いぶし銅

Open App
1/28/2026, 12:15:47 PM

街へ

日暮れ頃から電車に乗り、窓に反射した影を眺めた。揺れの激しい小田急線は、私の門出を拒んでいるようだった。川の近くを通る駅を適当に降り、自動販売機で水を買った。特に口にする訳でもないが、手癖のように蓋を開けた。枯れ草が飛び出す道の先には、河川敷があった。好奇心から降りてみることにした。夕日のよく映る川の前、細かい石が沢山あるところに座り、ペットボトルの水を口にした。それも確か、喉は乾いていなかった気がする。ふと、川をずうっと先に行った、どこか遠くのことを思い、ポケットにあるライターを流してみた。恐らくどこか、途中で石に引っかかるだろうが、気分は晴れた。日も落ち、すっかり夜になったが、ビルは明るかった。窓の光が、川辺に居る私を見下しているようだった。帰りの時に見た反射した自分は、行きのときよりもはっきりとしてみえた。

1/28/2026, 5:52:59 AM

優しさ

アメリカのどこかで、大規模な火災があったらしい。火元となる家には6歳の娘と、犬が2匹居て、両親は外出中。通報を受けて駆けつけた消防士のうち、最も歴の長いものが率先して火災の中に飛び込んだという。通報が早かったこともあり、娘と犬は無事に保護され、火傷こそあったものの、命に別状はなかった。火災の発生源は現在も特定できておらず、放火の可能性もあるとして警察は捜査中だという。

私と同じ言語を使っているならば、それは恐らく、優しさとは、分け与えてあげるものだ、と絵本で学んだだろう。このニュースのコメントには、勇気のある消防士に敬意を持った等のありがちなコメントがされていた。ただ、もしも通報が遅かったら、消防士まで火災に巻き込まれていたかもしれないし、娘や犬は火傷では済まなかったかもしれない。もしも私がその事件の近くに住んでいたら、周りの家に火が移るかもしれないから消火を優先しろ、と思っていたかもしれない。もしもこれが放火で、私が両親だったら、私たちの大事な娘たちを救ってくれてありがとう、と思うかもしれない。もしも私が放火犯だったら、犯行現場を荒らしてくれてありがとうと思うかもしれない。
優しい勇敢な消防士のおかげで、助かった命があると考えると、不思議な感覚になる。
もう少し遠回りでも、私の行動で、人の命が助かるのなら、それ以上の事は無いのかもしれない。

1/26/2026, 12:34:34 PM

ミッドナイト

夜更け頃、ポストが鳴った。焦る様なバイクの音がした。私は起き上がることを拒んだ。昨日も雨が降っていた。バイト帰りに洗濯物がかかっている家をちらほらと見たため、災難だと思った。

私はふと、考えることがある。途方もない話や、何にもならない話。そして、今のような雨降る夜には、一日の境目について、考えることがある。
日付が変わる時、私の身に変化があるのは後悔の念だけで、理屈的に変わったことを説明できない。恐らく、世界単位で見たとしても、日付が変わる瞬間を好意的に捉えるのは、新年だけだろう。それでも残酷なまでに時間は進んでゆく。時間が解決する問題もあるが、問題の大半は殆ど、時間が止まれば解決すると思う。
1人寂しい夜にはまた、縋るように途方もない話をする。
液晶の光を消し、眠りについた。

1/25/2026, 12:57:46 PM

安心と不安

安心と不安はいつも正反対のようで似た場所にいる。不安は自由の証拠であり、安心は不自由に対する期待感である。私は不安を飼い慣らすより、安心に寄りかかる方が性に合っているのかもしれない。

1/24/2026, 1:20:33 PM

逆光

有名税という言葉もある程、著名人は人気を理由に何かと不便な思いをしている。ただそれは、人の視線を受けた反射であると思う。それはまるで、光の反対に影ができるように、人は著名人に羨望の光を向ける。影に包まれて生きていたい人にとっては人気者も考えものだと思う。

Next