『お気に入り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雪投げのスコップ 小さなショベルカーみたいな手押し式スコップがお気に入り。力がなくても雪をかくときとても役に立ってくれます。雪国に暮らす人たちに無くてはならないもので一家に一つは必ずあると言っても過言ではありません。雪を押してくれてその上雪を投げてくれるというすぐれものでとても重宝しています。どうか壊れないでずっとそばにいて欲しい。
こちら、思春期のぶどうです
このぶどうで酒造されたワインは格別ですよ
みなさま、どうぞご試飲なさってください
ほんのり明るめのレッドに混じり合う暗色が、自分の青春時代を彷彿とさせた。光に反射して揺らめく赤は紫に近く、口をつけて一気に飲み干すと、今はもう感じることのない苦みが口に広がった。
18歳の青年で、収穫時期には失恋のショックを抱えていたそうです
どうです?甘酸っぱくて辛い味がするでしょう
ちょっと分かりづらいという方は、きっと失恋したことがないのでしょうね
終始笑顔をキープするソムリエは揶揄するようにそう言った。周りは上品そうにクスクスっと笑っていたが、自分は苦笑いを浮かべていた。
昔、自分は多少なりともモテていたという自覚がある。月に1回は必ず呼び出され、その中から数人と付き合うことはあったが、自分から告白したのはただ1人だけだった。
自分はあの時、初めて気になった子に対して妙な勝利を確信していた。そのまま衝動的に告白をしたわけだが、瞬殺だった。
ごめんなさい、あなたのことよく知らないから
その時の自分の顔はどんなに間抜けだっただろう。何しろ同じ学年で月一で告られる自分を知らないはずはないと、無意識のうちに決めつけていたのだから。うぬぼれた己の醜悪さに、恥ずかしさで死にたくなったのを今でも覚えている。
これ、1本ください
手を挙げて言った。ソムリエは変わらぬ笑顔でお買上げありがとうございますと頭を下げた。
.お気に入り
僕のお気に入り
それは何よりもかけがえのないもの
温かな体温
柔らかな肌
甘い香りの髪
鮮やかな赤
だけど僕がお気に入りを
愛でられるのはほんの一瞬
それはだんだんと冷たくなって
色は変わり、異臭を放ち、腐敗して
やがては朽ち果てる
僕は新しいお気に入りを
探しに旅へ出た
お題「お気に入り」
チャイムが響き渡る校舎
キーンコーンカーンコーン
授業開始の合図だ。
「日直号令」
その先生の言葉で日直である長谷部くんが号令をかける。
黒板にあたるチョークの音
「では(5)の問題を7分で、よーいドン」
シャーペンを走らせる音
ぴっぴっぴー
7分たったことを伝えるタイマー
今の時間は数学の授業。
数学の水野先生は…
「はい7分たったので、ではこの問題を、えぇ〜と今日は2月18日だから出席番号18番!櫻井!」
このように日付等を用いて出席番号で当ててくるタイプの先生だ。
そして櫻井は私である。
数学が大の苦手でテストもどんだけ勉強してもクラス順位は下から数えた方が早かった。
そんな私が今、公式を用いて解く計算問題の解答権を渡されてしまった。
それもまた導入問題レベルではなく応用問題レベルである。
自分のノートを見る。が、(5)と書いてあるだけで思考の成果が何も書かれていなかった。
終わった。
そもそも、どんだけ考えても結局行き着く答えは「どういうこと?」なんだよ。
数字すら書けないよ。
もう自分のできなさに胸を張りたくなるが、そんな情けないことはできないので、恥ずかしながら出したか細い声で「すみません。分からなかったです。」と答え素早く解答権を他の誰かに渡した。
「まぁ、そうだよな、」
水野先生はため息混じりで呆れていた。
私はできるだけ小さくなり1度透明になってこの場から立ち去りたい気まずさがあった。穴があったら入りたい。切実に思った。
「えぇーとじゃあ2足す18で20番 おぉ長谷部」
そう水野先生が生き生きとした声で言うと、長谷部くんは「はい」と爽やかに返事をして見せた。
彼は賢く 学年上位の成績であり、勿論数学も得意でクラス1位である。それなのにスポーツもでき、皆に優しく非の打ち所がない好青年である。
彼は黒板に丁寧且つ分かりやすく正確に途中式、答えを書き席へ戻った。心地よい春風のようだった。
勿論答えは
「おぉすごい!正解です。皆さん拍手」
クラスからは拍手と賞賛の声
そんな対応をされても長谷部くんは顔色ひとつ変えずに真剣な顔でノートを書いている。
休み時間には友達と笑顔で話、テスト前では勉強を教えてあげる姿を見る。
だから"皆のお気に入り"なんだろうな、
私は貴方が眩しいよ、
君から貰ったお揃いのキーホルダー
それがお気に入り
でももう、使えないね。
大して好きでもないものを、お気に入りと言っていた時期があった。
これは、私の場合は、と付け加えるてから話をすると、お気に入りとは自分の弱みでもあるという危機感があった。さも興味がないと言うように遠ざけることで、攻撃されることを避ける。もし偽のお気に入りを攻撃されてもダメージが低い。
無くしたり壊したところで仕方がないと切り捨てられる。
子供というのは、こうして誰かのお気に入りに容易に触れようとする。
自覚があっただけに触られることを危惧した私なりの防衛本能がそうさせていた。
お気に入り
お気に入り
ぬくぬくの布団。
タバコ。
コーヒー。
ゆったりとした時間。
1人だけの空間。
趣味の時間。
どれも大切な時間。
お気に入り
僕、自分のことがお気に入りなんです。
自分の事をよくできた人間だとは思わないし、あまり成功体験もありません。
でもお気に入りです。
僕は何も出来ないけれど、存在してるだけで満足しています。お気に入りなので。
僕、1度気に入った物はずっと使い続けるんですよ
使い古した星柄の毛布をかけて寝て、使い古した子供用フォークでご飯を食べて、成長して履けなくなったお気に入りの靴を玄関に出しています。
生まれ育った実家もお気に入りなので当然住み続けています
新しい物は苦手です。毛布やフォークは実の所あまりお気に入りでは無いのかもしれません。失っても多分大丈夫です。
でも無くなってしまったら必然的に新しい物に置き換わります。新しい布団が、新しいフォークが来てしまうのです。
それがどうしても耐えられません。
外も嫌いです。常に新しくなっていくのでついて行けません。
こう考えてみると私が本当の意味でお気に入りな物なんて無いのかもしれません。ただ死ぬ程新しい物が嫌いなだけかもしれません。
僕は子供の頃の自分がお気に入りです。
鏡は新しい物を映すので嫌いです。
お気に入りの場所
布団。
バタコさんお休み、また明日。
長い長い黄金の髪をした美しい裸の女神がいた。女神は遠い遠い昔から、一瞬も立ち止まることなく歩き続けていた。女神が止まる所に永遠の幸福が訪れる。誰もが女神を止めようとした。だが、誰一人女神を止められなかった。
女神は街道に現れ、西の王国に向かっていた。知らせを受けた王は、女神をもてなすため、街道に無数の花々を飾らせ、美食とドレスをずらりと並べさせた。
七色の花びらが舞う中、女神は王国に現れた。王は千人の家来達を従え女神を出迎えた。恭しく頭を下げる王。一瞥もせず通り過ぎる女神。
女神様、お止まり下さい。お望みのものをいくらでも差し上げます。
懇願する王。
一顧だにせず進む女神。
女神様、お止まり下さい。この国を差し上げます。我らが女王とおなり下さい。
追いすがる王を振り払い、女神は歩き続ける。
ならば、力ずくで。
王は合図を送った。
街道脇から千人の兵士達が現れ、女神の前にずらりと並んだ。
捕らえよ!
兵士達は女神に次々と飛びかかった。女神は、ふっ、と息を吐いた。
うわぁっ!
タンポポの綿毛のように次々と吹き飛ばされる兵士達。女神は歩み続ける。
追え!
王が命じる。
兵士達は女神の後を追った。
女神は大河のほとりにたどり着いた。
女神は大河に入って行くと、兵士達の目の前で水となり消えた。
探せ!
千人の兵士達が千日もの間探したが、女神を見つけることはできなかった。
水となった女神は大河を下り、東の海にたどり着いた。貧しい村々が点在する、どこまでも続く砂浜。小雪が舞う中、女神は元の姿で海から現れ、砂浜を歩き始めた。
砂浜では、幼い男の子が一人遊んでいた。男の子はボロボロの小さな毛布をいつも持ち歩いていた。それは、男の子が生まれた時からのお気に入りだった。
これあげる。寒いでしょ。
男の子はずぶ濡れの女神を見つけると、駆け寄って毛布を差し出した。
ありがとう。
女神は喜んで受け取った。
女神は毛布を羽織ると、立ち止まり、辺りを見回した。
気に入ったわ。ここで休みましょう。
女神は浜辺に横たわった。
翌朝、男の子は女神を起こしに砂浜に来た。だが、女神の姿はない。男の子は砂浜が黄金に輝いていることに気づいた。
砂浜の砂は全て砂金となっていた。砂金は採れども尽きることなく、村々は千年もの間富み栄えた。
子供の頃にお気に入りだったぬいぐるみの汚れが気になったから、洗うことにした。
洗剤で手洗いしたら、驚くほど汚れが落ちて気持ちよかった。
気に入っていたから洗った。
それで満足だ。
乾燥させたそれを見て、「あぁ…」声が零れた。
布が劣化していて、力を入れたら破れそうになっていたから。
ごめんね。
子どものときほど悲しくないんだ。
君との思い出もこうやって綻んで、中身を何処かに落としていっているみたいだよ。
『お気に入り』
今日は我が領地である農村に来ております。
庶民たちがどのように暮らしているのか
知っておく事も大切でしょう?
例えば住むのが難しいほど
古びた家屋が建ち並んでいるのであれば
改修工事を行わなくてはなりませんし、
病気や怪我で働けない者がいたら
彼らの援助をしなければなりません。
それが貴族の務めだからです。
道なりを歩いていると小屋の前に
何やら人だかりができています。
そこには村の子供たちと
彼らに囲まれる魔術師がおりました。
「魔術師さま、魔法見せてくれよ!」
魔術師が杖を振ると透明な蝶々が飛び出してきて、
子どもたちの周りを舞い始めました。
それは水で作られた蝶でした。
触れようとすると蝶は弾け、
小さな虹が出来上がります。
それを見て嬉しそうにはしゃぐ子どもたち。
私はその様子を木陰からひっそりと眺めていました。
「さあ、今日はこれでおしまい」
また来てね-!と言う子どもたちと
手を振りながら彼らを見送る魔術師。
子どもたちが去ったところを見計らって、
私は魔術師に話しかけました。
「あなたが子ども好きだなんて知りませんでしたわ」
物陰から突如かけられた声に驚きもせず、
魔術師はこちらへと振り向き、にこりと微笑みます。
「子どもたちの笑顔は宝ですから」
その表情は大人相手に怪しげな魔法や道具を売り捌いている時の不敵な笑みではなく穏やかなものでした。
「そう…あなたのお気に入りと言っていいのかしら」
「そうですね。ですが、一番のお気に入りは…」
いつの間にか魔術師は顔が触れるほど
近くに来ていました。
間近で紫色の瞳と目が合いゴクリと喉を鳴らします。
「お嬢様をからかう事です」
…ん?何かが胸元でガサゴソと蠢いています。
恐る恐る目線を下げると、
思わず飛び上がりそうになりました。
ね、ね、ねずみ?!いえ、これはハムスター?
服の間からひょっこりと顔を覗かせるふわふわの
小さな生き物に私は唖然としました。
どうしてこんなところにハムスターが?!
さてはあなたの仕業ですわね魔術師。
成敗してやりますわ!こら待ちなさい!!
お気に入り
私はよく頻繁に気分が変わっちゃうの
ひとつの事にうじうじしてらんないって言うか
それがいいでしょ、気楽でしょ
だから、お気に入りのものも頻繁に変わっちゃうの
それは例えば、食べ物だったり
それは例えば、趣味だったり
それは例えば、人間だったり
それは例えば、生き方だったり
私は盛大に最高に生きやすいよ!
私の他に人生が生きやすい人なんていないよ!
私はよく他人を見ているから知ってるよ!
自分しか見てない人と訳が違うもの!
今日だって、お気に入りのまま生きていくの
そして、死ぬ事がお気に入りになったら死んじゃうの
それって素敵な事じゃない?
人を傷つけることをお気に入りとする人よりはっ
うん、こんな私、お気にじゃないね。
やーめた。あー、気にならない世界にいきたい
☆ちゃんとフォルダ分けして
☆たまに整理しないと
☆ワケわかんなく
☆なってたよね。
「お気に入り」
【お気に入り】
いつだって
君だけに届ける
僕の声で
僕の想いをのせて
お気に入りの歌を
この声が枯れるまで
今日いい匂いすぎる、離したくないって
あなたに言われた時からずっとつけてる
お気に入りの香水
匂いが消えちゃわないように
いつも持ち歩いてるんだよ
ねぇ、離さないで
ぬいぐるみの心は
あなたが初めて私の家に来たとき。
嬉しかったわ。
もう一人じゃないって思えたよ。
どれだけ大変なことがあっても、悲しいことがあっても、あなたは家にちゃんといる。
帰ってあなたを抱きしめるの。
そうしたら、とっても安心して明日は大丈夫って思える気がしたのよ。
だからね、あなたとずっと一緒がいいわ。
――私が死んじゃうくらいまで。
ぐらぐらと揺れる視界の中に、あなたの姿が写った。
いつものように私のすぐ側にあなたがいる。
震える手であなたの頭を撫でた。
ふわふわしていて、柔らかい。
そんな感触が伝わってくる。
――安心する。
プツン。
意識が途切れたようだ。
もう、彼女が目を覚ますことはない。
安心して、逝けたのだ。
だったら、役目は果たせた。
僕の役目は。
『わたしはあなたが大好きよ。』
そんな昔の言葉が思い出される。
そう言ってくれた彼女はもういない。
涙はこぼれない。
涙をこぼれさせられない。
だから僕は、しんと静かな部屋から泣いているような雨を見た。
お気に入り
お気に入り、というのがあまり無い。
例えばお気に入りのボールペン。
一応あるけどそれが廃番になったら「まぁ仕方ないか」って別のボールペンに乗り換えると思う。
お気に入りのぬいぐるみとか、そういうのも無い。
子供の頃に持っていた物はほとんど捨ててしまった。
嫌いになったとかじゃなく、なんとなく「もういっか」とか「まぁいいや」ってなって、処分してしまう。
お気に入りの店、というのも無い。
本が買えるなら本屋はどこでもいいし、このブランドの服じゃなきゃ駄目、というのも無い。
あぁ、でも。
本は手放したくないかな。
本だけは、死ぬまで手放したくないのが何冊か。
でもこれはお気に入りというより·····私の一部、みたいなものだからなぁ。
うーん、難しい。
END
「お気に入り」
あなたの
お気に入りにも
好意の欠片にも
親しい距離にも
全くの他人にも
何にもなれなかった私は
ここからあなたと
何者として接したらいいの
これからあなたに
どう顔向けしていればいいの
勝手に期待して
勝手に諦めて
勝手に辛くなって
勝手に終わらそうとしてるよ
やっぱり私に
恋愛は向いてない。
_ ₁₅₅
わたしがいつも持ち歩いているキーホルダー
昔、君にもらったもの
君はわたしに「お守りだよ」って
くれたもの
いつもどこでも持ち歩く
何年経っても
ボロボロになっても
大事にしてる
君がいなくなってからも
わたしのお気に入り