私はあのお方を尊敬しております。崇拝しております。
そして、畏怖しております。
そう、あのお方は恐ろしいのです。
蛇のようにまとわりつく、謎めいた妖しさがあるのです。
人では無い何か──とにかく、そういった類いの怖さがありました。
それはあのオーラから発せられているのかもしれません、私はあのお方に会って、生まれて初めて本物のカリスマ性と云うものを見たように思います。
それとも、彼の体躯からでしょうか。
彫刻のような肉体から溢れる野生がそうさせるのでしょうか。
それとも、あの月光を吸収する黄金の毛髪でしょうか。
いいえ、いいえ、違います。
あのお方の恐ろしさの根源は、海辺に落ちている硝子に似た、あの真っ赤な瞳なのです。
嗚呼あの瞳!
此方を糾弾するような、見透かすようなあの瞳!
私はあの目が恐ろしいのです
あの瞳に見つめられると、己が道端に棄てられた塵芥よりも価値のないものに思えて駄目なのです
私にだって、自尊心はあります。存在を否定されるなんて我慢なりません
…思わず、手を上げたくなる
私を誰だと思っているんだと叫びそうになる
何者でもありません、私は何者でもないのです
私が何者であっても、あのお方には関係の無いことです
もう、近頃は、もう駄目です。
あのお方を見ると、むらむらと湧き上がってくる気持ちのまま、太い首に手を回して締め付けたくなる。
できない事です
私には、天地が逆さになろうとできっこない!
ああけれど、あの瞳に射抜かれるのは辛いのです
もういっそ、私が死んでしまいたい。
お題『見つめられると』
私は、あなたに私の心をあげたいんです。
これは恋心の比喩ではありませんが、心
臓のように直訳されると困ります。
もし私に何かあって、あなたがとても悲
しんでいるなら、どうか私の心をもらっ
てください。
あなたが笑ってくれるなら、私は自分の
心なんか少しも惜しくありません。
いえ、すみません。
私は一つ嘘をつきました。
そんな善意からではありません。
もちろん善意もありますが、それは本当
に私の自己満足です。
私の家の2階の小さな部屋。その部屋の
机の引き出しにあります。
引き出しは閉まっているでしょうが、鍵
はちゃんとお渡ししています。
あなたは既に忘れているかもしれません
が、あなたはそれをしっかり持っています。
私に何かあったら開けてください。
きっと、開けてくださいね。
私からのお願いです。
お題『My Heart』
狡いなあ
君は愛されてて僕は見向きもされない
君はもう愛は要らないと言うけれど、僕は愛を貰った事すらない
歪んだぼろぼろの愛でも良いから欲しい
君は欲しいと望んだものを与えられて不満がる
なんて贅沢、なんて非道
僕が焦がれても手に入らない愛を溢れ返してこんなものと投げ棄てる
愛されたいと願った僕は嫌われて君は無条件に愛される
皆に愛して欲しいから演じたら八方美人で中身がない
君は演じなくても飾らない所が好きだと言われる
君は好意を無下にしても嫌われる事がない
僕は好きと言っても気味悪がられるだけなのに
君は何が欲しいんだ
君は全て持っているくせに、ないものねだりなんかして何がしたいんだ
頼むから、これ以上僕を惨めにさせないでくれ
お題『ないものねだり』
「君は僕を好きじゃないのに付き合う意味が分からない」なんて、言わないでよ。
好きな人、いないんでしょ?
私の笑顔が好きなんでしょ?
人に優しくしたいんでしょ?
なら私と付き合ってよ
それなら私もあなたも幸せじゃない
嘘で付き合っていて幸せなのかって?
何言ってるの
私は心なんかいらないわ
形だけが欲しいのよ
そうよ、あなたの彼女って称号が欲しいの
嘘よ
心も欲しいわよ
でもそんなこと言ったってあなたくれないじゃない
ケチよね
どうせ誰にもあげないくせに
は?
あげたい相手がいる?
誰よ
私より綺麗で頭が良くってお金持ちで人気者でそれと…とにかく私より優れてる人じゃなきゃ駄目なんだから
私と同じくらい?
何それ
そんな女いる訳ないでしょ
どこのどいつよ
言っとくけど、デタラメだったら承知しないから
ちゃんとどこの大学か言いなさいよ
学部だって言わなくちゃ
そもそもその女の名前は何よ
この大学の法学部?
私と同じじゃない
そんな女いたかしら
ねえ名前は?
もうイニシャルだけでも良いわ
言ったらバレる?
はあ?
誰か知りたいから聞いてるんじゃない
馬鹿じゃないの
教えろって言ってんのよ
もったいぶらずに教えなさいよ
変な所で勘が悪いって何よ
良いからさっさと名前を言いなさい!
お題『好きじゃないのに』
誰かの特別な存在になりたい
自分は誰も特別じゃないのに
一番になりたい
平凡が好きなのに
誰よりも強くありたい
弱い自分を認めて欲しいのに
誰かと話したい
一人で居たいのに
こんな感情、おかしいと思う?
でも、きっと理屈じゃないの
そうでしょ
お題『特別な存在』