よい

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こちら、思春期のぶどうです
このぶどうで酒造されたワインは格別ですよ
みなさま、どうぞご試飲なさってください

ほんのり明るめのレッドに混じり合う暗色が、自分の青春時代を彷彿とさせた。光に反射して揺らめく赤は紫に近く、口をつけて一気に飲み干すと、今はもう感じることのない苦みが口に広がった。

18歳の青年で、収穫時期には失恋のショックを抱えていたそうです
どうです?甘酸っぱくて辛い味がするでしょう
ちょっと分かりづらいという方は、きっと失恋したことがないのでしょうね

終始笑顔をキープするソムリエは揶揄するようにそう言った。周りは上品そうにクスクスっと笑っていたが、自分は苦笑いを浮かべていた。
昔、自分は多少なりともモテていたという自覚がある。月に1回は必ず呼び出され、その中から数人と付き合うことはあったが、自分から告白したのはただ1人だけだった。
自分はあの時、初めて気になった子に対して妙な勝利を確信していた。そのまま衝動的に告白をしたわけだが、瞬殺だった。
ごめんなさい、あなたのことよく知らないから
その時の自分の顔はどんなに間抜けだっただろう。何しろ同じ学年で月一で告られる自分を知らないはずはないと、無意識のうちに決めつけていたのだから。うぬぼれた己の醜悪さに、恥ずかしさで死にたくなったのを今でも覚えている。


これ、1本ください

手を挙げて言った。ソムリエは変わらぬ笑顔でお買上げありがとうございますと頭を下げた。

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2/17/2024, 4:08:21 PM