赤月夢羽

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僕には兄がいた。
聡明でかっこよくて優しい僕の大好きな家族。

でも、そんな兄は家の者から虐げられていた。

両親はいつも言うのだ
「貴方には兄は居ないわ私達の子供は貴方だけ」と。

あとから聞いた事だがそれは事実で、兄は家業を継がせるために養子として受け入れたらしい。
しかし自分が産まれたことで後継者問題は解決して、兄は御影家の厄介者となったと。

親からの愛も、
欲しいものを買うお金も、
御影家として名声も、
兄の代わりに全て受けさせてもらった。

それでも僕は思うのだ、
おこがましくても思ってしまうのだ。

両親からの寵愛もお金も名声も要らないから、
大好きな兄と一緒に過ごして、笑いたかったと。

最期に笑った兄の顔を僕はもう思い出せない


お題【ないものねだり】

3/27/2023, 12:57:31 AM