、どこかで。
そう思いながら、一年、また一年…。
修行をして、手がかりをさがす。
しかし聞く人、聞く人皆、彼のことは名前しか知らない。
変な感覚に陥り、街から逃げるように出ていく。
そしてまた修行をしながら次の街へ。
ふと水たまりに映る泣きそうな自分を見つめる。
不安が心を支配し、流す涙も枯れかけたその時
「…○○?」
沈んだ顔で振り返ると
少し背が伸びて大人に近づいたアイツがいた。
「…やっとみつけた、また一緒に旅に出よう。」
アイツは涙を堪え、震えた声で俺に手を差し伸べた。
「バーカ、どこほっつき歩いていたんだよ。」
止まっていた運命の時計が、また動きだすかように
遠くの街の鐘の音があたりに響いていった。
テーマ ここではない、どこかで
こんな所からじゃなくて
直接貴方に
会いたかった。
ここではない、どこかで…
なんて考え出すと
狂いそうになってしまう。
水平線の向こう側に
何人居るのかな?って数える
気にもなれないのと同じくらい
手も目も想像力すら及ばない世界の
話し過ぎて、笑ってしまう。
それぐらい、私の思考も心も
現実に囚われ固着してしまった。
ここではない、どこかで…
そういう選択肢を幾つも捨ててきた。
欲しいものを捨てる事で
強くなれるんだと、信じていたから。
【お題:ここではない、どこかで】
幼い頃から俳優を目指すあなたは、成人を迎えてからもその夢を諦めず、スクールに通ったり自主練をしたりしていた。
いつか、同窓会で半年ぶりに会った時に、今は劇団に入っていると聞いた。
ちょこちょこ食事に行くことはあったが、まさかそこまで精力的に動いているとは知らなかった。
あんなに熱く夢を語っていたから、私に出来ることは何でもしてあげようと思った。より演技が上手くなるような、よい役者になれるような手助け。
一緒に色々な劇団を観に行った。アマチュアからセミプロまで、あなたのおすすめの劇団。あなたの知り合いの劇団を観に行った時には、折半で差し入れを持っていった。テレビに出ているような俳優の劇は、チケット代が高いと観に行けなかった。
劇団によって毛色がまったく違うのは面白かった。実力の世界だなと思った。
遠くに遊びに行く時は私が車を出した。あなたはペーパーだったから。場所はあなたの好きそうな、演技のネタになりそうな場所。辺鄙(へんぴ)な場所にある滝や、お城などの観光名所。誘われたアマチュアバンドのライブも。もちろん、帰りが遅くなった時は家まで送った。
色々なところに行って、思い出を作るのは楽しかった。
あなたはよく物真似をした。好きなドラマの登場人物が独特な舌打ちをしていたから、模写をして舌打ちをする。私は上手だと褒めた。すると喜んでずっと舌打ちを続けた。
どんどん上手くなっているのを聞いて、私の耳はちりついた。
あなたはタバコを吸うので、食事やお茶に行く時はいつも喫煙席。あってないような断りを入れる。高校時代から共通の友人も吸っていたから、いつものこと。
私はいつからかする喉の痛みを気づかないふりして、あなたの話を聞いた。
あなたの話は多岐に富んでいた。普通に生きていて、どうしたらそこまで変な人に当たるのかと思うほど。表現者には変人が多いというが、それだけではない。よっぽど対人運がないのか、いわゆる害のある人によく困らされていた。
私はそんなあなたの話を聞いていた。
あなたは頑張り屋だった。いじめられたり、相談も意味のないそんなバイト先なんか早く辞めたらいいのに、自分が辞めると新人しかいなくなると、発熱が続いて倒れるまで辞めなかった。
私は愚痴の電話をもらって、急いで看病に行った。
あなたが同じ劇団の人に恋をした。私は止めたが聞かなかった。あなたは泣いて私に愚痴った。あんなに最低な人だと思わなかったと言われた。三股していることは知っていたのに。
三ヶ月後に、その劇団が解散したことを居酒屋で聞かされた。
あなたは幾度か恋人を変え、また恋をした。その恋は絶対に敵わないと、きっと私以外の第三者から見ても明らかだったから止めたが、恋は盲目だった。
私は今までと同様、失恋も経験、と口をつぐんだ。
あなたがまた恋をした。今度も同じ劇団の人。あなたがずっと憧れていたという脚本家。今度も敵わぬ恋だったが、やはり聞く耳を持たなかった。
あなたは一生のお願いと言って、私にセックスを求めてきた。彼女に情けない姿を見せたくないという。さすがに断ったが、土下座せんばかりの懇願だった。私にこんなに必死に頭を下げるなんて初めてだった。
幅広い失恋の経験値になるだろうと、私はあなたに体を開いてあげた。私の処女は、おもちゃに奪われた。
それから5年。
あなたから誘いがくると体に異変が起こるようになった。あなたに会うべきではない。わかっていたが、それでも会いたかったので会った。
会った翌日は動けなくなり、一度病院に運ばれた。
五月某日。
いつもの喫茶店。最近はずっと禁煙席だったが、そこしか空いておらず、喫煙席に座った。
「あの、さ。タバコ辞めてくれる? 前も言ったけど、最近喉が痛くて……」
「え、なんで? 今までいいって言ってたじゃん。喫煙席だし。風邪じゃない? のど飴あげようか」
「いや、タバコなんだって。今日も会う前までに吸っててってお願いしてたよね?」
「えー、うん。言ってたけど」
「じゃあ」
「でも今も吸う時何も言わなかったじゃん」
もうダメだ。
あなたのためにと思っていた。
サンドバッグのように愚痴を聞かされるだけ聞かされて、私の話はあなたのよく鳴るスマホに邪魔されても。
演技の幅が広がるなら、それで上達するのならと、私はあなたを褒めて、そして我慢した。でも。でももう限界だ。
本当は、舌打ちもキライ。タバコも大キライ。私は同性愛者ではない。
箱代も払いたくないような大根時代から、舞台に上がる者から招待された者のマナーとして、毎回差し入れを持っていった。途中からお礼がなくなっても。
すべてはあなたが好きだったからやったこと。
そんな積み上げてきたものが、ガラガラと音を立てて崩れた。
もちろん私が勝手にやったこと。勝手に積み上げてしまった塵だが、積もり積もって崩れた塵は私の心をぐちゃぐちゃに犯した。
彼女への怒りと虚しさ、自分の情けなさと身勝手さで狂いそうになる。
端から見れば、ホストに貢ぐだけ貢いだ挙げ句に袖にされたメンヘラ女のよう。それでもまだ会いたいという気持ちかあるのだから、本当に笑える。
笑えるが、心にぽっかり穴は空いた。
彼女への手紙を、便箋三枚に書いた。そして四階の自室のベランダから破り捨てた。
一生のお願い。
どうか、私には見えないどこかで、活躍してください。
――知人に聞いたノンフィクション。
たまたまお題と重なったので。未修正。
「もっと平和な別の世界だったら私たちって出会ってなかったのかな」
「平和って?」
「あなたの好きな戦いとか魔物とかいない世界…?」
少し疑問系になっているのは君の中でも平和な世界の定義が出来上がってないからだろう。
「君と出会ったきっかけがない世界、か。想像もつかない」
俺がこうしていられるのは戦いあっての事だった。少年の時の体験が運命を変えたと言ってもいいほど戦いと切り離せない。それをごっそり削られた世界で俺に何が残る?せいぜい人当たりの良さそうな青年か?
君が隣にいることが当たり前になっているのに何て酷な話題なんだ。
「急にどうしたの?他の男に目移りしちゃった?」
「ううん、たまたま出会ったのが私だっただけで違う世界なら別の誰かと幸せになってるのかなぁって。…ちょっと考えただけなの」
自信なく目が伏せられた。『ここではない、どこかで』も君と一緒にいたいと思っているのに。きっかけがないなら作ればいいだけだ。
「俺の事だから君を探すだろうね」
知る前と知った後じゃ全てが違う。隣に君がいないと例えどんなに恵まれていようが、人生は味気ないものに成り果てる。
「君がいないとつまらないよ」
『ここではない、どこかで』も君と出会って恋をしたい。
茶碗に残された1粒の米
この1粒のためにどれだけの年月をかけるだろう
調えられた土壌 病気 自然 暴風 定められた基準
床に落ちた1粒のチョコレイト
この1粒のためにどれだけの汗が流れるだろう
少ない賃金 工程 商売 猛暑 知らない価値
私は知っているだけ 教えられただけ
その時間を無為に過ごす私がいる
その時間を無頓着に喰らう私がいる
恵まれただけ 運が良かっただけ
けれど、深く心に刻まなければ
私の幸福の下には必ず誰かが造ってくれた土台がある事
#ここではない、どこかで
ここではない、どこかで息をしてくれればそれでいい。
私の隣にいなくても、他の誰かに惹かれても。
大丈夫、大丈夫だよ。私は全然傷つかない。
浮気だなんて言わないよ。本気であの子のことが好きなんでしょう。
私も本気で貴方に恋してる。
好きだよと文字を打てば、俺もと返ってくる。
うれしいなあ、うれしいなあ。私まるであの子になれたみたい。
あの子のふりしてやりとりするの、楽しすぎてにやけちゃう。
私が会いたいって言ったら会いにきてくれるのかな。
あの子に会えると思って会いにきてくれるのかな。
くすくす、うふふ、あはははは。
あの子はもういないのに、いつまでもそれを受け入れられないばかな男。
貴方に付け入るなら今しかないと思ったわ。だから私、あの子のふりして連絡したの。
携帯変えたんだって言ったらすぐに返信がきて、私の言葉を信じたの。
普段は見向きもしなかった私の言葉にだよ?
超ウケる。
ねえ、流石に会ったらばれるかな。だけどもし、あの子だと勘違いしたままだったら……ああどうしましょう。だってそんな素敵なことってないわ。
私と貴方が結ばれる。そんな日がくるなんて。
私は貴方に会いたいと文字を打つ。今までどこに行ってたんだ、探したんだぞと言われ抱擁されることを妄想して。
私の考えは浅はかだったんだ。どうして会えば受け入れてもらえると思ったのだろう。どうしてあの子じゃないと取り乱して自分がxxされると思わなかったのだろう。
そんなの、少し考えればわかること。
ああ私……ばかだなぁ……だけど今でも思うんだ。
貴方がここではない、どこかで息をしてくれればそれでいいって。
#20 ここではない、どこかで
『ここではない、どこかで』
ここではない、どこかで貴方と会いたかった
何で貴方まで、此方に来てしまったの?
戻れと促したところで、時既に遅し
1度川を渡ってしまったら、戻る術はない
「ここではない、どこかで」
もう一人の私が
幸せに暮らしていますように
笑っていますように……
この世界から願っています
旅行雑誌を見るのが好きだ。
何もない休日。購読している旅行雑誌の最新号を手に取って、適当なページを開いた。
今回は……長崎だ。
高台から見る夜景と港町。暮らすには不便そうな坂の多い街並み。名物グルメのちゃんぽん。
その土地の生活をそのまま切り取ってきたような写真を眺めながら『自分がそこに立っていたら』という妄想をするのが、休日の密かな楽しみなのだ。
旅行は疲れてしまうしお金もかかる。
もちろんそれに見合う楽しみと経験が待っているのだけれど、どうしてもその2つがネックになってしまう。
だから、体力と金銭がキツいときは旅行雑誌で妄想することにしている。写真や文章で掲載されたスポットにしか"行った気"になれないのは惜しいところだけれど。
ひとしきり妄想を終えたあと、スマホのメモ帳を起動して"長崎"と書き加えた。
メモのタイトルは『ここではないどこかで』。
いつか妄想を答え合わせするために、しっかり記録しておこう。
学校も、家も、私が生きるには勿体無い場所だ。
#ここではない、どこかで