魚の煮付は生姜多めで

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3/10/2024, 6:05:41 PM

〈愛と平和〉
「そんなもの要らない」
 若気の至りと言えば聞こえはいいか。当時そんなことを口走ったのは。
 大抵の大人が鳴き声のように、愛だ平和だと嘯く様を見て、昔から糞餓鬼の私は高みの見物気分だった。歳を食っていく今、あの頃を思い出しては死にたくなる。
 愛と平和。なんと耳触り良い言葉であろうか。
 しかし絶対に有るべきものなのに、恐らく本当の意味で私たちがそれを取得することはきっとない。
 人間である以上、余計な知恵たちを叡智と呼ぶ種族の我々は、存在する間ずっと乙女のように希望論に恋い焦がれるのだろう。
 馬鹿馬鹿しいが、これもまた一種の平和と呼べるのだろうか。私も人間の端くれとして、愛だ平和だと嘯いておこう。

3/10/2024, 1:29:09 AM

〈過ぎ去った日々〉
 大して記憶にも無い。
 自分がどう生きてきたのか。何が起きて何を思ったのか。その大半が記憶に無い。
 現在私の齢は二十二で、昔も今も決して良い環境で暮らしているとは言えない。確かなのは常に頭の隅で異様な焦燥感がのさばってきていることだけ。そしてそれは日を追う事に、我が物顔で占拠地の規模を拡大していく。
 これまで私の身に起きた事柄は、大概が思い出そうにも不鮮明で、きっと思い出しても微笑ましく感ぜられはしない。のさばる焦燥感が「やめておけ」と一言窘めるだけだ。
 今日これから起きる出来事も、明日、私にとってどういうものになるのかは粗方予想が付いてしまう。今世生涯を無為に過ごしていく腹積もりをせねばならぬのだ。