NoName

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「あーっ間に合わなかったか」
僕は君と日の出を見るために海に来た。来た……のだが……どうやらもう日は出ていたみたいだ。
「ごめん、私が行こうって言ったのに……」
君は寒くて赤くなった頬をマフラーに隠して頭を下げて謝った。
「ううん、僕だってちょっと車を出すのが遅かったし、それに……」
僕がオレンジに染まった海の向こうを向くと、君も顔を上げて向く。
「日が出た瞬間じゃなくても好きな人と見れたら僕はそれだけで幸せ者だよ」
そう言うと君の顔がみるみる笑顔になっていき僕の方へ向かってくる。飛びつく様に僕を抱きしめた。
「ありがと!私もね、あなたと見れたならどんな景色でもいいんだよ」
白い息を出して笑う君の笑顔をずっと守っていたいなと思った。




一年後、僕は君のマフラーを抱きしめて一人で日の出を迎えた。
「日の出に間に合っても、君が居なくちゃ何も感じないなぁ……」

1/4/2023, 1:47:35 AM