『タイムマシーン』
いつもありがとうございます。
今日もスペースのみです💦💦
みなさま、ご自愛してお過ごしくださいませ。
『特別な夜』
いつもありがとうございます。
本日もスペースのみです。
家族の体調不良ラッシュが止まりません😇
みなさまはご自愛してお過ごしくださいね。
『海の底』
いつもありがとうございます。
ほかサイト様用の作品を執筆しておりますゆえ(頓挫する予感がぷんぷんしており、形になるかは未定です)、本日はスペースのみ残させてください。
昨日のお題『君に会いたくて』を更新いたしました。
ご興味がありましたら目を通してくださるとうれしいです。
今日は寒かったです……🥶
みなさま体調など崩されぬようご自愛してお過ごしくださいませ。
『君に会いたくて』
彼女に「会いたい」なんて言わせたくなくて、俺は許す限りの時間を彼女に押しつけてきた。
彼女は常に、俺の想いを顔色ひとつ変えずに受け入れてくれる。
今日も、当たり前のように応えてくれるものだと自惚れていた。
「これから会いに行ってもいいですか?」
通話を繋ぎ、建前でしかない断りを入れる。
『しばらくは無理』
「え」
既に彼女の自宅へと足を運ばせていた俺にとって、彼女の返事は寝耳に水だった。
しかも、今日だけではない「しばらく」という曖昧な期間を設けられてしまい、心が掻き乱される。
「しばらくってどのくらいですか?」
『えーっ、と。多分、1週間くらい、……かな?』
歯切れ悪く応えた彼女に、俺は愕然とした。
1週間!?
会えなくなった1週間を跨いだあと、彼女は海外遠征が控えていた。
今月はもう実質会えないことを示唆されて発狂する。
本気で言ってるのかっ!?
俺は彼女に会いたくて会いたくてたまらないのにっ!?
「あの、1週間も会えないほどの用事って、なにがあったんですか?」
冠婚葬祭、合宿、練習、メンタルケア、彼女が俺よりも優先しなければならないことをリストアップしていたらキリがない。
少しでも溜飲を下げるためにせめて原因を教えてほしくて、つい、深追いしてしまった。
『大事な用事、って、いう……かっ』
しどろもどろだった彼女が、さらに歯切れを悪くする。
『そ、そのっ、…………ニ、ニキビ、が、で、できちゃって』
ニキビ?
徹底された食生活と生活リズム、上質な寝具を使っている彼女に?
にわかには信じがたい彼女の言葉に耳を疑った。
「今から行きますね」
『え、はっ!? ちょっ』
動揺して上ずった愛らしい声を惜しみながら、俺は通話を終える。
携帯電話をポケットに入れて、彼女の自宅まで全力でダッシュした。
*
彼女のニキビなんてウルトラレアすぎるし、かわいいに決まっている。
できたでほやほやのニキビを見逃すなんてしてたまるものか。
絶対に見たいがっ!!??
彼女の自宅のエントランスでインターフォンを鳴らしまくった。
なかなか扉を開けてくれないから、着信もいっぱい残してやる。
『しつこい! 無理だって言った!』
12回目の着信で、我慢できなくなった彼女が癇癪を起こした。
「俺は了承してません」
『そっちが勝手に電話切ったクセに、そんな主張通してくんなっ!』
彼女とのやり取りの途中、マンションの住人らしき人とすれ違う。
ここで俺がもだもだして、彼女の評判が悪くなってしまったら大変だ。
「……わかりました」
頑なにエントランスの扉を開けてくれない彼女に、落胆の息をつく。
今日は本当に諦めるしかなさそうだ。
「出待ちするので、明日、ニキビパッチのペッタンで手打ちにします」
『は??』
「これ以上はマンションの人たちに迷惑をかけてしまいそうですし」
『……通報されても知らないからな?』
自分で通報しないあたり、彼女の優しさが沁み入る。
が、それはそれ、これはこれ、だ。
「そうは言われましても、俺は俺であなたのニキビを諦められません」
『…………もう、勝手にして……』
電子音を立てたあと、ようやくエントランスの扉が開かれる。
そこから先は、スムーズに彼女の自宅まで押し入ることができた。
彼女は面白くなさそうにギリギリと歯軋りを立てているが、コーヒーまで入れて俺をもてなしてくれる。
ローテーブルの前に置かれた座椅子に座り、マグカップを手にしながら俺は切り出した。
「あの、そんなに押しに弱くて大丈夫ですか?」
「あ?」
俺の心配をよそに、彼女は不機嫌なままソファに背中を預けて足を組む。
「いっぺんそのふざけた右頬を差し出せよ。下から突き上げてやる」
「ぷっ。その身長だから振りかぶれないだけでしょう」
お口の治安が悪くなっておっかないことを言っているが、体も腕も手も俺よりも小さいことを一生懸命に主張していて庇護欲を掻き立てられただけだった。
「はあぁ!? それ! れーじくんがデカいだけだからっ!」
「あなたはちっちゃくてかわいいですよ⭐︎」
コーヒーを半分ほど減らしたあと、彼女の隣に移動した。
居心地悪そうに顔を逸らすが、俺から距離を取ろうとする気配はない。
キュッと引き結ぶ唇に目が移ろい、ここへ来た目的を忘れてしまいそうだ。
「どこにできたんです?」
逸らした顔からはニキビは見当たらない。
「……」
首を横に振る彼女の顔には触れられないから、代わりに小さな耳にそっと触れた。
指の腹で耳たぶを指で擦り合わせると、鼻の抜けた声が漏れる。
「ちょ、やめ……っ」
「ね。教えて?」
「ぅ、やだぁ」
しおしおと声を萎ませてしばらく耐えていた彼女だったが、俺が爪で耳の軟骨を引っかいたところで観念した。
「お、おでこのところ……」
ニキビに触れないように、そっと彼女の前髪を横に流す。
彼女の言うとおり、こめかみの生え際にひとつ、皮膚が赤くぷっくりと膨れ上がっていた。
「おやまあ」
白い肌と青銀の髪の毛の色が、ニキビの赤を強く引き立てている。
「ずいぶんと、かわいい子が出てきましたね?」
「かわいくないっ」
ぷりぷりしながら彼女は俺の手を払いのけたあと、真っ赤に染まったかわいいお顔まで両手で隠してしまった。
「この年になってニキビとか恥ずかしいから……ホント、勘弁して……」
「なら、もっと恥ずかしいことをして上書きしましょうか?」
「それ、応急処置にもなってないからな?」
隠した両手を掴んで下ろせば、彼女は唇を尖らせて拗ねている。
不機嫌な薄い桜色の唇をなぞれば、小さな期待が音を立てた。
「でも、気は紛れるでしょう?」
「紛れるというか、それどころじゃなくなる」
揺れる瑠璃色の瞳に熱がこもり始める。
その熱をさらに高めるために、俺は彼女の唇をそっと塞いだ。
『閉ざされた日記』
それを見つけたのはリビングの掃除をしていたついでに、ソファの引き出しの中身を取り出したときだ。
一見すると、それは使い古されてボロボロになった大学ノート。
表紙には、几帳面ではあるものの、まだ少し幼さを感じる書体で彼女の名前が書かれていた。
表紙を開いて中身を確認して、目が見開いていく。
文字でびっしりと埋め尽くされたページは、数枚まとめて糊かなにかで接着されていて開かないようになっていた。
なにが書かれているのかは、ページが重なり合ってしまっているため、解読ができない。
かと思えば、破いて捨てられたページもあった。
無線綴じゆえか、丁寧に刃物で削られた跡は、彼女の生真面目さを際立たせる。
糊で接着された束を全てめくった裏表紙の裏側には、年号が記されていた。
俺の記憶違いでなければ、その年は彼女のご両親が離婚した年である。
*
仕事から帰宅した彼女を玄関で出迎えた俺は、さっそく本題を切り出した。
「あなたのセンシティブなアイテムを見つけてしまいまして」
「え、なに。エロ本?」
「違います。……って、は? あるんですか? エロ本が? あなたの?」
そんなアイテムが本当にこの家に存在するのであれば、もっと早くに見つけているはずだ。
なんなら今から徹底的に家探ししたい。
「あるわけないじゃん。静止画は好きじゃないし」
ないのかよ。
ぬか喜びさせやがって。
「動画は動画でそんな気にならないクセに」
「は!? なん、で、知ってっ!? え!?」
目を丸くして恥じらいながら驚いているが、その反応は今さらすぎる。
つい最近、B級パニック映画でお決まりのラブシーンが挿入された途端、興醒めしていたことを忘れてしまったのだろうか。
それこそ、かつて「氷獄の覇者」と言わしめていたその名に恥じぬ、冷酷な眼差しを向けていた。
瑠璃色の瞳を最大限に暗くしたあの厳酷な視線を、一直線に浴びたテレビ画面に嫉妬さえ覚える。
恥ずかしがった彼女が照れていい雰囲気になることを期待したのに、室内の体感温度が5度くらい下がっただけだった。
彼女のテンションまで冷え切っていたため、その日の夜は手も出せずに寝かしつけるだけで終わってしまったのである。
そもそも、俺の解釈が正しければ、彼女は静止画とか動画とかの次元では欲情しないはずだ。
「なにを驚いているんですか。あなたはどちらかというと文学に比重を置いた哲学的な官能小説のほうが好みでしょう。人の理性と欲望の狭間で揺れ動く情感や狂いながら快楽に溺れていく描写が回りくどいほど地頭がいいゆえに日本語も正しく理解してしまうから余計に想像力を掻き立てられてその焦ったさに我慢できず読み進めてしまうタイプのはずですよ」
「…………冷静に気持ち悪い講釈垂れるのやめてくれる?」
その「気持ち悪い」という表現は、彼女自身にも刺さってしまうのだから、今すぐに取り消していただきたい。
ため息をついた瞬間、俺はひとつの可能性に辿り着いた。
「もしかして、これって自作のエロ小説ですか!?」
「はあっ!? ねぇ!? さっきからなんの話っ!?」
「これです」
掃除の途中で見つけた大学ノートを彼女に差し出した。
ノートを受け取った瞬間、彼女の表情が一気に暗くなる。
「って……、あー……。そういや、リビングの掃除するって言ってたな?」
固く閉ざされたページをもたもたと重たく音を立てる彼女は、苦々しく舌打ちをした。
「隠し場所、移すの忘れてた」
「隠すってことは、やっぱりエッチな小説ですか?」
「違うわ、おたんちん」
手にしたノートでパシッと胸元を叩かれた。
ノートの内容の全貌が未解決のままだが、そんなぞんざいな扱いをしていいのだろうか。
「でも、欲しいならあげる」
「は?」
「要らなくないヤツだけど、れーじくんなら捨てないで取っておいてくれるでしょ?」
ノートを押しつけた彼女の腕に、グッと力を込められる。
その小さな指はわずかに震えていた。
ハッとして彼女に視線を上げると、その頬が羞恥で赤らんでいる。
「別に、中は好きに暴いてくれてもいいんだけど、はっ、恥ずかしいから、見たあとも、そのっ、ちゃんと優しくして……、ね?」
「!?」
彼女はいたたまれなさの限界と言わんばかりに目を潤ませて、顔を真っ赤にさせていた。
チラチラと、落ち着きなく俺の様子をうかがっている。
おまけに、彼女の言葉足らずのスキルがこのタイミングで発揮されて、生唾を飲んだ。
ぐぅ。
……か、わ……いぃぃ。
ノートの中身よりも彼女自身を暴きたい。
己に正直な欲求が迫り上がり、彼女を抱き寄せようと手を伸ばしたが、ひと足遅かった。
「お、お風呂行ってくるねっ!」
バサッとノートが床に落ちることもいとわず、彼女は靴を脱いで俺の横を逃げるように押し通る。
「え、えぇ!?」
いや、だからっ!!??
その中身はなんなんだっっ!!??
落ちたノートを拾い上げ、埃を払う。
彼女に文才がないことは、去年の夏に判明していた。
エロ小説でないことは明白なのだが、彼女の言葉通り、素直に中身を暴いていいものか。
判断がくだせず、俺は悶々と大学ノートを抱えたまま項垂れるのであった。