空の海月

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11/3/2023, 2:10:57 AM

夜、灯を消してぼんやりと天井を見上げる
こつこつ降り積もる自己嫌悪と希死念慮が
穏やかに己の首を締め付けて

うまく話せなかったこと
古い古い恥の記憶
人と混ざれぬ醜い嫉妬
失敗、叱責、冷笑

降り積もり降り積もり
じわりじわりと息が閉まる

ぷつりと赤を作る気力などなく
終わりを作る程の勇気も不幸もないために

かわりに降り積もり今日の反省文を
一枚一枚増やし続けて

とぷりと眠りにつく前に
今日の己を殺す夢を描いて

己は己を許せはしないが
明日を生きる事は出来るかと

【眠りにつく前に穏やかな殺害を】

11/1/2023, 3:10:39 PM

動かない君の髪を梳く
少し毛が抜けてしまうけれどしかたない

香りの強い香水を君に振りかける
君は香りの強いものは嫌いだったけど仕方ない

君の瞳を取り除き硝子をはめる
君の瞳は美しかったけれど仕方ない

剥がれた皮の代わりに布をつけ
解ける髪の代わりに糸を縫う

仕方ない仕方ない

これ以上腐らぬように防腐剤を撒けど
これ以上取れぬように包帯を巻けど
なにもかもが意味を成さず朽ち果てるけれど仕方ない

君は僕から逃げたいだろうが

死人に口なし

………永遠に僕のモノってことさ】

10/29/2023, 4:25:13 PM

やぁやぁ、こんにちは
いや、なに、少しばかり私の話を聴いてくれるかい?
そんなに時間をとらせやしない
ほんの少しだけでいいからね


うんうん、ではでは、はなそうか
なぁ、君は人で言う勇者とやらなのだろう?
沢山の魔族を滅ぼしついこの時、念願の魔王を打倒した

それはもう見事!君はたちまち英雄だ!!

君達人にはこれから平和が訪れるのだろう?

羨ましい限りだよ



私達魔族には滅びしかないというに

なぁ、君は弱々しい魔族の子さえ殺したね
なぁ君は、ただ強かった我等が王を殺したね

ねぇ、君は、これからどうなるのだろうね


私達の王様は、魔王様は、あのひとは
優しかったよ、私達を愛してくれていたよ
人に追いやられ住処を無くした魔達を受け入れてくれた
人と魔、共に有ろうなどと言っていたよ



なぁ、君達はこれから本当に幸せになるのかい?
平和になるのかい?
私達を悪にしたあとは誰を悪にするんだい?

なぁ、君は本当に英雄かい?
彼ら人類が悪とした我等が英雄を殺した君は



ハッピーエンド?…ははっ、反吐が出る」


【これからの話、もしくは弱者の物語
       ────それは、もう一つの物語】

10/29/2023, 9:27:09 AM

何も見えない
水の中のように反響する音
大きな大きな温もりの中

ここから出るのは少し怖い
怖い怖い、夢のうち

それでも聞こえる音に耳をすませば
やさしいやさしい子守唄がきこえくる

あいしているよ
あいしているわ

そばにいるよ
そばにいるわ

いとしいこ
いとしいこ


まだ出るのはこわいけど
この暗闇は安心するけど

きっとこれから苦しいけれど

きっとこれからたくさん泣くけど


くらがりから出たらあかるいから

きっとそのさき、泣いた以上に笑うから

あいしてね
そばにいてね

だいすきだよ

【暗がりの中からの愛情を】

10/26/2023, 11:48:09 PM


醜い醜い山の化け物
それがボクの名前でした

汚い気持ち悪い怖い化け物
それがきっとボクでした

「こ、こ?、わ……い?」

繰り返し繰り返し、聞いたことは
全部覚えれるのがボクでした


冷たい冷たい白くて丸い、かけた骨
それがボクの大切でした

これがなにかも覚えてませんが

確かに大切でした



夢を見るのです
醜いボクの体に触れて
優しく声をかける誰かの夢を

その人は決まって言うのです

「あ、ぁい、し、て、……る…?」

愛してる、あいしてる

何度も何度も言うのです

ボクには意味も分かりませぬが
確かにこう呟くだけで胸元がほぅと暖かくなり

化け物と言われることすら気にしなくなるのです

何度も何度もボクは繰り返しました
何度も何度も……


【誰も知らぬが化け物の心理】

「なあ、知ってるか?
 山でな、歩いてると愛してるだとか
 随分と寂しそうな声で聞こえるのだと
 あぁ、でも近寄っちゃいけねぇぜ?
 ありゃあ捨て子の呼び鳴きだ
 呼ばれて行った先で恐ろしい化け物を見たのだと
 きっと近寄ったなら食い尽くされる
 

 さも恐ろしい話さね」

【愛言葉、呪いの言葉、夢の話】

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