No.275『大好き』
私の周りには「大好き」で溢れている。
だから、もう十分だと思った。
私がこれ以上を望むことはわがままだと思った。
いや、違う…。これ以上「大好き」を増やして「大好き」が失われていくことが私は怖いんだ。
だからなるべく「大好き」は増やしたくない。
「大好き」が失われるその日がやってくるのを怯えて過ごす私は人生を楽しめているんだろうか…?
No.274『叶わぬ夢』
「叶わない夢なんてない!願い続ければいつかは叶う!」
いつだったかそう言っている人がいた。
くだらない。
私はそう思った。
いつかを待っていて、だけどそのいつかが訪れずに人生を終えた人がどれだけいると思ってるんだ。
叶わない夢なんてない…そんなのはいつかが訪れてくれた奇跡の人だけが言えるセリフで、それが全員に訪れると信じてやまない、現実を知らない愚か者が言ったセリフ。
ああ、でも誰かが歌ってた。
「願いは願う者だけ叶う」
…確かにと納得してしまった。
願いは叶わないかもしれない。だけど願わなければそれが叶うことは絶対にない。
それなら少しだけ願ってみてもいいかもしれないと思ってしまった。
No.273『花の香りと共に』
花の香りと共にあなたの匂いも思い出された。
ああ、そうだ。あなたはこんな匂いをしていた。
優しくて暖かくて愛おしい香り。
2度とこの香りを嗅ぐことなんてできないと思っていたし、もう忘れてしまっていたと思っていた。
でもまだ僕の中に残ってた…!!
その瞬間涙が溢れて止まらなくなった。
No.272『心のざわめき』
何か大切なことを忘れている気がした。
いつもの日常を過ごしているはずなのに胸にぽっかりと穴が開いているようで、いつも何かが足りなかった。
ある日、私を悲しげに見つめる男性がいた。
全く面識のない人のはずなのに……これは何なのだろう。この抑えられないほどの胸のざわめきは…。
No.271『君を探して』
君を探して一体何年の時が経っただろう。
こんなに探しても見つからないなんて、君は恥ずかしがり屋なのかな?
そんな風に自分に茶々を入れながら必死で君のいない日々を過ごしてきた。
…ある日僕は思い出してしまった。
もう君はすでにこの世を去っていたことを。
なるほど、それは見つからないわけだ。
それを考えた瞬間、僕の体の中で何かが壊れる音がした。