醜い醜い山の化け物
それがボクの名前でした
汚い気持ち悪い怖い化け物
それがきっとボクでした
「こ、こ?、わ……い?」
繰り返し繰り返し、聞いたことは
全部覚えれるのがボクでした
冷たい冷たい白くて丸い、かけた骨
それがボクの大切でした
これがなにかも覚えてませんが
確かに大切でした
夢を見るのです
醜いボクの体に触れて
優しく声をかける誰かの夢を
その人は決まって言うのです
「あ、ぁい、し、て、……る…?」
愛してる、あいしてる
何度も何度も言うのです
ボクには意味も分かりませぬが
確かにこう呟くだけで胸元がほぅと暖かくなり
化け物と言われることすら気にしなくなるのです
何度も何度もボクは繰り返しました
何度も何度も……
【誰も知らぬが化け物の心理】
「なあ、知ってるか?
山でな、歩いてると愛してるだとか
随分と寂しそうな声で聞こえるのだと
あぁ、でも近寄っちゃいけねぇぜ?
ありゃあ捨て子の呼び鳴きだ
呼ばれて行った先で恐ろしい化け物を見たのだと
きっと近寄ったなら食い尽くされる
さも恐ろしい話さね」
【愛言葉、呪いの言葉、夢の話】
10/26/2023, 11:48:09 PM