「何色が好き?」
全部だよ、みんな好き
「つまんないのね、その中で1番好きなのを聞いてるのに」
おんなじくらいだよ。みんなおんなじに好きだよ
「全部おんなじに好きってことは、全部好きじゃないってことと一緒よ」
ごめん。よく分からないや
「嘘つき。本当は誰よりも分かってるくせに」
…そんなことないよ
「じゃあ、何色が好き?」
黄色と、あと、赤
「適当に言うのはだめよ」
適当なんかじゃないよ。君の色だから。
お題『好きな色』
君がいたせいで
僕の人生めちゃくちゃだ
君の望みは叶ったかい?
今さら他の人とどうにかなろうなんて思わないでね
始めたのは君の方なんだから
お題『あなたがいたから』
今年は予定よりも早く梅雨入りしたせいで、普段はしっかり者の彼女も、今日は傘を忘れてしまったようだ。
家も近いし、僕の傘に入りなよと誘った。彼女のプライドは高いから断られるかと思ったけど、意外にも返事は色良かった。
土砂降りではないけれど、雨足は中々に激しかった。そんな中を、僕と彼女は会話もなく歩いていた。
相合傘も、意識しなければそう色気のあるものでもない。そもそも相合傘をするような仲の人であれば、そう近くとも別段恥ずかしくはない。むしろ助け合いの精神が近いだろう。
雨の日は、彼女の声が聞き取りづらい。傘を持っているから尚のこと、距離も遠くなる。でも、二人で一つの傘を使えば、それも解消される。
二人とも少し濡れてしまうのが難点だけど、そこさえ目を瞑れば結構実用的だ。
そのことを彼女に熱弁し終えて、僕を見る目が冷めていることに気づいた。確かに、これじゃあ君と相合傘したいですと言っているみたいだ。別に恥ずかしがることではないと伝えたかったんだけど、空回りしてしまった。
彼女の次の言葉は何だろう。ちょっと嫌な予感がする。
明日には「あの人は長々と言い訳してまで私と相合傘がしたい」という話がクラスに知れ渡っているか、
「良いスピーチね、まだレポート終わってないんでしょ、それを提出すればいいんじゃないの?」と皮肉を言われて終わりか。出来れば後者の方がマシだけど…。
果たして答えは無言だった。
何も無いなら無いで、何だか気まずくなる。ちらと彼女の方を見ると、髪から少し覗く耳が赤くなっていた。そっぽを向いているせいで、それが余計に目立つ。
きっと、指摘すれば怒るだろうから言わないけれど。この瞬間だけは、相合傘もロマンチックなものになった。
お題『相合傘』
昨日見た夢。
らせん階段から、向こうのビルに飛び移るゲームを十数人でしていた。
ビルまでの距離は60センチくらいで、ジャンプすれば割と簡単に届きそうだ。
最初に何人かが軽々飛んでいって、次は私の番。
前の人の真似をして、軽く飛んだら少し力が足りなかったようで、ビルと階段の合間に落ちてしまった。
そこには人の腕くらいの太さの棒があった。私は運悪く、その棒がお腹の真ん中に刺さってしまった。
動こうにも手足は動かなかった。痺れる、や、痛い、よりも、感覚がなくなっていくことが恐ろしかった。首だけは何とか動かすことができたので、上を見あげると、飛び終えた子もそうでない子も皆んなこちらを見ていた。
その瞳孔が段々大きくなって、肉食動物の瞳みたいだなんて考えていると、
目が覚めた。
お題『落下』
ほんの少し前のことです。一年も、経ってないと思うんですけど。
いや、それを思い出したのが少し前なんです。経験したのはもっとずっと昔、それこそ、覚えていたと言うよりもフッと浮かんだと言った方が正しいほど小さい時のことです。
小学校に上がるか上がらないかのころ、僕は母と牧場へ行きました。家から遠くて、着いた時には眠い瞳を擦っていたのを覚えてます。
その時はちょうど、乗馬を体験できるコーナーがあったので、母と一緒に乗りました。
幼児が思い浮かべる動物って、絵本みたいにデフォルメされてたり、多少は可愛くなってるじゃないですか。僕もそうで、白くて小さなポニーを想像してたら、僕よりも父よりも大きな動物がいるんですもん。めちゃくちゃ怖くって。
ちょっと涙目になりながら、手綱を握ってたんです。でも、乗ってると怖いとか考えないんですよね。僕は高いところが好きだったし、ゆっくり歩いてるから結構安定してて、むしろ楽しかったです。
安心と、遠出した疲れもあって、ウトウトしながら乗っていました。
蹄鉄のちゃりちゃり鳴る音の、あの安らぎと一時の夢。僕が、ジョッキーになったきっかけです。
お題『1年前』