No.272『心のざわめき』
何か大切なことを忘れている気がした。
いつもの日常を過ごしているはずなのに胸にぽっかりと穴が開いているようで、いつも何かが足りなかった。
ある日、私を悲しげに見つめる男性がいた。
全く面識のない人のはずなのに……これは何なのだろう。この抑えられないほどの胸のざわめきは…。
No.271『君を探して』
君を探して一体何年の時が経っただろう。
こんなに探しても見つからないなんて、君は恥ずかしがり屋なのかな?
そんな風に自分に茶々を入れながら必死で君のいない日々を過ごしてきた。
…ある日僕は思い出してしまった。
もう君はすでにこの世を去っていたことを。
なるほど、それは見つからないわけだ。
それを考えた瞬間、僕の体の中で何かが壊れる音がした。
No.270『透明』
透明になれたとしても私という存在が消えることはない。
だから私がもし透明になっても、ただ大切な人たちに心配をかけて傷つけるだけ。
それなら透明になる意味なんてないんだと思う。
誰も傷つけず、迷惑をかけずにみんなの前から姿を消すならみんなから私の記憶を取り除いてから死ぬ以外に方法はない。
でも私1人だけの記憶を失わせるなんて技術はこの世界にはないから結局それもできない。
結局私には生きるか、誰かを傷つけて死ぬかの2通りしかないんだ。
No.269『終わり、また始まる、』
これで何度目かの命が終わった。
僕はまた君に会うことができなかった。
君の家は覚えてる。
だから絶対にもう一度見つけられるはず。
あの日のようにもう一度僕を拾ってくれるはず。
また新たな命が始まった。
今度こそ君のそばに。
No.268『星』
ずっと下を向いていた。
外にいても家にいてもスマホを見ていた。
ある日、誰かがいった。
『空を見上げてみて』
と。特に考えもしないまま顔をあげたらそこには無数の光が輝いていた。
ああ、たまには上を向くのも悪くないな。