6/19/2023, 1:42:02 PM
さっきまであんなに晴れていた空は
今やその面影もなく
大粒の雨を降らせていた。
「傘…忘れた…」
昇降口に立ち尽くして
ポツリと呟く。
ゲリラ豪雨とか夕立とか言われる突然の土砂降り。
夏の空は気まぐれで困る。
どうしようか…と空を睨んで考えていた私の視界に
チラッと赤い色が過ぎる。
「良かったら、入ってく?」
真っ赤な傘を広げ
こちらを見てコテンと首を傾げるクラスメイト。
これがただのクラスメイトなら
即座に頷くところだが…。
「えっ…と、イインデスカ…?」
片思いの相手となれば
仲良くなるチャンス!という期待と
ほとんど密着して歩くことになるという緊張と
ヘマして嫌われたらどうしようという不安で
ドギマギしてしまうのは仕方のないこと。
その日の帰り道の私の顔は
意中の子の傘に負けないくらい
真っ赤だったに違いない。
6/18/2023, 1:39:47 PM
「落ちている」
わたしはそう思った。
背中を下にして、体をくの字に曲げて
何処か高いところから落ちている。
不思議と恐怖はなかった。
いつまでも空は遠くならないし
いつまでも地面は現れない。
ただ、落ちていく感覚と浮遊感だけがあった。
ふと、自分の瞼が閉じていることに気付いた。
周りの景色は見えているのに
瞼は固く固く閉ざされていた。
開けようと思って力を込めても
まるで糊でも付いたかのように重い。
瞼に意識を集中して
渾身の力で勢いよく開く。
パッと明るくなった視界の先には
見慣れた自室の天井があり、
背中は硬い床の上に落ちていた。
「あぁ、またベッドから落ちちゃった。」
わたしは、とっても寝相が悪い。