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1/4/2023, 1:47:35 AM

「あーっ間に合わなかったか」
僕は君と日の出を見るために海に来た。来た……のだが……どうやらもう日は出ていたみたいだ。
「ごめん、私が行こうって言ったのに……」
君は寒くて赤くなった頬をマフラーに隠して頭を下げて謝った。
「ううん、僕だってちょっと車を出すのが遅かったし、それに……」
僕がオレンジに染まった海の向こうを向くと、君も顔を上げて向く。
「日が出た瞬間じゃなくても好きな人と見れたら僕はそれだけで幸せ者だよ」
そう言うと君の顔がみるみる笑顔になっていき僕の方へ向かってくる。飛びつく様に僕を抱きしめた。
「ありがと!私もね、あなたと見れたならどんな景色でもいいんだよ」
白い息を出して笑う君の笑顔をずっと守っていたいなと思った。




一年後、僕は君のマフラーを抱きしめて一人で日の出を迎えた。
「日の出に間に合っても、君が居なくちゃ何も感じないなぁ……」

11/21/2022, 1:41:59 PM

頭も良くないし、運動もできない。
性格がいい訳でもないので人望もない。
モテたことはないし、身長も特別高くない。
親にも見捨てられ
行く宛てもないからふらふらと生きている。
どうしたらいいの?と誰かに聞ける人間が羨ましくて
妬ましい。
俺はどうしたらいいのかも分からず、
どうしたらいいの?と聞ける人もいない。
そんな俺に存在価値はあるのだろうか。

11/20/2022, 12:06:39 PM

行く宛がなかった俺を家に置いてくれたこと。
家事がある程度できるようになって褒めてくれたこと。
俺の誕生日を祝ってくれたこと。
休日に一緒に出掛けて見たことのない景色を見せてくれたこと。
俺からのプレゼントに喜んでくれたこと。
体調を崩した時に苦手な料理を頑張ってくれたこと。

貴方との思い出は挙げればキリがない、過ごした日々は全て俺にとって大切で忘れられない宝物になりました。

「これからも一緒に宝物を作ってくれますか。」

「もちろん、ずっと一緒だよ。」

照れ臭そうに目尻に少しばかりの雫をつけた貴方の笑顔はまた、俺の宝物になった。









「ああ、ずっと一緒って言ってたのになぁ……。」
俺はそう小さく呟き、冷たくなった貴方の手を握った。
この出来事も宝物?







11/19/2022, 10:24:06 AM

今日はあの人の帰りが遅かった。
何かあったのかと心配しながら暫く玄関を眺めているとドアノブの鍵が回り、古いアパート特有の重い音を鳴らしながらドアが開く。
「お帰りなさい!」
いつもの何倍か程大きな声で出迎えると、お揃いのマフラーを纏った彼は目を細め口角を上げた。
「ただいま、遅くなってごめん。」
手先が赤く冷たくなった彼の手を握った。
「寒かったでしょう、夜ご飯出来てますよ。」
「ありがとう、でもちょっと待って。」
という彼に顔を向け、彼は手に下げていたビニール袋の中身を見せてくれた。
「これ、職場の人からもらったんだよ。」
笑顔で何やら丸いものを差し出す。
これは見たことがないけれど確か誕生日の時に出てきたケーキについてたロウソク、というものに似ていた。
「なんですか、これ」
「これはね、キャンドルといってここに火をつけて使うんだよ。」
「ロウソク、と何が違うんですか。」
「うーん、それは目的、かな。ご飯を食べたらやろっか。」
俺はよく訳が分からなかったけど彼が持ってくるからきっといいものに違いない。
そのあと俺が作ったシチューを食べながら前より上手くなってると褒められてすごく嬉しかった。




キャンドル、というものをこれから使うらしい。
彼は電気を消して、こういうのは雰囲気が大事だからと言ってわざわざマッチでキャンドルに火を灯した。
その瞬間、キャンドルに釘付けになってしまった。
少し揺れる赤々とした炎、少しづつ溶けていく蝋。それはとても美しかった。
「たくさんあればもっと綺麗なんだけどね。」
と申し訳なさそうに言う彼の顔はオレンジ色にほんのり照らされていて、夕日を見た時のような懐かしさを感じた。真新しい感情に戸惑い少し寂しさを感じたが、彼と見たキャンドルはすごく綺麗で記憶にしっかりと記録された。