『愛を注いで』
あたしの恋人は、何故かモテる。
女も男も寄ってくる。
うざい。
君のことが好きなのはあたしだけでいいの。
誰も好きにならないで。
でも、クラスも違えば学年も違う。
そんなの、全部消すなんて無理に決まってるじゃん。
なんで他の人と話すの?
なんで好意があるって分かるのに、見えるのに話すの?
なんで、?
あたしだけみててよ。
だから、消しちゃった///
君に近付くヤツみんな消したよ?
これなら、あたしだけ見ててくれるよね。
『何でもないフリ』
見てしまった。
旦那が浮気しているのを。
何繋がりの女なのか。
共通の知り合いに色々聞き回った。
高校時代の元カノらしい。
知らなかった。
いることは知っていたけど、まだ繋がりがあることが。
悲しい、と同時に怒りが湧いてきた。
今日も旦那が帰宅する。
「ただいま。」
「…どうしたの?」
「な、なんでもないよ!」
「今からご飯準備するね。」
モヤモヤする。
でも、この件以外旦那との関係は良好。
私は、明日もきっと何でもないフリをする。
『手を繋いで』
迷子になった。
遊園地の一角で。
泣いた。
この世でお前は1人ぼっちだぞ、と言われてる気がして。
夕方になっても、誰も話しかけてくれないし誰も迎えに来ない。
嗚呼、捨てられたんだな、
直感的にそう思った。
「キミ、迷子なの?」
糸目のお兄さんに話しかけられた。
「そうだよ。何。笑いにでも来たの?w」
「まさか!そんな酷いことしないよ」
「キミをお家へ帰らせに来たんだ」
一体、何を言っているのか、全く分からなかった。
お兄さんが何かの詠唱をすると、私の体がキラキラ光った。
「な、に、これ、」
思うように力が入らない。
「キミ、実はもう死んでるんだよ」
「虐待する親だったんだね」
「だから死んだ後、両親と仲良かった頃最後に来たこの遊園地に来たんだよね」
一体何を言っているんだこの男は。
「何言ってるの、私は死んでなんか」
ふと思い出してしまった
自分の死因を。
耐えられないほど苦しくて、辛くて、痛かったあの日を。
でも。自然と殺意は湧かなかった。
「おいで。一緒に帰ろう」
微笑むお兄さんは悪い人じゃない気がして。
いい所に連れていってくれる気がして。
手を繋いで、夕日の沈む方へ向かっていった。
『部屋の片隅で』
自室。
電気を消して。
真っ暗の中布団を被って。
永遠とスマホをいじって。
触ると言ってもエゴサーチばかり。
みんなが知ってるのは外面の私だけ。
撮影の時だけ、明るくなって。
正直飽きたし疲れた。
どんなに頑張ってもアンチばかりで。
どんなに努力しても評価されなくて。
部屋の片隅で、死のうかな、と考える今日。
画面越しの君が、頑張って、と応援してくれた。
『逆さま』
娘が死んだ。
学校の遠足で交通事故に遭ったとの事。
電話がかかって来た時は突然のことすぎて言葉が出なかった。
《ゆあちゃんのお母様のお電話で宜しいでしょうか?》
《はい》
《先程、ゆあちゃんが事故に遭いまして》
今思えば、この教師の対応はどこか冷たかった。
《この病院に来ていただけますか》
分かりました、と伝え電話を切る。
病院に着き娘の所へ。
「ゆあ!!」
私が駆け込むと、ゆあは起きていた。
「まま!」
声だけ聞くと、元気そうに聞こえるだろう。
見た目は…。いいえ、言わない方がいいかもね。
無言で娘を抱きしめると、娘は口を開く。
「ママ聞いて?ゆあ、ペアの子助けたんだよ」
どういうことか分からずにいると、続けて口を開いた。
「ペア活動の一環で遠足に行ったの」
「2列で歩くんだけど、歩いてたら、そのペアの子の方に車がきて」
「ほら、よくアニメであるじゃん、!」
「あのさ、あのー、人助けると死ぬみたいな!」
「ほんとにまさにそれだったの!」
「…まま、?」
元気に話すから、涙が止まらなかった。
「ゆあは偉いよ。」
そう言って娘の頭を撫でる。
娘は、「えー?そおー?」とか言って照れてる。
このまま生きて欲しいと願うのはワガママなのだろうか
医者によると、今日がヤマらしい。
持って明日。
父親は他県に転勤で来れなかった。
連絡すると、急いで向かう、と言っていたのだが、
とても大事な案件で断れないらしい。
泣いていると、娘は言う。
「ママ、大丈夫だよ」
「ゆあはママのこと大好きだよ!」
「死んじゃうのは怖いけど、でも、」
「ママのこと死んでも忘れないし!」
「そもそも死なない!ゆあ強いから!」
耐えられなかった。涙がもっと溢れる。
「ゆあぁ、ッ 死んじゃ嫌だよ、ッ」
我ながら情けないと思う。
娘に泣きつく親なんてどこにいるだろうか。
娘が一緒に寝たいと言うので、今日は病院に泊まった。
いつもと変わらない寝顔をみて、
このまま日常に戻れないかとずっと考えていた。
眠れなかった。
翌朝、目が覚めると、ベッドの台に手紙があった。
「ママへ」
「ママ、事故にあってごめんなさい。」
「優亜ね、実は、優亜がしぬことわかつてたんだ」
「でも、ママに心配かけたくなくて、言わなかったの」
「でもお医者さんは言っちゃった」
「優亜ね、ママの子どもに生まれて幸せだったよ、」
「だって、ご飯はおいしいし、お洋服もかわいいし、」
「何よりママがいちばんかわいい!さすが優亜のママ!」
「ママがおきるころには、もういないと思う」
「おそう式!は友だちのみゆちゃんも呼んでね」
「じつはね、優亜、クラスのたっくんのことがすきなの」
「たっくん、悲しんでくれるのかなあ〜」
「最初はいたかったけど、だんだん感覚が無くなってきて」
「もういたくないの!」
「ママに手紙が書きたいって思ったらいたくなくなつた!」
「でもね、もうね、手が疲れちゃったあw」
「最後にペアののぞちゃんに」
「キミのせいで死んだわけじゃないよ」
「わたしが助けたかったから助けたの!」
「だから、せめてわたしのことわすれないでいてくれるとうれしいな」
「のぞちゃんかわいくてほんとにすき!」
「ペアになってくれてありがとね!」
「って伝えてくれるとうれしいなママ」
「ほんとにママの子どもに生まれてよかった」
「ありがとう、ばいばい、」
「優亜」
優亜という名前は、優しい子になって欲しいという想いからつけた。
本当に。娘は優しい子に育ってくれたと思う。
覚えたての漢字を使って。
手紙を書いて。
文字に起こすとイマイチ分からないが、
誤字があって。
不揃いの字で。
もう涙が止まることは無かった。
ふと、娘の方を見ると、
少し微笑んでいるように感じた。
普通に眠っているようにも感じ、
これはドッキリなのでは、?
とも思った
娘の葬式は、娘の言う通りにした。
龍くん、美優ちゃんその他友達を呼んで。
来れなかった子はいたけど、みんな娘の葬式に来てくれた。
たった1人の娘を亡くして。
親より先に子が死ぬなんて。
ありえないと思ってた。
娘は向こうで元気にやっているだろうか。
私の母や父と仲良くできているだろうか。
早すぎる、と私が怒られてしまうかも。
遺影の娘は死んでることを忘れるくらいよく笑っていた。
【逆さまの意味】
ものの道理に反すること。 また、順序が逆になること。 特に、親が先立った子を弔うこと。 さかさごと。