「離れないで……」 それが彼女の最後の声。 涙ながらに縋った彼女の左手に、自分の指を重ねた。 永遠も、絶対も、その場限りの耳ざわりのいい言葉でしかないけれど。 あなたを捕まえたその日から、その細い薬指に誓ったのだ。「今さら離せないから」 色めいた声に紛れた彼女の不安を少しでも拭たくて、役に立たなくなった思考は捨てる。「ねえ。愛してる」 彼女の桜色の唇を深く重ね、呼吸を奪った。『最後の声』
6/26/2025, 11:51:11 AM