さっきまであんなに晴れていた空は
今やその面影もなく
大粒の雨を降らせていた。
「傘…忘れた…」
昇降口に立ち尽くして
ポツリと呟く。
ゲリラ豪雨とか夕立とか言われる突然の土砂降り。
夏の空は気まぐれで困る。
どうしようか…と空を睨んで考えていた私の視界に
チラッと赤い色が過ぎる。
「良かったら、入ってく?」
真っ赤な傘を広げ
こちらを見てコテンと首を傾げるクラスメイト。
これがただのクラスメイトなら
即座に頷くところだが…。
「えっ…と、イインデスカ…?」
片思いの相手となれば
仲良くなるチャンス!という期待と
ほとんど密着して歩くことになるという緊張と
ヘマして嫌われたらどうしようという不安で
ドギマギしてしまうのは仕方のないこと。
その日の帰り道の私の顔は
意中の子の傘に負けないくらい
真っ赤だったに違いない。
6/19/2023, 1:42:02 PM