ななせ

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5/28/2024, 10:39:38 PM

あいつは、頭が良かった。小狡いとか、世渡りが上手いとかではなく、知識の分野でずば抜けて頭が良かった。
ただ、ちょっとズレてる所があって、誰かといるところを見たことはそんなに無かった。
でも俺にはあいつが誰より面白くて、最高の友達だったから、毎日話しかけに行っていた。
生真面目に見える癖に、考えてるのは俺と変わらない、時には俺より馬鹿なことも考えていた。あいつの武勇伝(?)に、こんなのがある。
「冬服の限界って、どこまでなんだろうな」
と呟いたのが全ての始まり。俺は特に気にせず流していたけど、案外あいつは本気だったようだ。次の日から、あいつは上着まで着こんで登校するようになった。
教師にも咎められていたのに、どこ吹く風で聞く様子もない。最初は俺も笑ってたけど、夏も真ん中になると呆れてきた。
見てるこっちも暑苦しいし、熱中症になるだろ。そう言ってもあいつは笑って、「でも、知りたいから」と言った。流石に開いた口が塞がらなかった。
そして数ヶ月、あいつはとうとうこの夏を冬服で乗り切った。あの根性には、俺も拍手喝采を贈るしかない。
そんなものすごい伝説を持つあいつは、
テスト前に、ノートを貸してもらったことがあった。そこには単語とメモくらいしか書かれてなくて、本当に『自分だけ分かる』って感じの。
借りる相手間違ったかもな〜なんて思いながらページをめくってると、丸いシミを見つけた。
そこだけ紙がよれよれしてたから、水でも零したのかと思ってた。
数日後、風呂場で何気なく思い出した時に気付いた。あれは汗だ。
考えてみればなんて事はない、そりゃあ夏だし汗もかく。何より、あいつは長袖で過ごしていたんだから。
そうかそうか、とうんうん頷いたら、何だか笑ってしまった。あんなに人間味のない奴も汗をかくってことが、何だかおかしかったんだ。
うん。ごめんな。嘘だ。
みんな嘘だ。
あいつと仲が良かったのも。冬服で過ごしてたのも。
俺な、あいつが好きだったんだよ。
でも、俺とあいつが仲良くなれるわけ無いんだよ。ちょっととズレてるところなんてない。見た目通りの真四角だった。
騙してごめんな。でも、ノート借りた時に、シミがあったのは、本当だよ。
嬉しかったんだよ。ごめんな。



お題『半袖』

5/27/2024, 10:39:03 PM

ここは天国です。
ここに娯楽はいっさいありません
幾星霜が経とうと、何も変化はありません
ここは静かで、話し声さえ静寂に溶けるよう
料理も出はしますが、満足できる量ではありません
お盆になれば、あなたは後悔するでしょう


ここは地獄です。
あなたが望むものは全て手に入ります
毎分毎秒生まれ変わるような、そんな気分になります
鳥の鳴き声はどこへ居ても聞こえます
食べ物も、夢中になってかぶりつくほどです
お盆になれば、あなたは笑みを浮かべるでしょう


「先生、これ天国と地獄が逆になってますよ。」
「ん?合ってるよ」
「え、でもホラ、」
そう言って問題の文に指を差す。
「ああ。これはね、天国に行けるような人は、どんな場所でも娯楽を見つけられる人だからだよ。飢餓も悩みも無くただ安らかな気分でいられる。そこが天国だ。
地獄では全ての物が手に入る。そして一瞬のうちに消えていく。何故ならその方が絶望が深いからだ。罪人に夢を見させて奪い取る。そこが地獄だ。」
「天国に行く程の善人は、己の死を悼む者を見て、死んだことを後悔するだろう。しかし、悪人の死を悼む者などいないのと同じ。地獄から出られて清々するのみだ」
「へえ…何だか、悪魔の契約みたいですね」
「実際に、見てみなければ分からないのさ」


お題『天国と地獄』

5/26/2024, 11:06:16 AM

オデ知ってるど。
これちょっと前に『星に願いを』で見たんだど。
つまりはネタ切れなんだど。
もうオデは書くの諦めたど。


お題『月に願いを』

5/26/2024, 1:48:24 AM

戸を開いたその瞬間に
鼻を突く雨の匂い
でも、それを気にする暇もなかった
濡れるのが嫌なあの子の為に
傘は家に置いてきた
持ち物はスマホと財布だけ
服は水分をすっかり含んで、少し重い
スマホが水没していないことを祈る
降りしきる雨は
僕のまぶたから落ちる雨も洗い流す
どうかあと数分は止まないでほしい
通る人のいない路地で
みっともない姿を見られずに済んだことに安堵した


お題『降り止まない雨』

5/24/2024, 11:54:08 PM

何にも囚われずに笑っていた
あの無邪気な頃が懐かしい
眩しい光の中を堂々と走っていた
今の裏びれた生活とは真逆
もう涙さえ出ない
あの頃の私のこころは
一体どこへ行ったのか
隠れてしまっただけなのなら
消えてしまったのでないのなら
もう一度、出てきてください
今の私にはあなたが必要


あのね、わたし知ってるよ
空に吸い込まれたんだよ
見てたもん、知ってるよ
だれも信じてくれないけど、ほんとだよ
空が取ってっちゃったんだよ
あんまりきれいだったから
ほしかったんだろうねえ
ゆるしてあげて、空もうらやましかったんだよ



お題『あの頃の私へ』

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