私は早く20歳…いや、大人になりたかった。
大人になれば今よりもっと幸せで、お金も自分で稼いで自立する…つまりは自由になれると思っていた。
だけど最近、分かってきた。
大人になれば、確かにお金は自由に使えるけど、一人で使っても全然嬉しくなんかないんだ。
ただ減っていくお金に絶望して、働かないとなんて自分を縛りつけて…そんなことの何が自由なんだろう。
だから私は大人になんてなりたくない。
三日月は欠けている。
当たり前のことだけど、私はそれを美しいと思った。
普通はなにかが欠けていたらダメになるのに、三日月はそれを逆手にとって、さらに美しく輝いている。
私も三日月のように、何かがダメでも周りから綺麗だと言われたい。
私も三日月のように、何かがダメでもそれでいいと言ってもらいたい。
そう思ってしまうのは…ワガママなのかな?
私にとっての幸せは、お金があることだった。
だけど最近、本当にお金だけが全てなのかと考える日が多々ある。
だって、お金があっても幸せじゃない人なんてたくさんいるから。
だからといって、貧乏だから幸せってわけでもない。
つまりは普通が一番良いってことなんだろうなって。
けど普通は普通で、それなりに大変だってなんとなく知っているから。
じゃあ…本当の幸せとは?
1年間を振り返ると、ろくなことが無かった。
好きな人は違うクラスにいっちゃうし、担任だって嫌いな人になった。
それに、友達とも喧嘩したまま。
家族の仲も微妙だし、来年は受験。
不安で不安でしょうがなかった1年だった。
だけどなんでかな…戻りたいなんて思ってしまう。
それが悔しくて、涙が出た。
ある日の朝、汚い手ぶくろを拾った。
片方しかないし、そこらじゅう穴だらけで使い物にならないのに、なんとなく拾ってしまった。
手ぶくろはあまり好きではない。
ないよりはマシだけど、そんなにあったかくもならないし、付ける手ぶくろでセンスがバレてしまうから。
だけど私は、この汚い手ぶくろを手にはめた。
とても冷たかったけど、目の当たりがなんとなくあったかくて、不思議と心まであったかくなった気がした。
だから私は手ぶくろを元あった場所に戻した。