目が覚めると私はまずカーテンを開ける。
晴れの日はいっぱいの光を浴びて
雨の日はちょっと憂鬱
美しい世界の景色に私は今日も生きようと決心する。毎日私はそうして生きている。
私が好きなのは黒
だって、気高い、何色にも染まらない、素晴らしい色だから。
あなたがいたから私は前を向けた。
あなたがいたから私は苦手な人にも優しくなれた。
あなたがいたから私は楽しくいれた。
あなたがいたから、私は変われた。
あなたと友達になれた時、凄く嬉しかった。明るくて、面白くて、私のことを天使だと言ってくれて。
一緒に勉強しようと言ってくれた時。
一緒に登校しようって言ってくれた時。
本当に嬉しかったのを憶えている。
でも、今はどうかしら。
あなたがいるから私は嫉妬に狂いそうになっている。
あなたがいるから私は1番になれない。
あなたがいるから私はあなたと離れる選択をとった。
あなたがいるから、私は、息が詰まりそうだった。
私の方が優秀だったのに、ただひとつ、勝てなかった人間性、それだけで私は1番になれない。
あなたがそれに気づいているかは分からない。でも、あなたも察してはいるのでしょう。あなたは私のことをいつの間にか天使と言ってくれなくなった。
顔を合わせても挨拶しかしなくなった。
あなたがいなければ良かったのに。
あなたが可愛いと、天使だ、優しい、と、褒めてくれた私は、あなたのせいで堕天した。
私たちは最初から相いれなかったのかもしれない。
ねぇ、だから。私たち別の場所で幸せになりましょうね。私はあなたがいないところでも幸せになれるのよ。
あなたがいたから私はこうなった。
ねぇ、今どんな気持ちかしら
「雨……」
「生憎の空模様だね」
ぽつりぽつりと溢れ落ちる雨を見て呟く私に彼はそう笑った。朝はあんなにもお天気だったと云うのに、ご機嫌だったはずの空は今、こんなにも荒れている。天気予報ニュースにも予測出来なかった雨は風に吹かれて私の足を濡らした。
「傘持ってくれば良かったかしら。天気予報をあてにしすぎたわ」
「仕方ないよ……予想は予想だしね」
ただの推測、と、けらけら笑う彼はぐーっと伸びをした。
たくさんの生徒が「傘入れてー!」「雨強!」なんていいながら帰っていく。人によっては仲睦まじく相合傘をして身を寄せあって帰路についている。
なかなか趣深い光景に私はほぅっと無意識にため息をついた。
「傘持ってきてる?」
私は隣に立つ彼に問うた。
彼は背中に背負った鞄から黒色の折りたたみ傘を取り出して私に見せつけた。
「相合傘でもする?お嬢サマ」
「紳士はもっと恭しくお誘いするものでしてよ。」
「生憎僕は紳士じゃないな」
笑いながら傘を開きかけた彼の手を私は制止した。
「濡れて帰りましょう」
目を見開く彼。
しばらくぎょっとしていた彼も、いつの間にかふっと笑っていた。
「そうだね」
相合傘をしようと開きかけた傘を閉じて私たちは雨の下を歩いて帰った。
今日は生憎の雨。
だからあえて、相合傘のような甘いことをせずに、濡れて帰ろうか。
未来のことを考えたことは殆どない。
今が良ければ全て良い、それが私の考えだからだ。
未来は大切だ、私の考えの方が可笑しい。例え今たくさんのお金を持っていたとしても、未来になければ生きられない。今たくさんの友人がいたとしても、未来になければ孤独に生きるしかなくなる。今何かを持っていても、それが未来になければ意味は無いのだ。
未来は大切だ。
でも私は今を考える。
今楽しければ私は勉学も放り投げて踊り狂う。
今良いならば私は友人と永遠の別れを告げる。
今面白いならなんでもいい。
未来に無頓着な私の行く末は何処だろう。
ここは極楽浄土、否、地獄。
未来を考えない私。
この地獄で、今という地獄で、私は踊り続ける。
美しき世界の紳士淑女様。
私を見て。今、わたしをみて。
未来ではなく、今見て欲しい。
未来を捨てて、今を生きる。今を楽しんで踊り狂う私を。
そうして笑いなさい。あなたは阿呆なのだと。
いえ、そう笑わなくてもいいのだった。だって、何を言われても私は、私以外のものが阿呆だと信じているから。