ここは天国です。
ここに娯楽はいっさいありません
幾星霜が経とうと、何も変化はありません
ここは静かで、話し声さえ静寂に溶けるよう
料理も出はしますが、満足できる量ではありません
お盆になれば、あなたは後悔するでしょう
ここは地獄です。
あなたが望むものは全て手に入ります
毎分毎秒生まれ変わるような、そんな気分になります
鳥の鳴き声はどこへ居ても聞こえます
食べ物も、夢中になってかぶりつくほどです
お盆になれば、あなたは笑みを浮かべるでしょう
「先生、これ天国と地獄が逆になってますよ。」
「ん?合ってるよ」
「え、でもホラ、」
そう言って問題の文に指を差す。
「ああ。これはね、天国に行けるような人は、どんな場所でも娯楽を見つけられる人だからだよ。飢餓も悩みも無くただ安らかな気分でいられる。そこが天国だ。
地獄では全ての物が手に入る。そして一瞬のうちに消えていく。何故ならその方が絶望が深いからだ。罪人に夢を見させて奪い取る。そこが地獄だ。」
「天国に行く程の善人は、己の死を悼む者を見て、死んだことを後悔するだろう。しかし、悪人の死を悼む者などいないのと同じ。地獄から出られて清々するのみだ」
「へえ…何だか、悪魔の契約みたいですね」
「実際に、見てみなければ分からないのさ」
お題『天国と地獄』
5/27/2024, 10:39:03 PM