じっと視線を感じる。
隣を見れば黒い艶やかな髪の毛を風に靡かせる彼女と視線が絡まれば嬉しそうに微笑むのだ。
その微笑みの美しさに耐えきれずに視線を黒板にずらして必死にノートに板書をするフリをすれば彼女もノートに視線を移したようでそっと安堵した。
彼女は真面目で勤勉、運動もそこそこ出来る。そして人当たりがよく、先生のみならず生徒からも信頼されている。トップの成績を維持しながら生徒会長もこなす、なんというかスペシャルな人だ。
そんな彼女に最近見つめられることが多い気がする。
俺は彼女に比べたら天と地、月とすっぽんみたいな差で勉強も運動もそこそこ人当たりに関しては対人が苦手なので友人も少ない。
だからあの微笑みにあの視線にどう対応していいかわからずにそっと視線を避けてしまうのだ。
視線を感じるようになってから数週間経ったある日、席が隣同士の俺たちは日直当番が回ってきた。
早起きして学校へ行けばもう既に彼女は来ていて、
「おはよう」
そう挨拶をすれば丁寧な言葉に変わり挨拶を返ってきた。
「おはようございます」
その後今日の当番の内容とやることの振り分けをテキパキと話してくれる彼女。それを前の席を借りて後ろを向き聞くことにして座って彼女を見る。
初めて彼女の瞳を覗いた気がする。それは黒い日本人らしい瞳だがその黒い中になぜか惹き込まれてじっと見つめてしまい、綺麗だなと思えば彼女は顔を隠して机に顔を埋めてしまった。
「え、どうした?体調悪い?」
大丈夫です、と言う彼女の耳が赤くなっていてもしかしてさっき思ったことを言葉にしてしまったことに気づいた。慌てて謝ろうとすれば、違うんですと彼女は続けた。
「いつも一方的に見てるだけだったので、見つめられるというシチュエーションに慣れてなくて」
その言葉を脳内で理解すれば、俺は彼女と同じように体温が上がり顔が火照る。
その様子をたまたま見た朝練組終わり組のクラスメイトは早くくっつけばいいのに、と呟いていた事など俺は何も知らない。
お題【見つめられると】
私は心ってなんだろうって最近よく思う
心はなんだと考えた時
漠然としたもので、身体的な器官ではない
私的には心は脳神経の信号で
それを人は心と呼んでいるのであるだけ
その「心」という名の「脳」の構造を
当たり前のように学べる
そんな世の中だったら
精神疾患への風向きが変わるんじゃないかな
なんて、机上の空論ではあるが
私は思うのだ
お題【MY Heart】
僕には兄がいた。
聡明でかっこよくて優しい僕の大好きな家族。
でも、そんな兄は家の者から虐げられていた。
両親はいつも言うのだ
「貴方には兄は居ないわ私達の子供は貴方だけ」と。
あとから聞いた事だがそれは事実で、兄は家業を継がせるために養子として受け入れたらしい。
しかし自分が産まれたことで後継者問題は解決して、兄は御影家の厄介者となったと。
親からの愛も、
欲しいものを買うお金も、
御影家として名声も、
兄の代わりに全て受けさせてもらった。
それでも僕は思うのだ、
おこがましくても思ってしまうのだ。
両親からの寵愛もお金も名声も要らないから、
大好きな兄と一緒に過ごして、笑いたかったと。
最期に笑った兄の顔を僕はもう思い出せない
お題【ないものねだり】
好きじゃないのに、ただの幼馴染なのに
気がついたら目線で追いかけ始めるようになったのはいつからだろう
笑ってる顔は可愛い、
悔しそうな顔をしていれば声をかけたくなる
幸せそうにパートナーといればそのポジションは自分だったのにともやもやとした感情を抱いてしまう
この気持ちを理解したくなくてこういうのだ
「ただの幼馴染だよ」
お題 好きじゃないのに
「雨だ」
そう誰かが呟いた気がする。
周りを見れば降り始めた雨を避けるように近くのコンビニや建物に駆け込んでいく人達。天気予報はところにより雨、だっただろうか。
ともかく俺も同じように家へ帰る足を少し早めた。
「おかえり、あれ雨だったの?」
帰宅すれば同棲中の彼女がパタパタと駆け寄ってきてタオルを渡してくれる。濡れたスーツジャケットの水滴を払いそっと持っていくので感謝を込めて頭をそっと撫でた。
「ん?」
そう不思議そうに見上げてくる彼女を見つめていれば満面の笑顔を向けてくれたので俺はこう呟いた。
「ところにより晴れだな」
お題【ところにより雨】