奈緒

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『手を繋いで』





迷子になった。


遊園地の一角で。


泣いた。


この世でお前は1人ぼっちだぞ、と言われてる気がして。


夕方になっても、誰も話しかけてくれないし誰も迎えに来ない。


嗚呼、捨てられたんだな、


直感的にそう思った。


「キミ、迷子なの?」


糸目のお兄さんに話しかけられた。


「そうだよ。何。笑いにでも来たの?w」


「まさか!そんな酷いことしないよ」


「キミをお家へ帰らせに来たんだ」


一体、何を言っているのか、全く分からなかった。


お兄さんが何かの詠唱をすると、私の体がキラキラ光った。


「な、に、これ、」


思うように力が入らない。


「キミ、実はもう死んでるんだよ」


「虐待する親だったんだね」


「だから死んだ後、両親と仲良かった頃最後に来たこの遊園地に来たんだよね」


一体何を言っているんだこの男は。


「何言ってるの、私は死んでなんか」


ふと思い出してしまった


自分の死因を。


耐えられないほど苦しくて、辛くて、痛かったあの日を。


でも。自然と殺意は湧かなかった。


「おいで。一緒に帰ろう」


微笑むお兄さんは悪い人じゃない気がして。


いい所に連れていってくれる気がして。


手を繋いで、夕日の沈む方へ向かっていった。

12/9/2022, 11:24:52 PM