〈愛と平和〉
「そんなもの要らない」
若気の至りと言えば聞こえはいいか。当時そんなことを口走ったのは。
大抵の大人が鳴き声のように、愛だ平和だと嘯く様を見て、昔から糞餓鬼の私は高みの見物気分だった。歳を食っていく今、あの頃を思い出しては死にたくなる。
愛と平和。なんと耳触り良い言葉であろうか。
しかし絶対に有るべきものなのに、恐らく本当の意味で私たちがそれを取得することはきっとない。
人間である以上、余計な知恵たちを叡智と呼ぶ種族の我々は、存在する間ずっと乙女のように希望論に恋い焦がれるのだろう。
馬鹿馬鹿しいが、これもまた一種の平和と呼べるのだろうか。私も人間の端くれとして、愛だ平和だと嘯いておこう。
3/10/2024, 6:05:41 PM