エリィ

Open App
8/23/2025, 9:42:58 AM

Midnight Blue

 (一旦書きましたが間違って削除しました。今回はなしです)

8/18/2025, 12:03:49 PM

足音

 このところ、全然寝付けない。
 子供の足音が上から聞こえる。

 そういえば、最近2階に引っ越してきた家族には、まだ小学生の男の子がいたからな。

 とにかく!
 うるさい!
 寝かせてくれ!

 俺は叫びたかったが、夜中なので、俺の方が近所迷惑になってしまう。

 何が困ると言って、夜中に限って元気に走り回るのだ。
 文句も言いたかったが、昼間になると足音がピタリと止まる。

 あまりにもうるさいから、管理会社から大家さんに相談してもらった。
 しかし、いつまでたっても全く状況は変わらない

 相変わらず走り回る足音はうるさいし、親が注意する様子もない。
 怒鳴り込みたくても、そんなことを一住人が出きるはずもない。そもそもそんなことは出来なかった。

 もう我慢ならん!

 耐えきれなくなった俺は、敷金を余分に払ってでも引っ越すことにした。
 あまりにもうるさくて寝られないから、心身ともにやられてしまった。
 今は睡眠導入剤のお世話になっている。
 しかし、ここに住む限りずっと続いていくだろう。
 この足音の騒々しさには耐えられなかった。

 こうして俺は、すぐに荷物をまとめて、夜逃げのように引っ越した。
 一人暮らしだと、こういう時に楽だな。

 あーあ。
 最上階で、見晴らし良くて気に入ってたんだけど。

8/17/2025, 11:31:42 AM

終わらない夏

 20XX年8月31日。

 俺は机の前で頭を抱えていた。手を付けていない山積みになった宿題の数々。

 一緒に遊んでたアイツも、同じように苦しんでいると電話で愚痴っていた。少しのつもりが話し込んでしまって、母さんに怒られてようやく電話を切った。ふと時計をみたら、もう21時。
 結果、俺はアイツを道連れにしてしまった。
 スマン、この埋め合わせはどこかでしよう。

 俺は机の参考書の山から目をそらし、カーテンを開けて夜空を見た。空には煌々と輝く満月が見える。
 風が強いのか、さあっと稲が風にあおられる音が聞こえる。入り込んだ風がひんやりとして、気持ち良い。
 明日は2学期の始まりなのだと、思い知らされた。

 はあ。

 俺は大きなため息を付いた。だからといって宿題が終わるわけでもない。だから俺はふと思ったんだ。

 『8月が終わらなければいいのに』


 20XX年8月10982日。

 いまや、あの涼しいと思っていた8月31日は遠い昔のことだ。
 あれから地球の温度は上がり、この時期は窓を開けても生ぬるい風しか入らなくなってしまった。あの遠い日が懐かしい。
 
 俺が『8月が終わらなければいいのに』と願った次の日から、カレンダーはなぜか8月32日に書き変わっていた。

 しかし8月31日の翌日は始業式。この定めからは逃げられなかった。

 なんてことはない。8月は終わらなかったけど、2学期は何事もなかったかのように始まった。
 なんなら定期テストもきっちり来たし、冬休みにお年玉ももらった。
 卒業式もあったし、入学式もある。すべて、8月の出来事だったけど。
 最初は大したことがないと思ってたけど、そのうち俺はこの状況が気持ち悪くなった。
 こんなことなら宿題をきっちりやっておけば良かった。 今度は必ず宿題します……。
 
 俺は今までが嘘のように、勉強に没頭するようになった。
 早く9月1日が来るようにと願掛けをしていたのだけど、そんな俺の気も知らないで、8月は続いていく。
 
 勉強をした結果、一流大学に入学した際も、就職活動を始めた時も8月だ。
 内定が決まり、大企業への入社日も8月。
 そこから働きを認められて今に至るが、それでも8月は続いていた。
 若い頃の俺は、9月が来る方法を探していた。
 現在はもうあきらめた。もう特に何の変化もない。
 このまま8月でもいいのではないかと思い始めていた。
 
 そんなある日、出張の帰りに実家に寄った。掃除をしてくれていたとはいえ、少しばかりほこりのかぶった自分の部屋で、日に焼けたカーテンを開く。

 空には、あの日宿題を終えられなかった晩と同じ、満月が煌々と輝いていた。
 昔のあの日のように、稲がさわさわと音を立てることはなくなったが、月は変わらず照らしている。

 俺はあの日と同じように願った。
 『9月1日が来ますように』

 その瞬間、俺の顔を涼しい風が吹き上げ、カーテンがふわりとふくらんだ。
 実家の周りは家ばかりになり、田んぼが消えたはずなのに、稲の葉のにおいがする。部屋の色褪せたカレンダーも、バタバタと音を立てた。
 俺は思わず目を閉じた。

 目を開けると、月は何事もなかったように浮いている。
 ふと、風で落ちたカレンダーをみた。
 9月だ!
 学生の時は8月32日から始まっていたのに!
 俺は何度もカレンダーを手にとって、めくって中を確認した。嘘じゃない。9月だ!
 俺は思わず年甲斐もなくはしゃいでしまい、階段を上ってきた母に気がつくのが遅れてしまった。

 翌日は何の騒ぎもなく、8月10983日は今年から9月1日になった。
 あれは一体なんだったんだ。
 もしかしたら、あの日の俺のような無数の誰かの願いが、時空を歪ませたのではないか、等とも想像してしまう。

8/16/2025, 1:41:02 PM

遠くの空へ

 深い夜空の中に、綺麗な星が浮かんでいる。この場所から遠くの空へと思いをはせる。
 ああ、何て美しいのだろう。
 星になって空の一部になってしまいそう。このまま意識ごと、吸い込まれるような気がする。

 私は目の前に広がる天球を見てため息をついた。空に浮かぶ満点の空が、星々が時間を共に天球をめぐり、時間の流れを肌で感じた。
 瞬く星座に、遠く空へ手を伸ばそうとしたが、やめた。
天球に響く女神のような声に身をゆだねる。このまま闇に吸い込まれたい。何度もまばたきをしながら、目を開いて必死に空を見つめ続ける。
 女神の声と共に、銀河が、天の川が、星座が、星たちが天球を巡る。その動きを眺めながら、この流れゆく時にそのまま吸い込まれていきそうになっていく。

 どうしてこの天球を見つめていると、意識がそのまま溶けて行ってしまいそうになるのだろう。

「…………この銀河は……」

 何度も繰り返される、女神の様な声に耳を傾けながら、私のまぶたは重さに逆らえず、そのまま意識は遠のいていった。

「君の寝息が隣で聞こえてたよ」
プラネタリウムを出ていく人々の中に混じって、彼は歩きながら私の方をそっと見た。天文学が大好きな彼。私は彼の趣味についていこうとしたけれど、場所を聞いてイヤな予感はした。
やっぱりこうなった。
「ごめんなさい……どうしてもあの声を聴いていると眠くなって……」
「大丈夫だよ。君以外に結構寝てる人いたから」
彼のフォローが少々いたたまれない。
「ありがとう……あの」私は顔を真っ赤にしながら、彼の方を向いた。
「こんな私でもいい?」
「君だから、どこへ一緒に出来るだけで嬉しいよ」彼は耳の端を染めながらそう言うと、私の手を取って、望遠鏡の方へ一緒に歩いて行った。
 少なくとも、天文台で居眠りはしないだろうと安心していたのだけど。
 今日の流星群を見ようと、長蛇の列ができているという事は予測できなかった。彼はまったく気にしてなかったが。
 正直、立ちっぱなしでパンプス履いていた足には少々きつかった。流星群はきれいなのだろうけど、それ以上に早く座ることだけを考えていた。

8/12/2025, 12:24:47 PM

真夏の記憶

単一短歌五種



天の川光る三角見上げては 彼ら三角関係疑う

ひまわりが広がる畑の向こう側あなたと共にあの日を共に

パラソルの花咲く砂浜がよく見える海の家僕は夕日と海へ

宿題は存在しないと逃げて見た先の日めくり9月1日で

実家の縁遠い親戚顔を会わせても名前呼ばずに過ごす盆


Next