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春、過ぎた日を思う
過ぎ去った春を思い出すと、いつも身に纏う空気が薄い桃色だったような気がする
新緑と、美しい川べり
僕は座っていて、薄く細い髪を靡かせる君を見てる

夏、過ぎた日を思う
過ぎ去った夏を思い出すと、あれほど身を焼いた熱の辛さだけを忘れて、それを冷ますかのように鮮明な空と緑
口に含んだ氷菓と、古めかしい縁側
僕の後ろ、ぎしりと音を立てて歩く君が笑う

秋、過ぎた日を思う
過ぎ去った秋を思い出すと、口の中になにかこっくりとした穀物の甘みを感じられるようだ
音を立てて歩いた紅葉の道と、秋雨の降る日
わずかに濡れた君と、それに見惚れる僕

冬、過ぎた日を思う
過ぎ去った冬を思い出すと、足元から登ってくるような冷気に身が震えそうになる
触った雪と、君の冷たさ
去り行く季節に思いを馳せる僕


10/6/2024, 3:53:00 PM