手を繋いで、繋ぎ返して、
私のよりも一回り二回り大きい、
その骨貼った暖かい手のひらを、
もし私が、
貴方が朝家を出る時に握った手を離さなければ、
もし私が、
貴方が二度寝しようと駄々を捏ねた手を離さなければ、
貴方はまだ私の手を握っていてくれたのかな。
私が寂しい時、ずっとそばにいるって、言ったじゃん。
こうやって手を握るよって、言ってくれたじゃん。
ねぇ、私幽霊ダメって言ったけど、
それは嘘だから、
幽霊で良いから、幽霊が良いから、
貴方であれば本当にそれで良いから、
ほんの少しだけ、この月が出て居る時だけ、
この涙が渇くまで、
側で手を繋いでいてよ…
終わらせないで欲しかった。
私が寝る時、必ず腕をお腹に回すのも、
私がご飯を作る時、うざったくなるくらい
味見させてって言って来るのも、
私が服を選ぶ時、本当に真剣に悩んでくれるのも、
全部、ぜんぶ、大好きだった。
「重たいからやめて」は、
「もっとくっついて欲しい」だった。
「どっか行って」は、
「何処にも行かないで」だった。
「そんなに悩まなくていいのに」は、
「私のために悩んでくれて嬉しい」だった。
貴方との生活が終わってしまってから、気がついた。
私の天邪鬼がこんなにも憎らしいなんて。
何気ない生活の会話ですら素直になれなかった私はバカだ
今はこんなに素直に言えるのに、叫べるのに、
返してくれる貴方が居ないから。
1人では広すぎるベッドで寝て、
貴方のために作らないご飯を作って、
服も自分でテキトーに決めて、
普通ではあるのに、私だけ違う世界に来たみたい。
貴方という存在が居ない世界に、
私はひとりぼっちで
迷い込んでしまったんだ。
貴方が死んだあの日から、
私の終わりの日々が始まってしまったんだ。
落ちていくような気がした
貴方のその瞳に
落ちていくような気がした
貴方のその声に
落ちていくような気がした
貴方のその笑顔に
落ちていったんだ、貴方という人に
映画みたいなドラマみたいな出会いじゃないけれど、
確かに感じた、貴方と言う存在に惚れるという瞬間。
私の中で何かが動いた瞬間。
世界で何よりも君が1番綺麗に感じた瞬間。
そんな貴方が、
落っこちて死ぬなんて、
誰も思わないじゃん。
ずるいよね。
最後まで、私にだけは言わないでさ、
日記なんかで知りたくなかったよ。
あの日貴方も、私に落ちてたなんて。
冬になっても、会いに来てくれますか?
冬になったら、忘れてしまいますか?
冬になったら、私は消えてしまいますか?
冬になっても、私を忘れないでくれますか?
さくら
離れて居ても心は繋がっているとか、
ずっとそばで見守っているよとか、
そんなのはただの願望で、
夢物語で、絵空事で、
私たちが都合良く作り替えた概念でしかなくて、
多くの物語で語られて来た死という生の付属品に、
私たちはどうしてこんなにも心惹かれるのだろう。
どうしてこんなにも、心が締め付けられるのだろう。
どうしてこんなにも、美しいと感じてしまうのだろう。