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10/6/2024, 3:53:00 PM

春、過ぎた日を思う
過ぎ去った春を思い出すと、いつも身に纏う空気が薄い桃色だったような気がする
新緑と、美しい川べり
僕は座っていて、薄く細い髪を靡かせる君を見てる

夏、過ぎた日を思う
過ぎ去った夏を思い出すと、あれほど身を焼いた熱の辛さだけを忘れて、それを冷ますかのように鮮明な空と緑
口に含んだ氷菓と、古めかしい縁側
僕の後ろ、ぎしりと音を立てて歩く君が笑う

秋、過ぎた日を思う
過ぎ去った秋を思い出すと、口の中になにかこっくりとした穀物の甘みを感じられるようだ
音を立てて歩いた紅葉の道と、秋雨の降る日
わずかに濡れた君と、それに見惚れる僕

冬、過ぎた日を思う
過ぎ去った冬を思い出すと、足元から登ってくるような冷気に身が震えそうになる
触った雪と、君の冷たさ
去り行く季節に思いを馳せる僕


10/5/2024, 4:11:06 PM

星を辿ってみて
さあ何が見えるかな

雄々しい男神の怒れるお姿か?もしくは、聖水の湧き出る柄杓が
天の川を悠々と飛ぶ美しき白鳥が、
白いヴェールで繋がれた2匹の魚が
猛々しく尾をあげる蠍が、君の目には見える?

あぁ、見えないとも
星を繋いで物語を綴ろうにも
僕らの目に届く光はそれには足りないだろうから

昔はもっと沢山あったんだよ
いまは88個に随分と減らされてしまったけれどね

全て人間の都合の、人間の編み出した物語なのだから
今、僕たちで丁寧に星を辿って
名前をつけてみようか

10/4/2024, 4:12:21 PM

踊りませんか?

ふと落とされた言葉に、はたと顔を挙げ声のした方を見ると
その言葉を落とした人物はこちらを向いていない
場にそぐわぬ言葉だ、と、そのまま彼の顔をじっと見つめた。

夜も深い。終電はとうの昔に過ぎていった。そして始発までちょうど折り返しほどだろうか
ここはそう都会ではない。だが、何時になっても駅前は明るい。始発ほどまでやっているカラオケもBARもある。
まぁ、私達はそこへは行かずにこうして公園にあるブランコに腰掛けて、手には500mlのアルコール飲料を持ちながら駄弁っていたのだが。

酔いも回り、ふと数分、無言の時間が流れる
居心地が悪いわけでもなかったが、まったく気にならないほどではなく、さて次は何を話そうかと思考を巡らせていた所だった。
件の台詞がこぼれ出たのは

彼は依然としてこちらを見ないでいる。前を向いているから、私からは表情が読めない。
意図はわからないが、どうやらシャル・ウィ・ダンス…と彼は言いたいようだ。
私は遊具から立ち上がり、彼の顔が正面から見える位置まで歩いてしゃがみ込んで、首を傾げた。

彼はその行動を目で追っていたが、私の顔にやっと焦点をあわす。
また少々無言の時間が流れたが、彼はやっと重い口を開いた

こんな夜に あなたと踊りたい

私は笑ってしまった
その言葉の意図なんかひとつも分からなかったのに
彼の目や、表情や、身振りひとつで、
この不器用な男の気持ちが分かってしまったからだ。

私は立ち上がって、男の手を取った。

ええ、踊りましょうか、と笑いながら。