「落ちている」
わたしはそう思った。
背中を下にして、体をくの字に曲げて
何処か高いところから落ちている。
不思議と恐怖はなかった。
いつまでも空は遠くならないし
いつまでも地面は現れない。
ただ、落ちていく感覚と浮遊感だけがあった。
ふと、自分の瞼が閉じていることに気付いた。
周りの景色は見えているのに
瞼は固く固く閉ざされていた。
開けようと思って力を込めても
まるで糊でも付いたかのように重い。
瞼に意識を集中して
渾身の力で勢いよく開く。
パッと明るくなった視界の先には
見慣れた自室の天井があり、
背中は硬い床の上に落ちていた。
「あぁ、またベッドから落ちちゃった。」
わたしは、とっても寝相が悪い。
6/18/2023, 1:39:47 PM