6/27/2025, 2:09:00 PM
結婚証明書に署名をして、つつがなく結婚の儀式を終えた。
純白のドレスに身を包んだ彼女と腕を組む。
この一歩のために人生を捧げてきた。
拗らせた片思いを募らせ、ゴリ押しで恋の花を咲かせ、今日、ようやく実を結ぶ。
祝福の拍手を浴びながら、笑顔が積もったバージンロードに彼女とともに足を踏み入れた。
世界で一番きれいに着飾った彼女は、いつもより小さな歩幅でゆっくりと歩く。
はにかんだ笑顔を浮かべる目元にはうっすらと膜も張っていた。
雫として溢さないようにこらえているのが彼女らしくていじらしい。
「私を選んでくれてありがとう」
わずかに上ずった声でそんな言葉までくれるのだから、俺が泣きそうになった。
「……俺のほうこそ。手を取ってくれたこと、感謝しています」
幸せを噛み締め、まだ見ぬ世界への最初の扉を、今、開く。
『まだ見ぬ世界へ!』
6/26/2025, 11:51:11 AM
「離れないで……」
それが彼女の最後の声。
涙ながらに縋った彼女の左手に、自分の指を重ねた。
永遠も、絶対も、その場限りの耳ざわりのいい言葉でしかないけれど。
あなたを捕まえたその日から、その細い薬指に誓ったのだ。
「今さら離せないから」
色めいた声に紛れた彼女の不安を少しでも拭たくて、役に立たなくなった思考は捨てる。
「ねえ。愛してる」
彼女の桜色の唇を深く重ね、呼吸を奪った。
『最後の声』
6/25/2025, 10:58:12 AM
真新しい靴が玄関に並んだ。
俺たちの靴のサイズよりもずっと小さい。
「いつか、私よりも大きくなるのかなあ」
「ご飯いっぱい食べるからすぐかもね」
小さな愛を積み重ねながら、目まぐるしい日々を過ごしていくのだろう。
いつかかけがえのない日になることを願いながら。
『小さな愛』
6/24/2025, 2:09:39 PM
地上から見上げる空はこんなにも区画されているのに、自由だ。
『空はこんなにも』