イブの夜に夢を見た。
自分がサンタ見習いになる、ありえない夢。
最初はワクワクした。
自分なんかが子どもたちの幸せの手助けを出来るなんて光栄だとも思った。
だけど現実は残酷で、子どもたちの喜んでる顔なんて一回も見れなかったし、泥棒扱いもされた。
けど本物のサンタさんはそれでいいと微笑んでいた。
私はサンタさんになれないなって、そう思った夜だった。
私の母はゆずが大好きだった。
基本的に料理にはゆずを入れていたし、自分で作ったりもしていた。
私はゆずの独特な味が嫌いだったから疑問に思って、母に聞いてみた。
そしたら、「ゆずの香りが好きなの」って切なそうな顔して言うもんだから、私は察した。
きっと随分前に亡くなった父が関連しているんだろうと。
理由は聞かなかった。いや、聞けなかった。
けど、私もゆずの香りを愛そうと思った。
空が好きだ。
綺麗なだけじゃなく、少し人間味をもっているから。
大空は嫌いだ。
大きな空じゃないといけないという謎の条件があるから。
けど、好きでも嫌いでもあるくせに、私は空と大空の違いが分からない。
だから空を…大空を好き嫌いと言う資格は私にはない。
私はベルの音が嫌いだ。
ベルとはいっても、それにもたくさんの種類がある。
家の呼び鈴の音、注文する時の音。
今の時期だと、サンタさんのベルの音かな。
私は全部嫌い。
家の呼び鈴が鳴らされる時の、無駄なドキドキ感も。
注文をする時の、店員さんをあごで使ってるあの感じも。
もう来ることもないサンタさんのあのベルの音も。
みんな嫌い。大嫌い。
けど、いつかは好きになれるといいな。
私の人生は良いとも悪いとも言えない。
だから人並みの寂しさは覚える。
そんな時にみんなは何をしているのか分からないけど、私は恋人も友達もいないから、ネットの世界へ飛んでいる。
ネットは嘘だらけだ。
だからこそ居心地が良い。
私の寂しさはこんな偽りの幸せでしか補えない。
だから私の人生は平凡なんだ。