ななせ

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3/12/2024, 12:01:27 PM

ねえ
あたしのこと、好き?
あたしはあなたが好きよ
だからね、死んで欲しいの
冗談だと思う?
あたしが冗談なんか嫌いなの、知ってるでしょう
そう、本気よ。あたし

あたししか見ないで欲しいなんて理由じゃないわ
そんな陳腐なものじゃないの
ほんとはあたしね、あなたがあたしのことを好きかなんてどうでも良いの
だって、あなたがあたしを嫌いでも、あたしがあなたを好きなのは変わらないわ
ええ、だからあなたが他の女を好きになってもあたし何も云わなかったでしょう?
それもひとえにあなたを愛しているからよ
あなたの気持ちはどうだって良いの
重要なのはあたしがあなたを愛しているかよ

あなたを愛したままでいたいから殺すと思ってるの?
そんな訳がないじゃない
あたしがあなたを嫌いになることなんてないわ
あなたの存在が好きなんだもの

あたしね、好きな人の色んな事が知りたいの
どんな事をすれば喜ぶのかも、どうして悲しんでいるのかも、暇な時の癖も何もかも全部知りたいの
この3年間で、あなた色んなことがあったわね
色んな顔も見たわね
でもね、一つだけ見てない顔があるの
知らない事があるの
あなたが、死ぬときの顔
ねえ、あたし知りたいわ
お願いよ


お題『もっと知りたい』

3/11/2024, 12:14:55 PM

「アンタなんて産まなきゃ良かった」

それが、お母さんの口癖です。わたしはお母さんが大好きだけど、この口癖はあまり好きではありません。
お母さんは、とても優しい人です。わたしが駄目な子だから、社会に出ても恥ずかしくないように躾けてくれます。何より、こんなわたしを今日まで育ててくれています。
だから、わたしが家事をするのも、バイトをして家にお金を入れるのも当然のことなのです。
みんなは、「それはおかしい」と言うけれど、わたしはおかしいなんて思いません。そんなことが言えるのは、みんなにはお父さんもお母さんもいるからです。
わたしにはお父さんがいません。わたしのせいで死にました。なので、わたしの家ではお父さんの話をめったにしません。お父さんの名前を出すと、お母さんは泣いてしまうのです。お母さんはわたしをよく殴るので痛いのには慣れました。でも、泣かれるとどうしていいのか分からなくなって、わたしも泣きたくなります。
でも、悪いのはわたしです。だから、わたしが泣くのはおかしいことなのです。

お母さんは、時々どこかへ行きます。たくさん字が書かれた手紙を置いて、どこかへ行きます。その字は下手くそで読めないのですが、きっと、わたしを心配する文が書かれているのでしょう。帰ってくると、お母さんはわたしをぶった後に抱きしめてくれます。きつく抱きしめてくれます。ぶたれた所が痛むけど、その時間、わたしは世界一幸福な子でした。

ある日、わたしはお母さんと久しぶりに遊びました。お母さんがお料理を教えてくれると言うので、台所に立つと、お母さんはわたしに包丁を向けました。お母さんは悪ふざけが好きなので、よくそういうことをするのです。
わたしは笑って、お母さんを突き飛ばしました。軽い力です、だって、遊びなんだから。本当です。けれど、お母さんはぐらりと倒れてしまいました。お母さんのお腹には、包丁が立っています。
「お母さん、大丈夫?」
お母さんは目を細めて、わたしを見ました。お母さんは何か言っていたけれど、それは聞こえませんでした。

お母さんは、お花に囲まれて目を閉じました。そして、ホコリよりも小さな灰と、両手に収まるほどの小さな小さな白い塊になりました。

わたしが悪い子だから、あの平穏は壊れてしまったのです。わたしが良い子だったら、お母さんも、ちっちゃな壺にならなかったのです。
わたしが壊したんです。
わたしは駄目な子です。
そんな悪い子のわたしを叱ってくれるお母さんも、もういません。

お題『平穏な日常』

3/10/2024, 1:14:30 PM

「平和って、何なんでしょうね」

隣で呟いた新人兵を一瞥する。戦争でついにおかしくなっちまったか?

「さあな、フランスの国旗でも見たのか?」
「残念ながら愛国心なんて持ち合わせてませんよ。…平和なんて、こんなことしてまで守るものなのかなって」
新人兵は俯いていて、その表情は見えない。

「知らないな。まあ、ここに来てんのは国からの命令なんだ、逃げようなんて考えるんじゃねえぞ」
「そんなこと、考えてません。
「ただ、彼女を故郷に置いて来てるんです」
俺は深く溜息を吐いた。馬鹿馬鹿しくって仕様がない。最近の若者って奴はみんなこうなのか?
「あーあーそうかよ。言っとくがな、戦場でそんなこと言わない方が良いぞ。そりゃ死亡フラグってやつだ」

俺の言葉に、新人兵は少し腹を立てたようだった。
「はあ、まあそうですけど。
「でも、こんな一面砂色の所じゃそれくらいしか華がないですよ」
「仕方ねえよ。ま、これが終わったら酒でも飲もう」
「先輩こそ、それ死亡フラグです」

微笑んだ新人兵の体が後方へと倒れた。鋭い銃声音が鳴る。ああ、音が遅れて聞こえたんだ、一瞬頭に浮かんだことも消えてしまった。
咄嗟に体を伏せ、銃を構える。敵は既に遠ざかっていた。

新人兵はまだ意識があった。だが、出血量が多く、その意識さえ朦朧としている。素人目に見ても助からないことが分かった。

「だから言ったじゃねえか、死亡フラグだって。
「まあ、それは俺もだったが」

俺がぽつりと漏らすと、新人兵は破顔した。

「平和の意味が、分かったんですよ。だから、俺が撃たれたんです。
死亡フラグなんか、関係ありませんね」

新人兵は瞳を閉じた。昼寝をするかのように、心地よく天国へと誘われていった。
お前は考えなしだ。そんなことを言い残して、ただ一人生き残った俺にどうしろって言うんだ。

「なあ、何なんだよ。平和って。教えろよ。なあ」

どれだけ揺さぶっても、新人兵は起きなかった。



お題『愛と平和』

3/9/2024, 11:20:30 AM


どんなに大切な出来事も、いつかは忘れてしまう。
私は、過ぎ去った日々の冷たさも温もりも全て忘れて、「あの頃は良かった」なんて事を言う。その時あった様々の事も覚えていないのに。
けれど、思い出す時もある。長い間放っておかれた記憶の埃を払って、おはようのキスをして、懐かしいと抱きしめる。そんな時はきっと来る。

初めて来る場所なのに、懐かしいと思う事がある。それはもしかすると、前世の忘れてしまった記憶なのではないだろうか。
数十年、もしくは数百年の時を超えても、思い出す時は必ず来るのだろう。


お題『過ぎ去った日々』

3/8/2024, 12:00:28 PM

お金より大切なものを、私は知りません。
そんなことが分かるほど生きていないし、それほどに打ち込める趣味もないからです。
けれど、私はやっぱりお金を使います。お金が大切なら、わざわざそんなお金を減らす行動しなければ良いのに。
ご飯を買うお金でも、家賃でもないのに、お金を使うんです。そんなもの、なくっても死なないのに。
だから、私はそれがお金より大切なものだと思います。
本にお金を使うなら、お金よりも教養を重んじる人です。
服や化粧品にお金を使うなら、美を最優先にする人です。
遊びにお金を使うなら、人生を楽しむ人です。

それが楽しめているのなら、お金なんてなくっても良いのかなと思います。所詮、十と幾つの小娘の戯言ですが。


お題『お金より大切なもの』

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